366
白せんべいの情報を元にヒーロー動画を漁ると、一人、気になるヒーローがいた。
メタルイエローの新幹線モチーフの全身鎧を着込んだ『ドクターレスキュー』というヒーローだ。
両肩に細いノズル状のキャノン砲がついていて、エネルギー弾を撃ち出すのだが、決めポーズが指鉄砲を相手に向けるというものだった。
白せんべいが残してくれた『スターレジェンズ』の黄色ヒーローの特徴と一致する。
『ドクターレスキュー』は中規模レギオン『リラ・サイン』の三番手くらいのヒーローだ。
レギオンから出ている動画資料は少ないが、『リラ・サイン』に配信者がいるらしく、配信動画がそれなりに残っている。
この配信者は自称『ドクターレスキュー』の兄貴分らしく、「やれやれ、俺が助けてやらないとな……」とイキるのが癖で、観ているとイライラしてくる。
それでいてエイム力は高いので、発言に気をつければもっと視聴者が増えそうではある。
まあ、そこはいい。
それよりもこの配信者、『ぷろめす』という名前らしいが、観ていると『ドクターレスキュー』のリアルを知っているような口振りで話す。
───この前、ドクターレスキューが天然食材を食ったことがないって言うんで、ちょっといい店に連れて行ってやったんだよ。
もちろん、俺の奢りで。
まあ、配信者やってると、それなりに稼ぎはあるからね。
それで、ドクターレスキュー、ああ、もちろんリアルじゃドクターレスキューなんて呼ばねえけど、アイツが生意気にも天然の酒も飲んでみたいなんて言うもんだから、やれやれ、こいつに飲ませて味の違いなんて分かるのかねって呆れたんですけど……───
動画内で『ぷろめす』が話している。
「グレンくん、暇してるかにゃ〜……ん? 何観てんの?」
意外と会長はちょくちょく基地に顔を出す。
不労所得で稼いでいるから、時間はいっぱいあるんだそうだ。
ただ、何くれと無く俺の世話を焼こうとしてくれるから、もしかしたらわざと基地に顔を出してくれているのかもしれない。
「ああ、白せんべいのな……やりかけの仕事があったから、何かできないかと思って……」
俺は配信動画を眺めながら答える。
「ああ、墓くんの……これは?」
会長が俺の後ろから動画を覗き込む。
「スターレジェンズに繋がるかもしれない動画……確定とは言わないが、このヒーローが白せんべいが抽出した黄色ヒーローの特徴にかなり合致する部分があるんだ……」
───それで、お前の彼女にブスって言えたら、酒飲ませてやるって言ったら、それは言えないとか、マジな顔で言い出してさ。
もう、めっちゃ爆笑。
こいつ、自分の女ひとつ操れねぇのかよって説教してやったわ。
まあ、最後にフォローで酒飲ましてやる辺り、俺も人が良いっていうか、甘いんだけどさー。
おっと、やれやれ、後ろに回り込まれてるの気づいてないのかよ。
やれやれ、世話のかかるヒーローだぜ───
「なにこの自尊心の固まりみたいな勘違い配信者?」
「自称ドクターレスキューの兄貴分のぷろめすって配信者だな。
話からすると、ドクターレスキューのリアルを知っているような口振りだから、どこかでボロが出ないかと思って聞いてる」
「ボロを出させる? おけおけ、そういうのはお任せですよ。
んーと、ぷろめす、ね。
お、今晩、生配信予定が入ってる。
パトロールしながらのんびり雑談配信だって。
じゃあ、ここで仕掛けようかね」
「仕掛ける?」
「まあ、そこはお楽しみに!
さーて、みんなを集めなきゃね!」
会長はそう言って去っていった。
変なことにならなきゃいいけどな。




