364
俺は仲間たちと挨拶を交わしていく。
「やっぱり私にもう一度会いたくなって戻ってきたミザ?」
「ゐーんぐ!?〈残念セクシーにか!?〉」
煮込みは俺の中じゃ、中学生くらいの感覚なんだよ。
「あららー、グレンさんは私の母性にやられてたと記憶してますねー」
「ゐーんぐ……〈おかしい、俺の記憶と違う……〉」
まあ、サクヤの美ボディは嫌いではないが、母性を感じたことはないな。
「グレン様、お戻りになられたのですね。
お帰りなさいませ。お戻りになられると信じておりました」
「ゐーんぐ……〈そうか、待たせて悪かったな。また、遊んでもらえるとありがたい……〉」
みるくは深々とお辞儀してくれるが、言ってることがウチのNPCドールと同じなんだよな。
何故か俺のことを持ち上げてくれるが、もしかしてネタでやっているのか?
「グレンさんが戻って来てくれて、嬉しいピロ!」
「ゐーんぐ!〈普通に迎えてくれるのが嬉しいよ、俺は〉」
ムックの正統派な迎え方につい、安心する。
それから、ナナミ、coin、にゃんこの日、オオミなどレオナから連絡を受けた俺のフレンドたちが次々に現れて、挨拶してくれた。
フレンドたちの話によると、俺がいなかった間も、俺のプライベート空間はフレンドたちの憩いの場として機能してくれていたようで、少し嬉しくなる。
「久しぶりのキウイちゃんです!」
「こけー!」
そういえば、俺がログアウト中は基本的に俺の中にテイムモンスターたちは居るとか、じぇと子が言っていたな。
ばよえ〜んがキウイとじゃれている。
ばよえ〜んは変身すると再生怪人『ダチョウランニングシューズ』になる。
飛ばずに走る鳥同士、キウイと仲がいいからな。
あれ? シシャモにくっついているクルトンは、どうなんだ?
なんとなく、クルトンは別な気がする。
神の一柱だしな。
三ヶ月も間が空いてしまうと、フレンドも切られてしまうんじゃないかと、かなりドキドキしていたが、みんな残してくれていたようだ。
「え、当たり前ミザ。グレンとフレンドじゃないと、畑とか入れなくなっちゃうミザ」
うむ、フレンド限定で作物は好きに食っていいし、プライベート空間用インベントリにもアクセスできるようにしてあるからな。
ちょっと複雑な気持ちになる。
「まあ、半分冗談ミザ」
「ゐーんぐ……〈半分かよ……〉」
まあ、それでも三ヶ月はフレンドを切るには充分な期間ではある。
ありがたいと思わないとな。
ただ、変わったこともある。
今から二ヶ月ほど前に、新規プレイヤーの参入が開始された。第五陣である。
第三陣参入の俺は、今では古参扱いだ。
「肩パッド?」「伝説的プレイヤー?」「ここってPKK部隊のプライベート空間じゃないの?」「神様になった人?」
何やら色々と言われている。
よく分からんのもあるが、俺を知らない人がいるというのは少し新鮮だ。
これはもしかして、『作戦行動』なんかだと集中的に狙われる状況改善に向かうかもしれないな。
そう思うと、嬉しくて早く『作戦行動』に出たくなった。
ただ、最近のヒーロー情報が欠けているからな。
今晩にでも静乃に聞いておこう。
それから『遺跡発掘調査』も随分と間が空いてしまった。
できたての水族館もどう活かすか考えなければならないし、時間が必要だ。そう、思ったが、今、『リアじゅー』をやる時間がアホほどあることに気がついた。
ふぅ……深いため息が零れそうになる。
社会的には、俺は死んでるんだよな。
ヤバいな。深く考えると、鬱になりそうだ。
俺は現実から逃避するように『リアじゅー』での、今後の楽しみを夢想するのだった。




