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334〈はじめてのネオ〉


 翌日。

 俺とレオナは、二人で『シュリンプマン〈模倣人格〉』の元へと向かった。


 まだ奴は同じ場所にいるらしい。

 前日、俺がログアウト後、レオナは大首領と話したらしい。


 今日はその結果を伝えに来たというわけだ。


「いらっしゃい……」


 前日よりも言葉少なに『シュリンプマン〈模倣人格・フェンリル〉』が俺たちを招き入れる。

 卓袱台を囲むように座るとすぐに雑草茶が出される。


 少しの気まずい間。

 昨日は雑草茶にひと口も手をつけなかったレオナが、今日はひと口飲んで「美味しいです……」と言った。


「ああ、そうだろう。俺は結構、気に入ってる」


「ゐーんぐ!〈たんぽぽコーヒーも慣れると美味いぞ〉」


「あ、ああ、なるほど、それなら雑草茶の範疇ということか?」


 『シュリンプマン〈模倣人格〉』がレオナの顔色を窺うように聞く。


「そうですね。それもいいんですが、まずはこれを試してみてもらえませんか?」


 レオナが取り出したのは『りばりば』標準装備のREマークのついたベルトのバックルだ。

 上部の特定の部分を押し込むと細長い試験管のようなものが出てくる。


「これは私たち魔法文明が集めているワールドアイテム、感情エネルギーと呼ばれているものです」


 感情エネルギーは真っ黒な液体としてその試験管の中で揺れていた。


「昨日の話し合いの中で、あなたは精神エネルギー、又は(はく)と仰っていました。

 これがそれなのかは試してみないと分からないですが、分からないからこそ試して欲しいんです」


 レオナが試験管を卓袱台に置いた。

 『シュリンプマン〈模倣人格〉』はそれを手にして、ためつすがめつ眺めていた。


「特殊な封入方法か……プレイヤーと呼ばれる者から魄がほとんど得られないのはコレの類いの技術があるからか……。

 ああ、安心してくれ、分かったところで俺たちではどうにもできない技術だ」


「ええ、その辺りのことはこの世界の神に最も近しい存在によって確認済みです。

 貸してください。蓋を開けます」


 言われた通りに『シュリンプマン〈模倣人格〉』は試験管を戻した。

 レオナが蓋になっているキャップを外して、もう一度『シュリンプマン〈模倣人格〉』に渡す。


 『シュリンプマン〈模倣人格〉』が試験管の匂いを嗅ぐ。


「う……これは……。

 そうか……既にこの世界は人の手に委ねられているのか……でなければこのようなもの……」


「気に入らないかもしれないとは言われていましたが、やはりダメですか?」


 レオナが聞く。


「いや、すまん……そうではない。

 ただその神に近しい存在とやらの意図に考えを改めているところだ」


「ゐーんぐ?〈どういう意味だ?〉」


「……これは、神なる存在の在り方を示すものと言えばいいか……なるほど、我らの適応にも意味があったというべきか……」


 俺の質問に答えにならない答えを返して、『シュリンプマン〈模倣人格〉』は試験管の中身をあおるようにして飲んだ。


「……くぅー、不味い!

 良薬口に苦しとはまさに……」


「いかがですか?」


「ああ、これならば生きられる。

 今、俺の身体を通して、俺たちに意味は伝わった。

 俺たちが目指すべきは神ではなく、人だったのだとな。

 だが、よくお前たちの神が許したものだ……」


「大首領様のお言葉をお伝えします。

 人の歴史は争いと淘汰によって綴られている。

 生きたくば戦え、さもなくば死ね、だそうです」


「ありがたい。俺がその最初の一人ということか……」


 俺にはレオナと『シュリンプマン〈模倣人格〉』の話がちんぷんかんぷんだった。

 だがここで脳内アナウンスが入った。


───ワールド︰ネオが生成されました───


「ゐーんぐ?〈どうなってる?〉」


「新しいワールドですね」


「ゐーんぐ?〈新しいワールド?〉」


「簡単に言えばガイガイネンの世界でしょうか?

 今までワールドは四つ。『怪人』『ヒーロー』『野良』『シティエリア』とありましたが、これに『ネオ』が加わることになるみたいですね」


「ああ、今、創った。俺たちはこれからネオとして生きる。

 生存競走の参加者としてな。

 今後はこの世界の一員だ。

 そうだな……俺の名前が必要だ。

 俺の名は……アダム。ミブロレギオンのアダムだ」


「アダムですか? 単純過ぎません?」


「ああ、最初の人間として最も有名な人間とオリジナルが認識している。まずいか?」


「え? あ、その……私からはなんとも……」


 レオナが、ごにょごにょと言葉を濁す。

 くそう! 俺の記憶から名前取ったとか言うなよ。

 しかも、ミブロレギオンて……壬生狼会から取っただろ。


「今後はネオのアダムと呼んでくれ」


「あ、はい……」


「次からは敵同士だ。遠慮はしない」


 こうして、『ガイガイネン』は『ネオ』になったのだった。


 俺の理解で言うと、『シティエリア』で感情エネルギーを奪い合う新しいライバルということだろうか。

 これまた現実にどういう影響が出るのか……考えても分からないことだらけだ。



だいぶ舌足らずな感じもしますが、文脈から読み取っていただけると信じて……。

補足はどこかで入れようと思っております。

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― 新着の感想 ―
[一言] まさかの交渉で何とかしてしまったガイガイネンイベント、コレは波紋を呼びますわ。 というか『りばりば』大首領はポロポロと情報小出ししてくれるのに他レギオンは如何なっているんだろう? 今回それが…
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