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 俺が釣竿になって痛い思いをして、小一時間。

 ようやく『シュリンプマン〈ヤクシャ〉』を倒せた。

 それまでに比べたら劇的に討伐時間は短くなっているが、やはり回復系の敵ほどイライラさせられるものはない。

 ある意味、coinは良いガチャ魂を手に入れたと言えるが、もう二度とcoinを生け贄にすることはないだろう。


「……一応、礼は言わせてもらう。

 あんたらのおかげでシュリンプマン〈ヤクシャ〉が倒せたからな……時間はバカみたいに取られたが……」


 『ユーピテルメモリー』の代表としてヤッテマス・トロッコが忌々しそうに言った。


 『シュリンプマン〈天使〉』を倒して、どうにか余裕を取り戻した俺は、『シュリンプマン〈ヤクシャ〉』戦でこいつの動きを見た。

 左利き、指鉄砲、右手で支える仕草。

 コイツは黄色ヒーローだ。


「これは貸しですから、礼はいりませんねー。

 そもそも、礼を言う態度じゃないですし……まあ、この貸しは高くつくと思って下さいよー。

 本来なら、我々は一撃で方がつくはずだったものをここまでやらされることになってますからねー」


「ちっ……」


 俺も舌打ちしたい気分だった。

 (コア)は失くしたのか、持っていなかったため変身していなかったので、気付くのが遅れた。

 そして、俺は『言語』を持たず、さらには一方的に決めつけるような性格、これは今なんとかするのが不可能で、もし現実でヤッテマス・トロッコを見つけたとしても『スターレジェンズ』との共闘や保護は難しいだろうと思わされる。


 静乃に見つけたことだけ報告して、対策を考えるしかなさそうだ。

 そう考えて、この場では何も言わずにログアウトすることにした。




 さすがに時間が遅くなったので、レポートに明日、細かい話をしようと添えて、俺は早めに寝た。

 だが、事態は俺が考えるよりも早く動いていた。


 朝、俺はおじいちゃん先生の電話で起こされた。

 それは先日の『スターレジェンズ』が襲撃したビルから実験体の超能力者が今晩、移送されるという情報が入ったというものだった。


 仕事終わりに秘密基地に行くことを伝えて、電話を切った。

 作戦準備は整えておいてくれるらしい。


 仕事は大詰めの段階に入っているが、俺がやらなくては行けないことと言えば、復帰した尾上さん〈にこぱんち〉のご機嫌伺いくらいで、意外と自由が効く。

 会社には直行直帰の旨を連絡して、俺は尾上さんと落ち合う。


 場所は軍基地だ。

 尾上さんが俺を庇って怪我をした場所だが、尾上さんの職場だ。

 こちらで、と言われれば、俺に否やはない。


 今日は軍で使っている重機のマニピュレーターの思考操作を触らせてもらうことになっていて、それ自体は午前中で終わるので、午後は感想タイムという名の雑談タイムだ。


 マニピュレーターの思考操作スペックはデータで貰っているので、後は触れてみての感想を二、三話したらほぼ今日の仕事は終わる。


「尾上さん、すまないが今日は早めに上がらせてもらっていいかな?」


「はっはっはっ! 問題ないですよ。

 もしかしてコレ関係ですか?」


 『リアじゅー』での関係もあって、尾上さんとはかなり打ち解けた関係性を構築している。

 気安い関係だ。


「いや、俺がそっち関係は全くダメなのは知ってるでしょう……」


 もちろん、女性関係のことだ。


「おや? 才女様と良い関係なんじゃないんですか?」


「レオナ? いやいや、仲良くはさせてもらってますが、さすがにそれはないですよ」


「はて? ウチのレギオンじゃ、かなり噂になっているんですがね」


「マンジで!? なんでまた……」


「才女殿と話した時に、お互いのプライベート空間を行き来する仲と聞きましたが?」


「それを言ったら、俺のフレンドは全員が俺のプライベート空間で好き勝手やってますよ」


「そういう度量の大きいところに惚れられたんじゃないですかね?」


「まさか!?」


「んー、会議なんかでお見掛けする時はおふたりとも、満更じゃなさそうですけどね」


「まあ、魅力的な女性ではありますけど、釣り合わないですよ、こんなオッサンじゃ」


「そうですかねぇ……。

 エリート怪人と女幹部の恋。あってもいいと思いますけど、あまり、つつくのも野暮ですね」


「ははは……はじめから相手にされませんよ!」


 会議室でコーヒーを啜りながら、『リアじゅー』話だ。

 少しの間があって、尾上さんが少し身を寄せて話題を変えてきた。


「そう言えば、前にここで事件があった時、神馬さんはなにか変なものとか見掛けませんでしたか?」


「変なもの?」


 いきなりなんだろう?

 もしや、静乃の同級生である国枝涼子ちゃんを匿ったことだろうか?

 俺はなるべく平静を装い聞いた。


「ああ、いや、すいません。忘れてください。

 そもそもアイツらに義理立てする理由もない。いいんです、いいんです……」


「は、はぁ……?」


 そんな会話があって、俺は早めに上がらせてもらった。

 後からよくよく考えれば、あれは二一○(ニーヒトマル)部隊、通称Bグループからの調査依頼でもされたのではないかと、思い当たった。

 尾上さんは俺との関係性から、俺を匿ってくれたのかもしれない。

 申し訳ないが、ありがたいことだ。

 心の中で礼を言っておく。


 そうして、俺はおじいちゃん先生の病院へと向かうのだった。



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