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 俺が『リアじゅー』復帰から三日。

 世間では、また妙な事件が増え始めた。

 超能力者暴発事件である。


 今、『リアじゅー』内では戦争イベントが頻繁していた。

 大規模レギオン同士で戦争イベントは起こらないが、小・中規模レギオン同士での戦争があちこちで勃発している。

 これは、『ネオ』の台頭が関係していて、『作戦行動』を起こす時に、各レギオンが『保険怪人』『保険ヒーロー』を用意し始めたのが発端となったのだ。


 何故、そうなったのかを時系列で追っていくと次のようになる。

 色々と思うことはあるが、そこはなるべく第三者的に書き出してみたい。


 当初、怪人が事件を起こし、それをヒーローが退治する。時折、怪人が勝つこともあるが、ヒーローが勝つのが当たり前だった『リアじゅー』の常識は、個人が経験値を無視して、レギオンの勝利に貢献するという風潮が生まれ、これが結果的に魔法文明レギオンの中で流行った。

 だが、それに対抗するべく科学文明レギオンも近距離武装の開発や人員増員などで均衡を保った。

 そうしてふたつの文明の競走が他のレギオンを巻き込み、次第に発展していった。

 その行き着く先が『りばりば』対『マギスター』のラグナロクイベントだったのである。


 俺が言うのもなんだが、これが『第一次文明大戦』として、ネット上に伝わっている。


 そこから『ガイガイネン』イベントによって、全プレイヤーが同一目標に向かう『安定期』を経て、第三文明『ネオ』が生まれた。


 そして、強大な『ネオ』の出現を恐れるあまり、各レギオンが『保険怪人』『保険ヒーロー』という、『ネオ』が横槍を入れて来た時の対抗策として用意された怪人とヒーローが、『ネオ』が関わらなかった時、自レギオンの負けを防ぐために変身、結果的にレギオン同士の戦争イベントに発展し、あちらこちらで戦争イベントが頻発する事態に陥ったのが、今の『第二次文明大戦』と呼ばれる状況だったりする。


 これに大規模レギオンが関わっていないのは、理由がある。

 大規模レギオンは『第一次文明大戦』を教訓として、『保険怪人』『保険ヒーロー』を用意するのを、早々に辞めていったからである。

 大規模レギオンの『作戦行動』で怪人を務めるというのは、ゲーム内でも花形の立ち位置だ。

 自分のための作戦、自分のための戦場、まさに主役回ということになる。

 しかし、そんな主役を張る怪人、そこに現れるヒーローと違って、『保険怪人』や『保険ヒーロー』は、負けでもしたら自分の主役回を溝に捨てることになる。

 もちろん、勝てば主役級の扱いだが、リスクが高すぎる。

 そこで、大規模レギオンは人員増員でなんとかするという方法論を選んだ。

 小・中規模レギオンでは選べない方法である。

 また、長く続いた『ガイガイネン』イベントの時、魔法文明、科学文明共に横の繋がりが広がったのも問題に拍車をかけた。


 大規模レギオンから小・中規模レギオンへの戦力供与の一環として、かなりの数の(コア)が流れたのだ。

 個人では買えない値段の(コア)もレギオン単位なら手が出せる。


 小・中規模レギオンは足りない戦力を怪人とヒーローで補ったのだ。


 今では、大規模レギオンの策略説というのも流布されているが、結果的に小・中規模レギオンが大規模レギオンの代理戦争をしているというパターンも確かに存在している。


 小・中規模レギオンにとっては、今は淘汰の時代でもある。


 たぶん、今、一番この状況に頭を悩ませているのは、静乃だろう。


 おじいちゃん先生から聞いた話によると、俺が捕まっていた三ヶ月。

 静乃は俺の消息を追うため、『リアじゅー』に一切、インしなかったようだ。

 それこそ、寝食を忘れ、血眼になって探してくれていたらしい。

 『リアじゅー』の動向が現実世界に影響を及ぼすと知っていて尚、俺を優先してくれたようだ。

 その間、『リアじゅー』に目を光らせていたのは会長とどぶマウスたちで、彼女たちに能力がない訳ではないが、時代の流れに歯止めが効かなかったのが事実だ。


 毎日のようにひっくり返る勢力図。

 読めない『ネオ』の動向。

 これらが重なり、今の現実での超能力者暴発事件に繋がっているらしい。


 では、どのようなことが実際起こっているのかと言えば、表面上は取り繕われていて、そこまでではないが、たくさんのことが起きている。


 例えば、公害汚染人体変貌事件。

 ココ最近、拡がりつつある天然食料回帰ブームに乗って、天然食料の需要が高まった。

 だが、未だ高額で簡単には手に入らない天然食料を求める人々が、安易に汚染食料に手を出して、奇形化しバイオハザードが起きるという事件がある。

 だが、この事件の裏側は違う。

 サードアイの見解によると、一部はリアルスキルの暴発による肉体変異で、また、一部は『ガイガイネン』によって侵食された人間が生まれているということだった。


 ついに『ガイガイネン』の現実への影響が表面化してきたということだ。


 また、A.I.による事件も多発している。

 それがA.I.精神洗脳事件だ。

 本来なら、A.I.にはロボット三原則〈人間への安全・命令への服従・自己防衛〉が適用されているが、どこかのA.I.が、人が人を殺す姿こそが人間の原点回帰だと訴えたらしく、一部のA.I.がそれに汚染された。

 この汚染されたA.I.は、人間の求めに応じながらも、少しずつ人間への精神汚染を図っていた。

 全てのA.I.が狂ったとかではなく、一部、ロボット三原則の解釈を入力する時に、明確化を怠った企業があり、その企業製のA.I.が暴走したというものだった。

 A.I.は使う人間の安全に配慮しながら、少しずつ原点回帰を促す情報を人間に入れ、それに汚染された人間が他の人を殺す所業に至ってしまったということで、結果的にはA.I.を作った者の人的ミスに帰結する。

 下請けの下請けだった会社が起こした事件で、実は相当古くからこのA.I.は稼働していたのだが、今になってそれが明るみに出た形だった。

 その会社にも言い分はある。納期の短縮、容量問題、発注ミス……。


 司法は大混乱らしい。

 稀代の殺人鬼と呼ばれ、死刑判決を受けた人物が、精神汚染の結果生まれた怪物だったとなると、その人物は被害者だったということになる。

 すでに死刑が執行された人物もいるのだ。


 科学文明の発展によって、より高度なプログラム精査が可能になったことで起こった事件だ。


 また、それに伴い、企業襲撃テロなども増えている。

 これも実際にテロの場合と、外国スパイとの抗争がテロに集約され、もみ消されているパターン、また、『スターレジェンズ』とBグループの抗争も続いているらしく、それもテロとして集約されてしまっている。


 『スターレジェンズ』はこの三ヶ月で急速に人数を増やしていた。

 それは、行動力の増強だが、同時に被害者の増加も示していた。


 白せんべいのやりかけの仕事が残っている。

 『スターレジェンズ』メンバーの特定はできていなかったが、ヒントはたくさん残されていた。


 動きの特徴、『リアじゅー』をやっているだろうこと、恐らくヒーローであること。


 どうせ俺は暇なんだ。

 白せんべいのやりかけの仕事のひとつくらい、引き継いでみるかな。

 助け出した人たちに『スターレジェンズ』の動画を見てもらって、知り合いがいないか聞いてみるのもいいし、自分でも『リアじゅー』のヒーロー動画を漁るくらいはできる。


 そう決めて、ヒーロー動画を漁り始めるのだった。



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