表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
266/447

265〈トンネル出口攻防戦〉


 現実の土地勘があるので、大通りを迷うことなく進める。

 港に近ければ近いほどガレキは多いが、とりあえずの方角だけ間違えなければ、知っている道が見えてくる。

 違うのは見えている風景と『ガイガイネン』くらいで、土地の起伏や微妙に残る元の風景の名残りに何やら懐かしい気持ちにさせられる。


 なんでこんなガレキ場になってしまったのか……。

 まるで爆弾でも落としたようだ。


 歩いていくと、前に見た時より『ガイガイネン』が多い。

 『トンネル』を塞いだからだろうか。

 二千人で進軍していても『ガイガイネン』は気にせず単騎で攻めてくる。

 ぐるりをたくさんのレギオン戦闘員に囲まれて、一匹程度ならほんの数秒で消えていく。


 俺は道案内として、戦闘厳禁なので、経験値が稼げない。残念だ。


ましろ︰こちらは病院付近まで来ました。


グレン︰こちらは中学校付近だな。人数が多い分、そちらはもう少し遅れるかと思ったが順調だな。


ましろ︰あまり『トンネル』まで時間をかけたくないので、多少は急いでますから。


グレン︰『トンネル』付近に行ってからが本番だ。息切れしないようにな。


ましろ︰はい。お気遣いありがとうございます!


 ましろと定期的に連絡を取って、連携が取れるようにしている。


 まあ、あちらの方が人数が多いし、魔法文明側に遅れはとらないと気勢をあげているので、士気が高い。あまり心配するようなことはないだろう。

 逆に俺たち側の方が、もっと急ぐべきだとか、道にマーキングをしたいからゆっくり進んで欲しいだとか、レオナが対応しているが、色々と問題がありそうだ。

 やはり自由を標榜する『りばりば』主導だからだろうか。

 自由と協調性は並び立てるものだと思っていたが、魔法文明側レギオンにとっては違うのかもしれない。


 色々と問題は起こりそうになったが、レオナのカリスマという名の発砲音で全てを解決しつつ、俺たちは『トンネル』まで進んだ。


 途中、数人が大規模レギオンから抜けていったのは、めぼしいところにポータルを設置するためだろう。


 『トンネル』が近くなると、戦闘音が聞こえてくる。

 同時にましろからチャットが来て、『トンネル』近辺に敵を多数確認、戦闘に入る旨が伝えられた。


「ゐーんぐ!〈科学文明側がトンネル近辺に『ガイガイネン』の群れを発見。戦闘に入っているそうだ!〉」


「トンネル位置の確認はできました。ヒーローたちと共闘するかどうかは、各レギオンに任せましょうか」


 レオナが全体に向けて、そういう旨の説明をした。

 ヒーロー側に加勢しに行くレギオン、いち早くマザー探しに出るレギオン、道中の確認に必死なレギオンと様々だ。


「ゐーんぐ?〈俺たちはどうする?〉」


「今後もこういった両文明共闘型のイベントがあるようなら、友誼とまでいかなくても、最低限、協定なり約定が結べるくらいに信用が欲しいです。

 加勢しに行きたいですが、皆さんよろしいですか?」


「「「イーッ!」」」


 自由だが協調性があると、お互い楽しく遊べるな。


 俺たちは戦闘音を頼りにそちらに向かう。


 ガレキの山に身を隠した百名が、戦闘状況を窺う。

 いきなり団体で姿を見せた瞬間に、条件反射的に撃たれでもしたらいやなので、まずは様子を見る。



 ましろに連絡を入れたが、戦闘中のため連絡がつかない。


 科学文明側戦闘員というのは、ヒーローは別として、普段の作戦行動に対応する時は基本的に遠距離戦が多い。

 そもそも『シティエリア』で使えるのが遠距離武器なので、そのせいもあるだろうが、タンク代わりのヒーローが抜かれてしまうと、途端にピンチになりやすい。

 ピンチになったところに二、三人ずつ、大げさなくらいに声を張り上げつつ、参加していく。


「大丈夫かー!」「助太刀いたーす!」「助けに来たぞー!」


 こういう風に、声を大にして許されるのは、俺たちの人数が多いので、特別目立つやつでもない限り、誰が誰だか判別できないからだ。

 少人数レギオンだと特定の誰かとして認識されやすくなるので、戦闘員語が欠かせない。

 少しでも認知度を減らさないと、無駄に狙われたりするからな。


 俺はもう手遅れなので、撃たれたらそれまでと割り切って出るしかない。

 幸い、工作班が一方通行ポータルの設置に成功してくれたので、戻って来るのは簡単だしな。


 少人数ずつ、明確に目的を叫びながら、驚いて引き金を引きそうになってもそれどころじゃない瞬間を狙って、俺たちは援護に飛び出していく。


「援護します!」「ゐーんぐ!」「引きつけるぞ!」


 レオナ、俺、オオミと三人で出ていく。

 一瞬だけ場がざわつくが、なんとか収まる。

 俺の背中には冷たい汗が流れる。

 瞬間的に集まった、赤い攻撃線が殺気代わりに俺の全身を包んだからだ。

 すぐに【野生の勘(ウルフセンス)】の攻撃線は消えたが、恐ろしかった。


 あまり目立たないようにしないとな。


 俺たちとは別に援護に入ったレギオンもいる。

 にこぱんち率いる『マンジクロイツェル』やドン巽率いる『邪龍族』なんかもそうだ。

 『マンジ』は散々共闘を望んで来た『ヴィーナスシップ』の背後に現れ、何故か大声援を送った。


「ロータスちゃん、頑張れ!」「練習生、応援してるぞー!」「ヴィーナス! ヴィーナス!」


「いいから、手伝いなさいよ!」


「よし、お前らお触り厳禁だぞ!」「ルール守れよ!」「推しを守れー!」


 ヒーロー『ロータスフラワー』のひと言で、ついに共闘が叶った瞬間だった。


 一瞬、にこぱんちと目が合って、奴は俺にサムズアップを決めた。

 今日はプライベート参戦かな。


 『邪龍族』は一人、飛行スキル持ちの怪人がいて、そいつが敵中央に他の戦闘員をまとめて落とすという荒業で参戦した。


「ジャー!」「ジャー!」


 全部で十人。周りは『ガイガイネン』だらけ。

 ひとかたまりになって、小型を蹴散らしながらヒーローレギオンの方向に逃げ込む。

 最初に目立つ登場をして、弱小レギオンっぽさを目立たせるように動いて、ヒーローレギオンたちの中心部で自分たちが戦う場所を確保した。

 中央部はヒーロー側の大規模レギオンが多いので、層が厚い。

 そちらからたまに援護が飛んでいる。


 色々なやり方があるものだと俺は少し感心してしまった。

 こうして、『トンネル出口攻防戦』が始まったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ