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307〈ヒーロー?〉


 現実でも動きがあった。

 新たな作戦行動を取るべく、俺たちはおじいちゃん先生の病院地下の『グレイキャンパス秘密基地』に集められた。


 俺たちが次に襲うことになるのは、中心都市内の高層ビルだった。


「ここは軍部の秘密施設で、製薬会社を隠れ蓑にしている場所でっす」


 どぶマウスが説明する。


「白せんべいさんが外部リンクのある一部セキュリティに入り込んでくれたので、少しだけ内部映像が観られるでっす」


 白せんべいがリンクボードを操って、映像を出す。


「これで確認できるのは地上三十階まで。

 それより上はまたもやスタンドアロンタイプで情報はない」


「そうでっす。二十五階までは貸しテナントで、二十六階から三十階までは製薬会社のダミーとして機能してるでっす。

 そして、三十一階から四十六階までが軍の秘密研究に使われているでっす」


「ねえ、これってライブ映像?」


 山田が聞く。


「うん。一般的なセキュリティだからね。三十階より上に行く人間の映像を集めて、軍の人間を特定するために常に入りっぱなしにしている」


「じゃあ、二十七階でチラチラ動いている人たちは今、そこにいるんだ……」


「ナニ、コレー!」


 山田の指摘に分割された映像を確認するアパパルパパが叫んだ。


 そこには派手な色彩のヒーローたちが、コソコソと動いている姿があった。


 赤、青、黄色、緑、桃色の五人組。

 思い思いに武装していますという感じだが、顔を隠すヘルメットだけが統一されている。

 リュックを背負っているやつもいれば、マントを背負っているやつもいる。


「ヒーロー……だよな?」


 俺は呟く。


 五人組の緑がスキルらしきものを使って、扉に貫手を放つ。

 鍵が壊され、五人組が扉の中に入っていく。

 同時にエレベーターが二十七階に到着、警備員らしき男たちが、警棒片手に七人ほど出てくる。


 赤ヒーローが気付いて、通路で待ち構える。

 警備員たちが何事か叫んで、突進するのを、赤ヒーローが殴る蹴るして、叩きのめした。

 桃ヒーローが拍手して、黄色と緑は二十七階を調べ回っている。

 青ヒーローはおろおろと周囲を見回して、カメラを指さした。

 黄色が指鉄砲をカメラに向けると、カメラが破壊された。


「なに、あいつら……」「キタコレ! いつか出るんじゃないかと思ってたわ!」「会長、笑い事じゃないよ!」「別の組織……いや、個人の集まりか……」「先生、言ってる場合か。なんとかしないと!」「どうにもできないよ、ここからじゃ……」


 全員がパニックだった。


 二十八階の階段から五人組が現れる。

 黄色ヒーローは青ヒーローに支えられているから、MPの使いすぎか疲労が溜まっているのだろう。

 緑ヒーローが手近な扉を壊し、二十八階の探索を始める。

 何台かのカメラが投げられた椅子で壊されたが、途中で諦めたらしい。

 カメラを放置して、探索を進めていく。


「たぶん、なんらかの方法で私たちと同じような結論に至ったのかも?」


 SIZUが冷静に観察している。


「リアルスキルに目覚めたヒーローたちだね!

 やってることが素人なのは専門家がいないんだろうにゃー」


「これは今からじゃ助けようがないでっす!

 軍が動く前に逃げ出してくれるといいでっすけれど……」


「今、街中のカメラに侵入して、逃走時のフォローは用意してる……」


 白せんべいの指が怒涛の如く動き出した。


「新しい超能力者たちってことかしらね?」


「目立ちたいバカなんだわ……」


 まりもっこりの発言に山田が不満げに言う。

 まあ、俺たちと似たようなことをしようとしている集団なんだろう。

 実質、強盗みたいになっているが、超能力を過信しすぎているように見える。


「警察が動いてる。あと五分……警備会社も動員をかけたみたいだ」


 白せんべいが呟くように言った。


 色彩豊かな五人組は、逃げ出すことにしたようだ。


「今更かよ! くそ、判断が遅せぇよ!」


 響也が歯噛みする。

 そうは言っても俺たちだってプロじゃない。

 会長の財力や白せんべいの情報収集力によってなんとか体裁を保っているだけの集団だ。

 それらがなければ五人組と大した違いはない。


 ここから急行しても二時間は掛かる。

 俺たちにできるのは、白せんべいが用意した手助けくらいのもので、見守るだけで精一杯だ。


 ビルの外で警官と警備員に囲まれ、五人組は大立ち回りを演じる。

 そこを突破する余力はあるものの、ヘリコプターに補足されている。


「カメラ映像は、映らないようにして、全部こっちに回した。中継地点に偽装をかけまくってるから、簡単には追われない。でも、ヘリはどうにもできないよ」


「墓さん、広告塔のサーチライト動かせない?」


「なるほど、ヘリに目潰しを浴びせるわけか!」


 SIZUの言葉におじいちゃん先生がすぐに合点がいったようだ。


「ネズさん、こっちよろしく」


「分かったでっす!」


 どぶマウスが白せんべいのやっていた作業を引き継ぎ、白せんべいは新しいリンクボードを操り始める。


 街中で五人組を捉えているカメラ映像には、ヘリからの光がスポットライトのように照らしていたが、それが不安定になり急に遠ざかっていく。


「あ、そろそろまずいでっす!」


「分かった。ここがバレる前に終わらせて……」


 秘密基地の大画面に映っていた映像が一斉にシャットダウンした。


「これが限界でっす!」


「そろそろ配信ニュースでも出てるかもね」


 会長が大画面に配信ニュースを流し始める。


 それはテロ事件として報道されていた。

 映されているのは、ビル外での大立ち回りの跡で、パトカーが燃えていたり、負傷者を救護する姿が映し出されている。

 五人組がどうなったかは、続報を待つしかなさそうだ。


「今回の件であそこの警備は強化されるか、捕まっている超能力者が移送されるかするかも……せっかくの手がかりが切れちゃった」


 SIZUが落胆した色を見せる。


「あの五人も気になるけど、また調べ直すよ。

 移送するなら、情報も取りやすくなるかもしれないし……」


「うん、ありがとう墓さん」


 その日はそれで解散になるのだった。



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