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その後、俺は『ガイガイネン』イベントに合流して、それからログアウトした。
夜、静乃からの反応を待つ。
───グレちゃん、レポートありがとね!───
───少しは役に立ったか?正直、俺は自分が棒の先っぽに過ぎないと言われても、あまりピンと来ないんだが……───
───もしかしたら、『ガイガイネン』の本体は別の次元にあったりするのかもね。だとしたら、『シティエリア』内の『ガイガイネン』を幾ら叩いても、表面を探り合っているだけというのも納得かも───
───別次元……なるほどな。言ってみれば俺たちプレイヤーと同じようなもんか。ゲーム内で何度殺されようと、現実では関係ないもんな───
───そういえば、グレちゃん、左腕、その後どう?───
───ああ、予定通り、生えた。それを言ったら、静乃の痣は?───
そう、俺の腕は昨日の深夜、寝ている間に生えていた。
生えるという表現が正しいかは別にして、腕をなくして二十四時間後に戻った。
『リアじゅー』内で実証済みなので、大丈夫だろうと思っていたが、動かしにくいなどと言うこともなく、元々の腕と同じだ。
やはり、俺の超能力は持っているガチャ魂の全てに及んでいる。
理由は分からないが、たまたま才能があっただけとは思えない。
なにかあるとは思うが、おじいちゃん先生が調べてくれる予定になっているので、それを待つしかないな。
───うん、ほとんど消えて、後は小さなホクロがひとつできましたって感じ。気にならない程度だから大丈夫。それより、自分がそんな風に暴走したことの方が驚きかな?
撃たれて死んだと思ったけど、さすがは死者の国の女王『ヘル』って感じだよね。
使えるリアルスキルがこれで良かったよ───
黄泉がえり。『死』という概念の操作とでも言うべきか。
俺からしたら、実は死ぬほどの傷じゃなかったとか、銃弾が当たる直前で腐り落ちたとか言われた方が納得できる気がするが、静乃は一度、死んだと言った。
死なないのが一番だが、死んでも黄泉がえるのなら、少しは安心できる。
ただ、『リアじゅー』でリアル設定の死を何度も経験している身からすると、変なトラウマが残らないかは心配だ。
ただ生きていればいいという問題ではない。
なにしろ現実では『リアじゅー』と違って脳保護が効かないのだから。
それから静乃ともう一度、大首領様の言葉を考える。
───『ガイガイネン』は『神』か……───
───ううん。まだ『神』じゃなくて『大いなる何か』だよ。
たぶん、『ガイガイネン』がスキルを模倣したのは、『神』になるための下準備だと思うんだ。『理』探しとでも言えばいいかな……何を司るか決めて、名を与えると『神』になるんでしょ───
───そうか。だが、具体的にはどうなったら『神』なんだ?───
───たぶん、ユニークスキルが使えるようになったら?───
───わざわざ、これ以上パワーアップするのを待たないといけないのか?───
───こっちから何か誘導してやれたらいいけど……探すしかないかも……───
───探す? 何を?───
───そこはほら、ゲーマーとしては、仮説から検証して、何が一番弱くなるのかを探すんだよ!───
ゲーマーとしてか。アイテムでも渡すのかね?
静乃の方で幾つか考えてみるというので、その日はそこで通信を切った。
『リアじゅー』も問題だし、『現実』も問題だ。
仕事だって、そろそろ品評会があるというし、忙しくなってきたな。
俺は明日に備えて、寝るのだった。




