表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
283/447

282


 玉井は生きているのか、死んでいるのか。

 テレパシーが届いたことから、生きていると思う自分と、あの坩堝の中で生きられる訳がないと思う自分がいて、それが頭の中をぐるぐると回っていた。


 脱出自体は、上手くいった。

 大量のドローンが飛ぶのに紛れて、俺たちは逃げることができたが、その頃にはもう玉井のテレパシーは聞こえなくなっていた。

 距離によって消耗が激しいとか言っていたはずなので、当たり前だが、なんとも言えない気分だ。


 そのまま、国立公園近くまで戻って、会長に十五人の超能力者を頼んで、俺たちはおじいちゃん先生の病院へ直行になった。


 俺たちには休息が必要だった。

 Fエリアの通路を固められた時点でSIZUたちも戦闘があったらしく。

 全員が疲弊していた。

 何人かはMP切れ寸前で、とにかく寝かせないと危ない状態だった。

 SIZUもその一人だ。


 俺とまりもっこりは、もう一度、早急に『ユミル』への侵入を口にしたが、今の状況では到底叶えられない願いだった。

 玉井の生存は願うしかないレベルの話だった。

 普通に考えればMP切れで死んでいるはずではあるが、俺の肉体変異のように、MPを消費することなく、超高熱の中を無呼吸で生きられる身体にでもなるスキルがあれば数日は生きていられる可能性がある。


 SIZUとした約束の話も気になるところだが、ここで待っていたらどうにかなる話ではない。

 俺は帰って寝た。

 徹夜で動いていたから、MP切れでなくても眠いのだ。


 目が覚めたら、腹がぐうと鳴った。

 俺はアホみたいに腹の中に飯を詰め込んだ。

 身体がエネルギーを求めていた。


 静乃から連絡があった。

 『リアじゅー』内で落ち合うことにして、俺はログインした。


「あれ? 今日はログインできないかもとか言ってませんでしたか?」


 糸が『大部屋』で声を掛けて来る。


「ゐーんぐ!〈ああ、そのつもりだったんだけどな。友人とこっちで会うことになったんだ〉」


「へえ、リア友がリジュ友ですか。いいですね!」


「ゐーんぐ?〈リジュ友?〉」


「最近じゃ、リアじゅー内の友人をそう呼ぶんですよ」


 なるほどと思いながら、俺は準備を整えてポータル移動した。


 向かうは『ガレキ場』エリア。

 そこから、静乃たちが攻略中だという国立公園方面に向かう。


 正直、目印は国立公園で一番大きな木だと言われて、かなり戸惑いつつこちらに来たが、俺の心配は杞憂に終わった。


 国立公園付近はガレキが少なめだ。

 それよりも半ばジャングルのようになっている。

 そんな中を切り替えた『長距離飛行セット』で飛んでいると、ジャングルの中心部に一際、大きな樹木が鎮座ましましていた。


 遠目に見ると、その巨大樹を中心にジャングルが広がり、その奥にある『ガイガイネン』の『ザクロダルマ』を中心としたコロニーと拮抗しているような雰囲気がある。


 『ガイガイネン』は国立公園内の港と反対の端、国立競技場の辺りで繁殖しているようだ。


 だとすると、位置関係的には巨大樹はおじいちゃん先生の病院とか壬生狼会のたまり場とかその辺りだろうか。


 これだけの巨大樹なら、俺の家の近くに行った時に気づきそうなものだが……そういえば、自分の家の『リアじゅー』内での扱いを見たくなくて、そちらに目線を向けないようにしていたなと思い出した。


 俺は巨大樹の根元を目指して降りていくのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ