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『シュリンプマン〈模倣神格〉』を倒したことで、存在値なるものが解放された。
これは減算ではなく加算方式のもののようで、『リヴァース・リバース︰30』と表されていた。
後々、何かの報酬にでもなるんだろうか。
ログアウト後、静乃と話したことによると、『シュリンプマン〈模倣神格〉』の存在値は倒した時の敵のレベルによって上下するのではないかという話があった。
『グレイキャンパス』が手に入れた存在値は10点だと言う。
『シュリンプマン〈模倣神格〉』は俺たちを倒すことで簡単にレベルアップしていくが、『グレイキャンパス』のやり方だと、生贄にしている響也の持つ『イカロス』が自爆系スキルのため、『シュリンプマン〈イカロス〉』のレベル上げが終わる前に倒せてしまう。
だから、貰える存在値が少ないのではないかということだった。
確かに俺たちは際限なく『シュリンプマン〈サイクロプス〉』をレベルアップさせていた。これは要検証の問題かもしれない。
───まあ、他のレギオンの情報が上がって来たら、もう少し確定できそうだけどね───
静乃は楽しそうに言った。
───現実での影響がどう出るか分からん。正直、俺はあまりはしゃぐ気分になれないな……───
───分からないから、今はゲームとして受け止めることにしてるんだ。サードアイにも分からないみたいだし、運営は『ガイガイネン』を異物として認識してるでしょ。
それなら、倒してしまっても問題なかろうってことで、やるしかないじゃん!
あんまり悩み過ぎるとハゲるよ───
───余計なお世話だよ!───
───サーセン!───
まあ、そうは言っても、分からないことを考え続けても時間の無駄にしかならない。
静乃のように、吹っ切ってしまえば楽なのは分かる。
元々、俺は考えるのが得意なタイプでもないのだ。
目の前に問題があるのなら、それに全力で挑めばいい。
現実での『超能力者』、『リアじゅー』での『ガイガイネン』、どちらも未だ分からないことだらけだが、やることだけは決まっているのが救いだ。
そういえば、前にどぶマウスがスタンドアロンのコンピュータから取って来た情報の精査がそろそろ目処が立ちそうだと白せんべいが言っていた。
また、現実で動くためにもリアルスキルの練習をしておかないとな。
そんなことを考えながら、俺は就寝した。
その夜、妙な夢を見た。
暗闇の中、目の前に巨大な狼がいて、その狼の口から光る玉が出てくる。
それを俺は掴みたいのだが、まるで空気のようにすり抜けてしまう。
掴めそうで掴めないその光は、いつかどこかで見たような光景だった。
この日から、俺は繰り返し同じこの夢を見るようになる。
理由は未だに分かっていなかったが、焦燥感だけは残るのだった。
翌日から、他レギオンの『シュリンプマン〈模倣神格〉』との戦闘記録が集まり始める。
各レギオンが全体としての発信をするようになって、少しずつではあるがまた協力的な雰囲気になってきた。
さすがに共闘はまだ難しいだろうが、SIZUやレオナの頑張りが実を結んだと思うと、感慨深いものがある。
神話型ガチャ魂の分類は難しい。
神や天使の名がついたガチャ魂や神話武器などはまだ分かりやすい方だが、魔術書や魔術アイテム名がついたガチャ魂も使えることが判明した。
『シュリンプマン〈模倣神格〉』にはパターンがある。
レベルアップに伴い、神話型ガチャ魂のスキルを必ず使ってくる。
使い勝手を試しているような感じだ。
各レギオンからの情報によると、やはり星5ガチャ魂は多大な代価を払うようなものが多く、結果的にそれが弱点になる場合が多いようだ。
このことから、やはり他レギオンとの共闘は難しいと言わざるを得ない。
他レギオンの星5ガチャ魂の弱点を晒すことになる。
だが、ガチャ魂を選べば、倒しやすくなるのは確かなようだ。
『りばりば』でも幾つかのガチャ魂を試してみた。
ヤバかったのはムックのユニークである『果心居士』だ。
幻覚を見せるこのユニークはムックの持つ忍者系スキルとのシナジーが高い。
『シュリンプマン〈模倣神格〉』は食った戦闘員のユニーク以外のスキルも使えるようになる。
全滅間近でどうにか倒せたが、一歩間違えたらダメだったかもしれない。
神話型ガチャ魂持ち戦闘員たちは、食われる時にわざとシナジーがないガチャ魂をセットするようになった。
たまに思わぬシナジーが生まれて、酷い目にも会うが、次第に安定してくる。
ただ、弱い『シュリンプマン〈模倣神格〉』は存在値も低い。
悩ましいところだ。
だが、確実に『ガイガイネン』は追い詰めている。
ゴールが見えれば、人はより奮起する。
各レギオンの動きは活発になっていくのだった。




