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30〈はじめてのダンジョンボス〉

後でもう一話、投稿するかも?

という訳で、いちおう一話目。


 石壁は砦を守る城壁なのだろう。

 壁の中は縦横無尽に張り巡らされた空堀空間で、あちらこちらに橋がかかっている。

 その中心には砦があり、その砦の最上階に正統派ボス『破滅の主・将軍大鬼ジェネラルオーガ』がいるらしい。


 石壁エリアは飛行するアカエイみたいな奴や小鬼兵ゴブリンソルジャー、石兵〈弓〉なんかが出てくる。

 空堀の下には宝箱があったりして、まともに攻略したら結構、時間が掛かるかもしれない。


 しかし、レオナのハンドガンは強いし、サクヤの強酸を飛ばすアーツ、煮込みが時折投げるナイフなど、全てがここの敵相手なら一撃必殺だ。

 俺の『ベータスター』でも三発当たれば倒せるのは倒せる。

 武器命中は上がっているがさすがに全弾命中は厳しいので、器用テュールはまた成長させるべきだろうな。


 一応、俺の初心者講習はほぼ終わりだし、サクヤもいるのでドロップ品なんかは全員で分けている。

 途中、空堀の下の宝箱なんかは、煮込みがロープを垂らしサクヤが下へ、サクヤは【盗賊】スキルがあるらしく、簡単に宝箱を開けている。

 まあ『破滅の森の砦』の宝箱は罠アリの方が稀らしいので、【盗賊】スキルも必須ではないらしいが。

 おかげで魔石は結構溜まって来ている。


 明日、『作戦行動』があるって話だから、半分位使ってみるか? 


 この空堀と橋の迷路も迷うことなく一時間くらいで砦の入り口らしき門まで着くことができた。


「え? グレンさんは始めてまだ四日なんですか? 」


 1日目にいきなりレイド戦からの初心者講習。

 2日目にPKネスティと戦闘。

 3日目はシメシメ団のレイド戦見学と畑の買取。

 そして4日目昼にフィールドボス戦。

 これから挑むのがダンジョンボス戦。

 そんなここ数日のことをサクヤに説明したら驚かれてしまった。


「ゐーっ! 〈まあ、煮込みに貰った『ベータスター』とレオナから貰った『グレイプニル』のおかげで、どうにかやってこられただけだがな〉」


「改めて聞くと濃い〜シザ…… 」


「ずっとジャイアントキリングで経験値を稼いでいる感じですね。これから挑むのもボス戦ですし…… 」


「ゐーっ! 〈いやいや、地道なレベル上げだってしてるぞ! ポイント割り振りがまとめてだから、いきなり強くなったように聞こえるだけだ〉」


「まあ、グレンさんはレベルうんぬんではなく、考えて動けるのが強みなんだと思いますよ。お約束に囚われないといいましょうか、自由な発想といいますか…… 」


「まあ、ゲーム的お約束を理解してなくて、自分だけの理論で進めてるって意味なら同意するシザ…… 」


「ゐーっ! 〈レオナ、それって褒めてるんだよな? 〉」


 もちろんです、とレオナは微笑む。

 煮込みを見れば、煮込みは確実に人の悪い笑みを浮かべているのが目出し帽越しにも分かるので、俺は小さく嘆息する。


「もちろんシザ! 」


「ゐーっ! 〈何も言ってねえよっ! あと、煮込みのやつはどう聞いても貶してるよな!? 〉」


「だから、もちろんシザ! 」


 俺は額に手を当てる。

 サクヤはそれを見て、またクスクスと笑っていた。

 こんな話をしながらも俺のパワーレベリングは結構な速度で進んでいる。

 砦内の敵は連携があるらしく、難敵かと思ったが、レオナと煮込み、サクヤにとっては大して変わらないという印象らしい。

 そりゃ、どの敵にも、どの攻撃でも一撃必殺、見敵必殺になってるんだから、当たり前か。


 俺からしたら、突っ込んで来る敵に意識を向けたら、弓で狙われるだけでも結構な脅威を感じるけどな。


 ちなみに砦内で出るのはゴブリンソルジャ

ーよりも好戦的なゴブリンファイターやゴブリンガードナー〈木盾持ち〉、石兵〈弩〉と石兵〈槍〉などである。

 石兵はいわゆる兵馬俑から出てきたような形をしており、動きは鈍重だがそれなりに硬い。


 あと『ベータスター』の銃撃だと石兵は穴が開くだけで効率があまりよくない。

 そのことを聞くと、答えてくれたのはサクヤだった。


「攻撃は打撃、斬撃、刺突の三種類に分かれますねー。

 低確率ですが、部位破壊に影響を及ぼすと言われてますよー。

 アサルトライフルは刺突系武器なので石兵には相性が悪いかもですねー」


「防具にもそれぞれに強いというメッセージが出ることもありますし、ダメージに影響が大きく出る訳ではないですけど、隠しパラメーターに影響が出ているのではないか、というのが識者の見解ですね」


 レオナが装備作成からの意見をくれる。

 ダメージは大して違わないのか……。

 サクヤと煮込みはショートソードとブロードソードで斬撃、レオナと俺はハンドガンとアサルトライフルで刺突って感じか。

 ああ、グレネードは打撃かもしれないな。


 実感はあまりないが、敵に合わせて攻撃方法を変えるというのもアリかもしれないな。


 そうして俺たちは階段を昇り、時に宝箱がある可能性が高いと言われる部屋の扉を開け、最適解と言われるルートでダンジョンボスの部屋まで辿り着いた。

 宝箱は半分くらいが他のプレイヤーに空けられていて、残った半分のさらに半分くらいに『魔石』や『コンパク石の欠片』、『復活石』が入っていた。


 中でも『復活石』を手にしたレオナはホクホク顔だった。

 宝箱の中身は後で全員で山分けとなっているので、まだ『復活石』はレオナの物じゃないんだが。

 気になったので聞いてみると。


 『復活石』の買取値段はかなり高いらしい。


 そしてそれとは別に、レオナはレイド戦時に人事部として働いている。

 レオナとしては、レイド戦の主役である怪人にはひとつでも多くの『復活石』を持たせてやりたいという想いがあるらしい。


 『復活石』はひとつで5人の戦闘員を紐付けできる、簡易リスポーン地点となる。

 つまり、怪人がたくさんの『復活石』を持っていれば、それだけ多くの戦闘員を呼び出すことができる。

 そうすれば、怪人がやられるリスクを減らせる。

 怪人がその場に長く留まるというのは、『感情エネルギー』を少しでも多く奪取できることを意味する。


 少しでも長くNPCの『感情エネルギー』を奪取できれば、それがレギオン全体の成果になる。


 例えば、俺が初めて参加した煮込みのレイド戦。

 あれは平日で戦闘員の集まりが悪かったので空きがあったが、休日になると戦闘員が増えすぎて『復活石』が足らないなんてことにもなるらしい。

 そうなると、大きなイベントに参加できないプレイヤーなんかも出てくるらしい。

 それは幹部であるレオナとしては、とても心苦しいことなんだそうだ。


 なので、『復活石』を『遺跡発掘調査』で見つけられるのはレオナとしては、とても嬉しいことらしい。


 余談だが、『復活石』を上納したプレイヤーと、休日などのプレイヤーが溢れている時のレイド戦に参加できなかったプレイヤーには、次回レイド戦の優先参加権が与えられるらしい。


 そういえば、俺もフィールドボス戦で『復活石』を貰っていたな。

 明日のレイド戦に参加するためにも、レギオンに上納しておくか。




 まあ、それはそれとして、ここからは『ダンジョンボス戦』だ。

 ダンジョンボスの部屋にある印が青く輝いている時、それは他にボス戦をやっているプレイヤーがいないという事を示している。


「中は大きな広間で、体育館みたいな構造になってるシザ! 

 柱が遮蔽になっているのと、中央の広間を取り囲むように二階席があるシザ! 」


「ボスはお伝えした通り『破滅の主・将軍大鬼ジェネラルオーガ』ですねー。

 HPが一割減る毎に雑魚が投入される仕組みになってますー。

 構成は決まったものではなく、この『破滅の森の砦』に出てくる敵からランダムで、低レベルのモンスターほど大量湧きする性質がありますよー。

 なので、ボスのHPを減らしたら雑魚を片付ける、ボス、雑魚、ボス、雑魚というのが基本パターンですねー。」


「ダンジョンボスは攻略法が確立されてるから、気負わなければ充分勝てるわ。

 HPの読み上げは私でいいかしら? 」


 レオナがサクヤに確認を取っている。


「はいー。煮込みさんがボス中心、他は雑魚駆除で…… 」


「ゐーっ! 〈ちょっと待った! 〉」


「ああ、もちろんグレンは最初にボスに一撃入れるの忘れちゃダメシザよ! 」


「ゐーっ! 〈そうじゃなくてだな。敵のHPを全員に可視化する派生アーツがあるんだが…… 〉」


「えーっ!? 」


「ああ、そういえばグレンさんの説明にありましたね…… 」


「特殊系の派生アーツばかりで、失念してたシザ…… 」


「そんな便利なアーツ聞いたことないですー」


 サクヤは目を丸くしている。

 そういえば、サクヤには俺のスキル関係の話はしていなかったな。

 それにしても、サクヤでも知らない派生アーツか。


「ゐーっ! 〈もしかして、『フェンリル』ってユニークスキルなのか? 〉」


「もしかしなくても、☆5スキルはユニークスキルシザ……自慢してるから、知ってるかと思ってたシザ」


「あのー、あんまりそういう情報は出さない方がいいですよー。

 もちろん、言い触らすつもりはありませんけど、どこで誰が聞いているか分かりませんからー。

 先程も神器系のスキル名称出してましたしー……気をつけないとー。」


 サクヤから注意される。


「ゐーっ? 〈すまんな。やっぱり拙いのか? 〉」


「そうですねー。『ブラクロ』にはガチャ魂を盗めるスキル持ちとか居ましたし、怪人を目指すなら、スキルバレは避けたいですし、個人単位のイベントなんかは不利になりがちですねー。」


「え? ガチャ魂を盗むスキルとかあるシザ? 」


 サクヤは少し考えてから、チラリとレオナを見て、吐露するように言う。


「……ありましたねー。スキルセットしているのを強制解除して盗むとか聞いた記憶がありますよー。

 さすがに名前は伏せさせていただきますがー」


 本来ならあまり出したくない情報だったのかもな。

 まあ、昔の『ブラクロ』時代の話みたいだし、レオナへの配慮のようなものを感じる。


「それは……初めて聞く話ね……サクヤさん、ありがとう…… 」


 レオナはサクヤに向けて頭を下げる。


「いえいえー。今は私も『りばりば』の一員ですからー」


「ゐーっ? 〈それで、俺は派生アーツを使っていいのか? 〉」


「ええ、お願いするわね、グレンさん! 」


 そういう何となくの行動指針を立てた俺たちはダンジョンボス戦へと挑むのだった。


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