287〈はじめての人型〉
「レオナさん、やべぇんだ!」「聞いてくれ、エビ怪人が出たんだ!」「すぐ他のレギオンに忠告しないと!」
俺がリスポーンすると、既に他のメンバーがレオナに思い思いに騒ぎ立てていた。
「あの、落ち着いてください。
ちゃんと聞きますから、一人ずつ……」
「頭、一撃だったんだよ!」「ケージの中から出てきたんです!」「座標爆破がどわーってなって、バンバンバンバンって!」
俺はレオナの隣で腕組みしながら仁王立ちしているオオミに声を掛ける。
「ゐーんぐ!〈ガイガイネンの新種が出た。俺たちはケージを釣って倒そうとしたんだが、ケージが誰かを捕らえているように見えた。
そこで、ケージを倒して、やつの背中を切り開いてみたら、人型に近い、見た目はエビ怪人みたいな新種のガイガイネンが出たんだ。
特徴としては赤味を帯びた身体で人型、あばらの部分に他のガイガイネンに見られる多足の退化したような甲殻脚と発達した二腕二足で頭がエビに近い。
それから、爆破規模の小さな座標爆破攻撃を自分の周囲にばらまいていた。たぶん、二十~三十発くらいはあったと思う。
二腕での攻撃は強力で、カニの脚みたいな手のひらをしていて、それで平手打ちをしてくる。ダメージ攻撃か部位破損攻撃か分からないが、一撃で頭を持っていかれて死んだ〉」
「ううむ……ここに来て新種か……」
「ゐーんぐ……〈それと、これは私見だが、俺たちの言葉を模倣しようとしていた節がある。
個人的には、早めに殲滅しないとまずい気がする……〉」
俺の言葉にオオミはゆっくりと頷き、レオナは騒ぐやつらに向けて、口元に指を当てた。
「……じゃあまとめると……」
そう前置きをして、俺が話したことをそのまま諳んじるレオナに、一堂は「「「そうそう!」」」と返すのだった。
全員を納得させてから、レオナは俺にウインクをひとつ。
お前……俺の話を丸パクリするなよ……。
俺は仕方がないと、肩を竦めて見せるのだった。
「ねえねえ、グレンさん、今度は私と組んで行ってくれませんか?」
俺の肘を引いたのは、ばよえ〜んだ。
「ゐーんぐ?〈おう、それはいいが、またどうしてだ?〉」
「部位破損攻撃と言ったら、グレンさんと私かなって……二人で確認したら、もう少し分かることもありそうじゃないですか?」
「じゃあ、私も行きます。それから、皆さん、もう一回、行けますか?」
レオナが挙手をした。
今、死んだばかりのやつらが元気良く手を挙げた。
お前ら、それ実験台……いや、何も言うまい。
俺たちはレオナとばよえ〜んという二人を加えて、もう一度、一方通行ポータルへと飛んだ。
俺たちが全滅した場所に戻ると、エビ怪人は既に移動してしまっていた。
「手分けして探すか?」
戦闘員の一人が提案する。
「いえ、こっちにいる気がするランニン」
再生怪人『ダチョウランニングシューズ』に変身したばよえ〜んが方向を示す。
「ばよえ〜んさん、分かるの?」
「私の中の『ノルニル』が騒いでいるランニン……」
そういえば持っていたな『☆5ノルニル』。
予言者のガチャ魂だ。
玉井がもし『リアじゅー』をやっていたら、アイツもこれ系のガチャ魂持ちになっていたかもな。
ふと、そんなことを思った。
少し進めば、どこかのヒーローらしき声が聞こえてきた。
「お前、所属はどこだ! こんなこと許されないぞ」
「ろられ、りょろるら、ろろら!」
「くそ、不可侵なんか無効だ! お前が先に仕掛けて来たんだからな、エビ野郎!」
「れりらろる!」
サイバー系の鎧を着たヒーローが繰り出すパンチに胸の多脚をまとめて数本折られたエビ怪人が叫ぶ。
「るろろろろろろろろるらろろろろーっ!」
俺たちはその光景をまざまざと見せつけられた。
エビ怪人の叫びに併せるように、ミョイン、ミョインと座標爆破の警戒音が鳴ったかと思うと、それが一斉に爆発した。
「おご、ぎゃあああっ!」「な……うわっ!」「やべっ……」
ヒーローは五体満足な部分がないほどの爆発に晒され、その背後に控えていた戦闘員たちも軒並み爆散した。
エビ怪人の前方に小爆発が連続して、ババババババッと拡がっていく。
「俺たちが食らったのと違うぞ……」
誰かが息を呑んだ。
先程、俺たちが食らったのが自分を守るためのバリア型座標爆破だとすると、今のは敵を狙った爆裂散弾式座標爆破というべき光景だ。
ヒーローがビクビクと身体を痙攣させながら、エビ怪人を睨む。
「全員、散開! 距離を取りつつ、ヒーローからエビ怪人を引き離してください!」
レオナがすぐさま指令を出した。
戦闘員たちが「「「イーッ!」」」と返事をして散っていく。
「グレンさん、ばよえ〜んさん、なるべく離れて観察を!
私はあのヒーローを!」
言ってレオナが駆け出して行く。
今は倒すことよりも情報収集だ。
俺たちはレオナのプランに沿って動く。
他レギオンに警告を発するにしても、ある程度、まとめた情報がないと攻略にもならない。
「よし、まずは俺からだ!」
戦闘員の一人が飛び出していった。




