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 翌日。 日曜日。

 俺は初めての『ザクロダルマ』戦に身を置いていた。

 科学文明も魔法文明も野良もなく、『リアじゅー』プレイヤーの中で高レベルと呼ばれる者はほとんどが参加していたと思う。


 『ザクロダルマ』は子を産むことが唯一と言っていい戦い方だった。

 今まで地道にゲリラ戦を仕掛けて、敵を削って来た努力がようやく結実しようとしていた。


 辺りには残り三体まで減った『巨大ナナフシ』と外殻がソフトシェルクラブのように柔らかい『ガイガイネン』しか残っていなかった。


 それだって、大型・小型『ガイガイネン』は座標爆破攻撃を持っているので、決して楽観していい訳ではなかったが、間引きの上に間引きを重ねた結果、俺たちの腕は『ザクロダルマ』に届いたのだった。


 『ザクロダルマ』はその巨大に膨れた腹故に、逃げることも適わず、蹂躙された。


 今際の際に『ザクロダルマ』はひとつの卵を、ケツを持ち上げて産み飛ばした。


 誰かの放った銃弾が、それを撃ち落とした。


 産み飛ばされた卵はたぶん、国立公園の方に向かっていたように見えた。

 途中で撃ち落とされたから、真相は分からないが、おそらくはそうだったように見える。


 まあ、かなりの高高度から落ちたから、ソフトシェルクラブな幼生体は死んでいるだろう。

 仲間に襲われたことを知らせる狼煙のようなものだったのかもしれない。


 明日からは、軍演習場周辺から『ガイガイネン』を掃除しつつ、国立公園方面へと全レギオンの網を狭めていくことになる。

 連絡用幼生体が生き残っていたところで、軍演習場の『ザクロダルマ』は既に倒した。

 何も問題はないはずだった。


 そこから一週間。

 順調だ。怖いくらい順調に『リアじゅー』は進んだ。

 二体目の国立公園の『ザクロダルマ』へと俺たちは近づいた。

 御神木の根元に様々なレギオンのプレイヤーたちが集う様は、さながらユグドラシルのオーディンの戦士たちといった雰囲気だ。

 軍演習場の『ザクロダルマ』戦から、全体の雰囲気が見違えるように良くなった。

 なにしろ、一方通行ポータルが隠されることなく御神木の周囲に置かれている。


 怪人とヒーローが普通に話し合ったりする姿まで見える。


「よう、あんたんとこは今日はどっちから?」「今日は人数揃ってるから海岸通り直進だボトル」「ウチも海岸通り近辺から始めようって話になってる。危なくなったら、こっちにトレインしていいからな」


 二体目の国立公園の『ザクロダルマ』はこの日の夜には手が届く予定だった。

 だが、現実時間での夜の部に入ると、あいにくの『夜、雨状況』だった。


 代表同士の話し合いから戻ってきたレオナが俺たちを集めて言う。


「予定通り、ザクロダルマを落としに行きます。

 あいにくの夜、雨状況ですが、全員、見落としのないようにお願いします」


「「「イーッ!」」」


 『ザクロダルマ』戦の開始だ。

 大きく回り込むように動いた俺たち『りばりば』のプレイヤーは、『ザクロダルマ』の背後を突いた。


 一週間掛けて、周囲の『ガイガイネン』を削ってやれば、『ザクロダルマ』自体はただのデカい的だ。

 プレイヤーたちが我先にと『ザクロダルマ』に突っ込んで行く。

 『ザクロダルマ』攻略の道筋が確定した。


 暗闇の中、『ザクロダルマ』の最期の嘆きのような卵が産み飛ばされる。

 何人かの銃弾が空を狙ったが、外してしまう。

 そんな中、暗闇を切り裂くように光の矢が飛んだ。

 『ホワイトセレネー』の矢だ。


 最期の卵が撃ち落とされて、国立公園の『ザクロダルマ』が倒された。


 歓声が上がる。

 残るは南の三角山の『ザクロダルマ』のみになった。


 俺たちは勝ちを確信した。


 だが、日常化していた『ガイガイネン』戦に影が落ちた。


 魔法文明レギオン『ガイア帝国』と科学文明レギオン『マーズエンジェル』のラグナロクイベントが始まった。


 水曜日のことだった。



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