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『シュリンプマン』がスキルを使った。

しかも、スキル名だけ流暢に喋った。


「今のって……」「星4上級騎士のスキルだよな?」「なんで使えるんだよ……」


俺たちが疑問に、手を止めてしまった時、『シュリンプマン』は更なるスキルを繰り出す。


「るられ、【リブラビーム】!」


それは俗に牽引(けんいん)ビームと呼ばれるもので、『シュリンプマン』の手から放たれたビームが当たった『ヴィーナスシップ』戦闘員が一気に引き寄せられる。


「きゃああっ!」


そして、カニ脚のような張り手で戦闘員が散った。


「そんな……」「リブラ星人のスキル……」「なんでこっちのスキルまで……」


魔法文明、科学文明、関係なしでスキルを使うようだった。

ガチャ魂だろうか?それとも何か別の力だろうか?

分からないままに戦闘は進む。


「【食いしばり】が出たなら、HPは一割回復だ!」「なんでもいいから削れ!」


そうして『シュリンプマン』は倒したものの、全員の顔には疑問の色が濃く出ていた。


「仮説ですが、いいですか?」


糸が手を挙げる。

『ヴィーナスシップ』のプレイヤーたちも気になるのか、それまでお互いに「どういうことだと思う?」と話していたのを止め、耳をそばだてていた。


「小型ガイガイネンに『リサーチャー』という個体がいますよね?

あの個体は戦闘能力が他の個体より劣り、そのくせ数が多く、常に口の中に何かを入れては、しばらく咀嚼して吐き出すという性質があります。

その仕草がまるで何かを調べて回っているように見えることから『リサーチャー』と名付けられているんですが……もし、これが何らかのリサーチを行っているとしたら、どうでしょう?」


「糸さん、待ってくれ。奴らは俺たちを食うじゃないか。ガレキや草木は食えないから吐き出すだけだろ?」


戦闘員の一人が反論した。


「いえ、こと『リサーチャー』に関しては、プレイヤーも例外なく吐き出されています。大型の『ガンシップ』や『キャリアー』、『ケージ』などは現実的な解釈をすると、有機物の再利用をしているように見られますが、『リサーチャー』だけ例外なんです。

その他のガイガイネンのようにエネルギー利用している訳でもなく、『リサーチャー』だけが吐き出しているんです」


「ゐーんぐ?〈つまり、『リサーチャー』は調査能力に長けている分弱く、他のガイガイネンが持つエネルギー利用などをしないから、別の機能を持っているということか?〉」


「ええ、『リサーチャー』の能力がプレイヤーの能力調査と『シュリンプマン』への情報送信などに特化されている可能性は充分にあると思います!」


それなら、魔法と科学、両文明のスキルの模倣をしているとしても納得はいく。

さすがに『ガイガイネン』がガチャ魂を持っているとは考えたくないので、おそらく模倣だろう。


「ちょっといい?」


『ヴィーナスシップ』の女性戦闘員が手を挙げて俺たちの話に入って来た。

糸がすかさず「何でしょう?」と対応する。


「聞くとはなしに聞かせてもらったけど、その説明だと足りない部分があるわ……」


いや、もうがっつり聞いてたじゃないか、というのは誰もつっこまない。

『りばりば』としては、少しでも信頼回復に努めたい時期だしな。


全員で続きを待つ。


「『シールダー』が『キャリアー』に進化するのは周知でしょうけど、『リサーチャー』も進化するのは知ってる?」


「いえ、それは初耳ですね」


「これは最近になって、ヒーロー側で出回ってる情報なんだけど……『リサーチャー』の進化先は『ケージ』なのよ。

目撃情報が何件か上がっているわ」


そうか、連携が取れなくなって、情報交換も厳しくなっていたか。


「ゐーんぐ……〈『シュリンプマン』は『ケージ』から産まれるからな……送信能力ではなく、進化能力を持っているのかもな……〉」


「ありえますね……」


俺の言葉に糸が頷く。


「なんて言ったの?」


「ええ、『リサーチャー』の能力は情報収集とエネルギー摂取をしないでも進化できるのではないかと……」


「それは……あるかもね」


「ええ。申し訳ありませんが、その情報を全体に流しても?」


「べ、別にいいわよ……ヒーロー側だけで情報が留まったのは、『りばりば』が『ガイア帝国』に肩入れして起こった軋轢のせいで、私たちが意地悪して教えなかったとか思われたくないし……」


「ありがとうございます!」


糸は丁重に礼を述べた。

今後の関係改善の一歩になるといいんだが。

俺やムサシも思わず頭を下げていた。


即日、『りばりば』名義で今回の『シュリンプマン、スキル使用事件』は全レギオンに情報が流れた。

どうしても確実なソースがないため、『リサーチャー』の能力は、あくまでも憶測、推測の域を出ないが、それはプレイヤーたちが肌で感じていたことでもあったので、情報は一気に拡散された。




俺はログアウト後、いつものようにレポートを書いていた。

どうにも、レポートを書くのが癖になって、書かないと落ち着かないのだ。


特に隠すことでもないので、普通に静乃に送信する。

すると、静乃が不思議なことを言って来た。


───グレちゃんは大首領様に会えるんだっけ?───


───いちおう、名誉騎士みたいな役職をもらっているからな……会おうと思えば、会えると思う───


───そしたらさ、一度、大首領様に会って、今の『ガイガイネン』イベントのこと話してみてくれないかな?───


───ああ、それは別に構わないが……何かあるのか?───


───野良レギオンだと、大首領様とか司令長官様とかいないからさ。NPCからの情報が入らないんだよね。

もしかしたら、レギオンのトップクラスのNPCなら、『ガイガイネン』がなんなのか、知っているかもしれないと思って───


───ああ、現実での影響とか、そういうことか?───


───それもあるけど、『ガイガイネン』の立ち位置?それも良く分かってないからさ───


敵対勢力なのは確かだが、『シティエリア』のNPCを狙う理由など、分からないことは多い。


───……期待にそえるか分からないが、当たるだけ、当たってみるよ───


───ごめんね、グレちゃん。面倒なことお願いしちゃって───


───いや、言われてみると俺も気になるからな───


そういうことになった。

確か最初のイベントの時に説明はあったが、流して聞いていたから、大して覚えていない。

昔のレポートを確認してみる。


以下抜粋。


『飛来せし文明の破壊者』は我らと科学文明信奉者との争いに水を差す、外概念との戦いである。

 外概念は説明が難しいが……我らの理解の外にある何者かと考えれば良い。

 もしくは、地球の敵『ガイガイネン』としようか。

 うむ。『ガイガイネン』は我らの理外から攻撃を仕掛けてくる敵である。

 科学文明信奉者との戦いに割って入る害虫である! クソである! 

 やつらを許してはならない! やつらを許せばこのゲームはゲームオーバーを迎える。

 嘘ではない。このコンテンツをオワコン化しない為にも、諸君らの奮闘を期待する!


─────────────────────


そういえば、そういう設定だったな。

この話だけ見る分には、駆除に失敗するとゲームオーバーとあるが、実際、イベント終了後にも『ガイガイネン』は稀にある『シティエリア』の突発イベントになったからな。

やけに矛盾している気がする。


ふむ、明日にでも大首領たんに会ってみるか。


そう決めて、俺は明日に備えて、無理矢理寝たのだった。



ホワイトデーですね。

ゼロに何を掛けたところで、ゼロなので、自分には関係ないですが……チョコ掛けられた皆さんは、ちゃんとお返ししてくださいよ!w

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