336〈side︰グレン〉
『ガイガイネン』イベントは終わった。
俺たちの目の前からアダムの身体が透けるように空間に解けていく。
『ネオ』というワールドに移動したということだろう。
これは北西の巨大樹でも同じことが起きていたらしい。
全ての『ガイガイネン』が解けて消えたらしい。
───全てのガイガイネンが『ネオ』へと移動しました。
これより新勢力『ネオ』がゲーム内に登場することとなります。
以上を持ちまして、イベント『文明の破壊者の進撃』を終了いたします───
いきなりイベントが終わった。
これ、状況が分からない他のレギオンからしたら、戦闘の途中で敵が消えて、時間切れになったかと思うんじゃないだろうか。
アダムの言動からするに、それまで『神』になろうとしていたが、レオナの持って来た『感情エネルギー』を食ったことで方針転換を決めて、今後は『人』になろうとしているらしいことは分かった。
ただワールド『ネオ』が生成されたというアナウンスからすると、『ガイガイネン』が目指しているのは『人』というより『プレイヤー』な気がする。
新勢力『ネオ』か。
今後は三つ巴の戦いということになるんだろう。
ただ『ガイガイネン』が相手となると、バランスが取れない気がする。
また、クソ運営と叩かれることにならなきゃいいが……。
まあ、この『リアじゅー』が現実に影響することを知っている身としては、どれだけバランス崩壊していても、今さらやめられないけどな。
これは後日談になるが、この『ガイガイネン』イベントの終了は、自分たちが『ガイガイネン』をそこまで追い詰めた結果だとして、大多数からは文句が出なかったらしい。
第四陣で参加してきた新規ユーザーたちは一部、運営問い合せなどした人もいたらしいが、散々クソ運営に苦しめられて、悟りを開いた古参連中はそれを生暖かい目で見遣り、「これで大人の仲間入りだね」などと声を掛けたという。
成人の儀式みたいに言われるのは、腹にズンと来るものがあるな。
翌朝のことだ。
配信のニュースをチェックするが特にこれといったニュースはない。
強いて言うなら、第三の浮遊都市計画が議会によって承認されたことくらいだろうか。
建設中の『ガイア』、『ユミル』に続いて今度は『エデン』なる浮遊都市を作るらしい。
政府は何を考えているのやら……。
どういうことだろう?
やはり『ガイガイネン』のことは現実に影響しないのだろうか?
サードアイのブログもチェックするが、『ガイガイネン』に対する更新はなかった。
やはり『ガイガイネン』はゲーム内だけのことなのだろうか。
そう考えていると、おじいちゃん先生から連絡があった。
建設中の浮遊都市『ユミル』にあった軍基地が再稼働しているという話だった。
詳細は不明だが、嫌な予感はする。
どぶマウスからの情報らしいが、現在、詳細確認中ということで、近々また招集があるかもしれないと告げられた。
心の準備だけはしておかないとな。
仕事終わり、ログインすると『リアじゅー』内でニュースがあった。
魔法文明側、新フィールド『交錯する光闇の宮』の実装だそうだ。
今回の俺たちが集めた存在値なるポイントがこれに変換されたらしい。
ということは、科学文明側も新フィールド解放か。
『ガイガイネン』イベントを乗り越えた報酬としては、結構まともかもしれない。
実装は明日かららしいので、今日はプライベート空間で過ごすとするか。
戦い続きで農場も牧場も放置気味だったからな。
俺はプライベート空間へと向かうのだった。




