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315〈ふたたびの罠〉


 トンネル内に車が入ってきた音がする。

 車止めを設置するのは響也だ。

 なるべくギリギリに設置して、逃げられないようにしたい。

 そう考えながら、車の接近を待っていると、急なブレーキ音が聞こえてきた。


「なんだ?」


 俺が静乃と顔を見合わせると同時に、銃撃音が辺りに響く。


 は?


 トンネル内に叫び声が反響する。


 外国語? 生憎と学がない俺には分からないが、ひとつ分かるのは、俺たちより前方で事件が起きているということだ。


「通信妨害されてたのは、他に私たちと別の集団がいるから……」


 静乃が立ち上がる。


「行こう! 外国のスパイかスターレジェンズか分からないけど、そんな人たちに奪わせない!」


 俺たちは走り出した。

 うねる道を進むと、ヘッドライトに照らされて俺たちと似たような黒い防護服を着たやつらが道に倒れているのが見える。


 一人の男がマシンガンを連射して、何かを追っていたかと思えば、それは銀の光を伴って、その男とぶつかった。


「マギシルバー……」


 アパパルパパが呟く。


 丸みを帯びた銀の鎧。部分的に透明なクリスタルが嵌められていて、手には光の手斧が握られている。


「違う……マギクリスタだ……」


 腰付や胸部の膨らみは女性的なデザインで、何よりも光を凝縮した手斧型武器を使うのは『マギクリスタ』だ。


 まさか、と思う。

 『マギシルバー』だけではなく、『マギクリスタ』までもが軍に捕まっていたのか?

 しかも、完全武装で俺たちの前に現れたということは……。


「また、罠かよ……」


 俺は苦々しい想いでソレを見た。

 捕らわれの超能力者が積まれているはずのトラックの荷台から、迷彩服の兵士が何人も降りてきて、『マギクリスタ』が倒した外国人スパイらしき人々を確認していた。


「マルニー、前方、敵七、制圧せよ」


「リョウカイ……」


 『マギクリスタ』が走り出した。


「撤収! 逃げて!」


 SIZUがゴム弾を放ちながら、叫んだ。


 ゴム弾は『マギクリスタ』に直撃しているが、一瞬の足止めに過ぎず、普通なら相当の衝撃があるはずなのに、『マギクリスタ』はものともしない。


 SIZUの目の前に立った『マギクリスタ』が手斧を振りかぶる。


「ゐーんぐっ!〈させるか! 【正拳頭突き(ラビロケット)】〉」


 俺はそこに頭から突っ込んだ。

 『マギクリスタ』はもんどりうって倒れて、起き上がろうとするが起き上がれずにいる。


「援護してください」


 前方の車両のスピーカーから声が聞こえる。

 迷彩服の兵士たちが、アサルトライフルを構えた。


「くそっ、俺の後ろに固まれ! 【土精霊の壁】」


 響也が手を翳すと、地面が盛り上がって壁を作る。

 銃撃が壁に撃ち込まれる。


 間一髪、俺たちは壁の後ろに隠れた。


「超能力者です。傷はつけてもいいですが、殺さず捕らえてください」


 スピーカーの声になんとなく聞き覚えがある。

 俺が一人で『マギシルバー』を助けに行った時、警官と交渉していた男の声に似ている。


「SIZU、どうする?」


 まりもっこりが聞く。


「情動操作からの解放ができなきゃ、助けられない。

 私たちがこうして手をこまねいてる間に向こうはどんどん情動操作を完成させちゃう。

 悔しいけど、今は逃げよう」


 相手がこうやって超能力者を実戦投入してきたというのは、情動操作が完了しているからこそだろう。


 今は静乃の言う通り、逃げるしかなさそうだ。

 それに外国からの介入もこれからは計算に入れなくてはならない。


 ただ、逃げると言っても、どうやってという問題が残るのだった。



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