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 『ガイガイネン』による突発イベントが始まった。

 変身ありでアイテムドロップなしなら思いきって(コア)が使えるな。


 少し待つとレオナが大型モニター下の壇上に立った。


「皆さん、注目をお願いします!」


 ざわざわとしていたプレイヤーたちが一斉に静かになる。


「今回のイベントについての、他レギオンと協議した結果をお伝えします。

 今回のウチの担当地域は『飛行場』になりました。

 前回の『飛来せし文明の破壊者』イベントを経験したプレイヤーは既知のこととは思いますが、この『ガイガイネン』イベントは『ヒーロー』側レギオンとの共闘はかなり難しいと言わざるを得ません。

 ですが、我々はこのイベントで一人でも多くのNPCを救い、『ガイガイネン』を倒さなくてはなりません。

 こちらの画面を見て下さい」


 大型モニターにマップが表示される。


「こちらが現在、分かっている限りの『飛行場』エリアのマップになります。

 今、全員にデータを送ります。

 今回は予想されるNPC避難所は二ヶ所、軍基地と国外線空港です。

 時間が無かったため、『飛行場』エリアに車輌が集められていません。

 プレイヤー各位は、今から言う担当地域から車輌で移動、『飛行場』エリアの各位置からNPCを救護、移送する班と避難所を確保する班に別れてもらいます。

 ヒーローレギオンもおそらく大規模レギオンが『飛行場』を担当すると予想されています。

 そうなれば二ヶ所ある避難所のどちらかをヒーロー側が担当、もう一方を我々が抑えるという形になると思われます。

 ヒーローレギオンはパトロールが先に動いている以上、我々は後手に回るのは確定です。

 基本的にはヒーローレギオンと争うことなく、交渉で済ませたいところですが、どうにもならなかった場合、第三避難所として国内線空港を抑える予定です。

 プレイヤーのチーム選抜は基本的にはラグナロクイベント時のタグを流用します。

 第四陣、また、ラグナロクイベント未参加でこちらのイベントに新規参加して下さる方は受付にお申し出下さい。

 こちらで割り振りさせていただきます。

 また、シティエリア用武器の貸出はいつも通りです」


 つまり、選びたかったら早い者勝ちということだ。


 俺は現状、『ショックバトン』一択だからな。

 焦る必要はない。

 まずはアイテム整理から始めよう。

 『シティエリア』ではアイテム類も制限される。

 ただ、今回はアイテムドロップがないから、がっつり持って行くことができる。


 ある意味、お祭りイベントだが、失敗はイコールでゲームエンドの可能性がある。


 なんで運営はちょいちょいこのイベントをやるのか、意味がわからん。

 俺ですらブランド時計が買えるくらい課金しているんだ。決して経営が苦しくてコンテンツを終わらせたいようには思えない。

 緊張感を高めるだけなら、どこかのエリアが一ヶ所使用不能になる、くらいでいいと思うんだが……。


 まあ、他人に話したところで「またクソ運営か……」で終わってしまう話だ。

 深く考えるだけ無駄か。


「チームホワイトは車輌回収ですね。グレンさんはサクヤさん、シシャモくんと住宅街の車輌を回収して飛行場に向かって下さい」


「ゐーんぐ……〈いつも、俺の言語のせいで苦労をかけるな……〉」


 受付の糸に礼を言う。


「いえ、大した手間でもないですから、大丈夫ですよ」


 糸から『ショックバトン』と車輌のキーを受け取って、サクヤとシシャモと合流してから『住宅街』へとポータル移動する


「はいはーい! 運転しますよー!」


 サクヤが運転を申し出る。


 『住宅街』はあちこちで騒ぎが起きている。

 俺たちが運ぶのは軽トラだ。


「もう大丈夫、私たちが守るから!」「ポピー、ゴー! ポピー!」「おい、推しへのコールは実弾に込めろ!」


 『ヴィーナスシップ』の『オレンジポピー』という可愛い系ヒーローと『マンジクロイツェル』の戦闘員か。


 アイドル系ヒーローレギオンと、元々ドルオタが集まってできた怪人レギオン。

 意外と相性がいいのかもしれない。

 ヒーローが前に出て、怪人側戦闘員がフォローを入れている。

 共闘が成立しているパターンだな。珍しい。


「行きますよー!」


 サクヤがハンドルを握る。自動運転は当然切ってある。

 俺とシシャモは荷台だ。

 前に作戦で使った爆弾くらい貰ってくれば良かったな。


 サクヤが強めにアクセルを踏み込む。

 おおう、急発進。


「ゐーんぐ?〈シシャモ、大丈夫か?〉」


「は、はい!」


 俺たちの近くを同じ『りばりば』の車輌が走っている。


 運転手はカーナビにつきっきりで、こちらを見ていないので、自動運転なのだろう。

 前回イベントや『作戦行動』時の道路がいつ封鎖されるか分からない状況では、手動運転の方がいいと思うんだが、今の時代、手動運転は習わされるがほぼ使わないし、自動運転の方が良いという人も多いようだ。

 ロボットタクシーのように運転手無しの車もあるしな。

 サクヤもやりたいと言うから任せたが、あまり手動運転の経験は多くないようだ。


 各レギオンがNPC避難のために主要道路を戦場にしないよう立ち回っているからか、今のところは主要道路の方が進みやすい。


 『飛行場』は北の外れ、『郊外』エリアから行けるので、まず目指すは『郊外』エリアということになる。

 『行政区』を抜けて、『郊外』に至る予定だ。


 それにしても、前回イベント『飛来せし文明の破壊者』の時は『住宅街』は激戦区だったと聞くが、今回はそこまででもない気がする。

 『ガイガイネン』も小型、といっても軽自動車くらいのやつだが、それが多いように見える。


 いちおう、今回は無駄な混乱を避けるため、全員人間アバター着用で来ているが、『マンジクロイツェル』はいつもの軍服タイツが多いな。

 まあ、怪人側だと人間アバターはお高いものだから、あまり多用したくないのかもな。

 俺たちも幹部会からのお達しで『飛行場』では戦闘員、それまでは人間アバターでなるべく大人しくしろと言われている。

 欲しいのは人員輸送の車輌であって、他地区で争う意味はあまりないからな。


「押し止めろー!」「車輌が来るぞ、ガイガイネンを進ませるな!」「マンジー!」


 『マンジクロイツェル』の戦闘員が少し大型の『ガイガイネン』をなんとか足止めしようと頑張っている。


「サイリウム、三番から六番!」


 サイリウム型のバトンを使っているのか。

 しかも、アレは太古の昔から受け継がれたという伝説のオタ芸。

 全員が同じ動きで、サイリウムを突き出し、回し、突き出し、回し、型を変えて、両手をぐるぐるしてから、連続突き出しと綺麗に揃っている。

 十人程度の集団だが、統制の取れた動きだ。

 途中の両手ぐるぐるは意味わからんが。


「はい、もう一回! ラブ!」


 一瞬、押し返された大型『ガイガイネン』だったが、その目と思われる部分が赤く瞬く。


「マジ……」「ぐおっ!」「そんなっ……」


 ラブの隙間に座標爆破系の『ガイガイネン』の攻撃が挟まったことで、『マンジクロイツェル』戦闘員の半数が巻き込まれた。


「逃げろー!!」


 大通り中央に大型『ガイガイネン』が躍り出る。


「ゐーんぐ!〈避けろ!〉」


「くぬっ!」


 サクヤが必死にハンドルを回すが、大型『ガイガイネン』の多脚の一本に引っ掛かり、衝撃と共にスピンする。

 だが、俺たちはまだいい方だった。

 俺もシシャモも車体に掴まり、必死に耐えたため、どうにか吹き飛ばされずに済んだ。


 悲惨なのは後続の同胞たちだ。

 自動運転のため、ブレーキが掛かり、正面から追突したり、それを避けようとして家に突っ込んだりしてしまう。


 数人がリスポーン。車輌はおしゃかになった。


 さらに後方から『ヴィーナスシップ』の横開きトラックが来て、途端に主要道路が戦場になった。


「ゐーんぐ!〈残った戦闘員だけでも回収する!〉」


 俺は車から飛び降りた。

 急いで他の『りばりば』戦闘員を助けに向かう。


「あ、グレンさん、レベル!」


 あ……。


 俺は『ヴィーナスシップ』のビームチャクラムの雨に飛び込んで、『りばりば』戦闘員を車から引き摺り出したところで、ちょっと動いた大型『ガイガイネン』の爪に掠って死んだ。


───死亡───


 あ……。



久しぶりに宣伝です。

いつも評価、感想、誤字報告ありがとうございます。

まだ評価してないよって方がいたら、評価の方お願いします。

 うんうん。痛くない。痛くない。ちょっとポチるだけで作者のモチベーションが上がる不思議ボタンなんじゃよw

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― 新着の感想 ―
[一言] >変身ありでアイテムドロップなしなら思いきって核コアが使えるな。 あれ?コアってレベル制限あったような >「あ、グレンさん、レベル!」 リセットして数分?数十分?で忘れてるの草
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