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翌日、俺はまた大首領様の謁見室にいた。
「……ゐーんぐ〈……ということがあったんだが、どう思う?〉」
昨日観てきた一部始終を説明すると大首領様は唸った。
「うーむ……プレイヤーというのは、無茶苦茶するものだと認識はしていたが、度が過ぎるな……自ら食われに行くとは……」
「ゐーんぐ?〈まずかったか?〉」
大首領様の黒いモヤがあちらこちらと蠢く。
「いや、運営は思いついても実行できない方法ゆえ、驚いただけの話。
ガイガイネンがそのような方法論を取ることが分かったというのが収穫と言えよう。
イカロスには酷かもしれぬがな……」
「ゐーんぐ!〈響也か? アイツなりに納得してのことだ、問題ないと思うぞ〉」
「うん? ああ、そうであるな。そういうプレイヤーを選んだということでもあるしな……」
「ゐーんぐ……〈まあ、そうなるな……〉」
「だが、皆が皆、自ら食われに行く訳にもいかぬだろう。
今後はどうする?」
「ゐーんぐ?〈いや、その前に、この方法論でガイガイネンを神にすることはできると思うか?〉」
黒いモヤは、また狂おしく身体を悶えさせる。
「それが正しく模倣であるならば、『理』を知り、司となって、『神』になるだろうな。
ただ、強大な敵となるぞ」
「ゐーんぐ?〈かと言って、『神』にしないと戦いにすらならないんだろう?〉」
「……うむ。そうなるな、残念ながら……」
「ゐーんぐ!〈なら、やるさ。イレギュラーが居たままじゃ、まともなゲームにならないしな!〉」
「この世界の行く末を決めるのは、プレイヤーだ。
プレイヤーがそれを望むのなら、我らに強制力はないな」
「ゐーんぐ?〈このゲームを終わらせないためにガイガイネンイベントを作ったのは運営だろう?〉」
イベントという強制力があるじゃないか。
「それとて、方向を示すのが精々であろう。
嫌ならイベントに関わらなければいいだけのこと……」
確かに、イベントは自由参加だ。
嫌なら不参加にするか、ゲームを辞めるという選択肢もプレイヤーにはある。
難易度が天元突破していても、道があるなら進むのがゲームというものだろう。
たまに不可能な難易度のゲームがある?
それは作り手の頭がおかしいだけだ。
どちらにせよ、進んでみなければ分からないのなら、スタートボタンを押すだけだ。
「ゐーんぐ〈敵が倒せるようになるなら、それでやってみるさ〉」
「そうか……人とはそういうものだったな……」
「ゐーんぐ?〈黒いモヤになって、希望にしがみつく人の性でもなくしたか、国王様?〉」
「否定しきれぬところが、つらいわ……」
立場が人を変えるというが、黒モヤも人を変えるらしい。
大首領が、運営に近い立場だと言うなら、なるべく人であって欲しいものだ。
そうして、俺は謁見室を後にするのだった。
ちょっとめんどくさい話になってしまって申し訳ないです。
次くらいで簡単にまとめて、進んで行けるはず!
あと、遅くなって、すいませんm(_ _)m




