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311〈はじめての二体神格〉

遅くなりましたm(_ _)m


 その『シュリンプマン〈模倣神格〉』は左半身がペンキで塗りたくったような灰色をしていて、大きな黒目と長い尖った耳を持っている。

 グレイ型宇宙人のなり損ないのような人型は科学文明側戦闘員を取り込んだ時に出る特徴だ。


「逃がすな! 追え!」


 どこかのレギオンが『シュリンプマン〈模倣神格〉』を倒しきれず逃がしたらしい。

 そして、逃げた先が俺たちのところだったらしい。


「勘弁して欲しいミザ……」


 煮込みがボヤく。


「かと言って無視もできませんしねー」


 サクヤも動きを止めて、二匹の『シュリンプマン〈模倣神格〉』を悔しそうに眺めていた。


 すると、『シュリンプマン〈天使〉』が動き出す。

 二匹目の出現に誰もが動きを止めてしまったのだ。


「【我が血肉(ワインアンドブレッド)】」


 『シュリンプマン〈天使〉』は自身の左腕を噛みちぎった。


「気持ち悪っ!」「自傷系スキル?」「ヤバいやつか?」「自傷系は大抵、ヤバいやつだ!」


 俺を見ながら言わないで欲しい。

 だが、たしかに嫌な予感がする。

 俺は慌てて【賢明さ故の勝利(テュール・テュール)】で『シュリンプマン〈天使〉』のリソースを確認する。

 HP、MP、体力、疲労が全快していく。

 これは、部位破損と引き換えに全快状態になるスキルのようだ。

 『シュリンプマン〈天使〉』は左腕の肘から先と引き換えに全快した。


「おいい、coin!」「なにがシナジーはないだよ!」「強化回復ガチャ魂じゃねえか!」


「すまん、そのシュリンプマンはこちらでもらうぞ!」


 科学文明側レギオンの戦闘員たちが、新しい『シュリンプマン〈模倣神格〉』を追って現れる。


「もちろん、引き取って欲しいミザ!」


「うげ、怪人レギオンか」「マジかよ……」「最悪だな」


「なかなかに失礼なレギオンですねー。どちら様ですかー?」


 サクヤが笑みを壊さずに聞くのが逆に怖い。

 さすがに代表者らしきやつはそういう愚は犯さなかったが、正直、教育がなってないと思ってしまう。


「おや? グレンさん、あれがユーピテルメモリーですよー」


 サクヤが教えてくれるが、俺は『シュリンプマン〈天使〉』の相手をするのに、一瞬、視線をやるのが精一杯だ。


 『ユーピテルメモリー』は未来系ピッタリライダースーツにジャケットという出で立ちで、ジャケットには雷のマークが付いている。

 基本武器はショットガンか。

 エネルギー弾を放つようだ。


「狙え、放て!」


 『ユーピテルメモリー』の代表が全体に指示を出す。

 ダンッ! ダンッ! ダダンッ!

 と、銃撃が始まる。あまり指揮は上手くない。


 銃撃で『シュリンプマン〈模倣神格〉』がそちらを向く。

 その間に代表がやって来て、挨拶したいと申し出る。


「ユーピテルメモリーのヤッテマス・トロッコだ。

 今回は迷惑をかけてすまないが、アレはウチできっちり処理する。

 それで貸し借りなしとする」


「そうはいかないミザ!

 伏兵の登場で私たちは好機を逃がしてしまったミザ!」


「好機を逃がしたのは君たちの勝手だ。

 我々のせいにしないでもらいたい」


「ほうほう、狩場を荒らしておきながら自分たちの責任逃れを主張されるわけですねー?

 リヴァース・リバースに借りは作りたくないと言われるのであれば、記録用の配信素材を出すしかないですねー」


「待て、そうは言っても、あのシュリンプマンはそちらの陣営に攻撃していない。

 このまま我々側で処理すれば問題ないはずだ!」


 ヤッテマスがそう言った瞬間、新しい『シュリンプマン〈模倣神格〉』は俺たちを巻き込む形で散弾型の座標爆破を放ってきた。


「今ので、あなたの主張は意味をなくしましたねー?」


「くっ……分かった。借りひとつだ……」


「当たり前ですねー。

 今のガレキ場の状況で、ヒーローレギオンだからという無法・無体が通じると思わないことですねー」


 ヤッテマス・トロッコは歯噛みして、感情を押し殺した。


「【荒ぶる樹根(ルートアスラ)】」


 さらに『シュリンプマン〈模倣神格〉』は大地から木の根のようなものを幾つも出して、無作為に周囲を攻撃するスキルを使った。


「根っこを壊せ!」「またこれかよ!」「捕まるな、食われるぞ!」


 『ユーピテルメモリー』の戦闘員たちはショットガンのエネルギーを散弾タイプに切り替えて、地面から飛び出して暴れる根を攻撃する。


 地面から飛び出る攻撃は、知らずに避けるのは難しい。

 俺はたまたま飛んでいて助かったが、何人かの『りばりば』戦闘員は捕まって、根に絡め取られて、養分にされてしまった。


「れべるあっぷ!」


「ゐーんぐ!〈これ何のガチャ魂だ!〉」


 俺は捕まった仲間の戦闘員を助けるべく木の根を『ショックバトン』で叩き壊す。

 木の根自体はそれほど固くないようで、一発殴れば破壊が可能だった。


「これは星4ヤクシャ。樹木を操る人喰いの鬼神だそうですよー。

 地面のひび割れ注意ですねー!」


 サクヤがヤッテマスから聞き出したらしい。

 範囲攻撃主体のガチャ魂か。

 状態異常(オーディン)が低いプレイヤーにとっては使えないガチャ魂という認識だったのかもな。

 なんにしろ、厄介な『シュリンプマン〈ヤクシャ〉』を生み出したものだ。

 『シュリンプマン〈天使〉』も強化・回復で思わぬシナジーを発揮しているし、タフな戦闘になりそうだと、俺は気合いを入れるのだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] ある意味シナジーの見本市、コレを利用して使われないガチャ魂に日の光を当てようとする運営の戯れやぞ(嘘
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