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 金曜夜は人が多い。

 それだけではなく、新しい第四陣メンバーが多いってことか。


 ログイン直後のルーティーンをこなしつつ、静乃、いやSIZUから頼まれたパーティーメンバーを募ることにする。


グレン︰野良の知り合いと第七フィールドのダンジョンボス攻略をしたいと思っている。

 二、三人、付き合ってくれるやつはいるか?


ナナミ︰すいません、他の人と第七フィールド行くことになってます。

 ダンジョンボスはまだ見つかってないですよね?


グレン︰見つかってないな。だから、探すところからになる。


サクヤ︰行きまーす!


ナナミ︰こちら、七人パーティーで、狙いは同じくダンジョンボスなので、競走ですね!


グレン︰そうか、それは負けられないな。


ムック︰行きたいピロ!


ナナミ︰むむ、サクヤさんにムック隊長まで……ぴ、ぴんちですかね……。


煮込み︰私はナナミちんと行く予定ミザ!


coin︰すいません。自分もナナミと約束してしまいました。


グレン︰いや、問題ない。謝ることでもないしな。


ばよえ〜ん︰スピード勝負なら私がグレンさんに助力しましょう!


レオナ︰ああ、一瞬ログアウトしていた間に……悔しい。


グレン︰もう一人くらいなら相手方に伝えるから、レオナが来たいなら来るか?


レオナ︰大丈夫でしょうか?


グレン︰ああ、どうせ従妹だからな。どうとでもなる。


煮込み︰噂の従妹ちゃんミザ!

 これは気合い入れないとミザ……。


にゃんこの日︰これは楽しみな対戦カマ!


オオミ︰シシャモと第六フィールドの予定だ。


グレン︰じゃあ、装備を整えたら幕間の扉で。




 アイテムを買いに行く。

 普段ならアカマルの店に直行だが、アカマルはもういない。

 アカマルの店には、黒い星マークのNPCドールがいた。


「ゐー?〈ここは道具屋か?〉」


───いや、あんたらプレイヤーが使うようなもんは置いてないな───


 どうやら、道具屋じゃなくなったらしい。


「ゐー〈そうか。何の店になったんだ?〉」


───俺たち用の食いもん屋だ───


「ゐー?〈どんなものが置いてあるんだ?〉」


───コレだよ───


 見せられたのは丸薬だ。NPCドールは普通に食事ができるはずだよな?

 NPCドールの食事は口部分に穴が開いて、ヒュポッと吸い込むように食べる、というか消える。


「ゐー?〈普通に食事できるんじゃなかったか?〉」


───まあ、食事はできる。……足りない部分を補うものだ───


「ゐー?〈美味いのか?〉」


───さて、美味いと言えば、美味いが、不味いと言えば……───


「ゐー!〈味見させてくれ〉」


───問答無用だな。ほらよ───


 丸薬をくれたので、匂いを嗅ぐ。

 無臭だ。

 大きさは小さめの飴玉くらいで黒茶色の薬みたいに見える。

 口に入れる。鉄っぽい。それから、ちょっと生臭い。


「ゐー!〈なんだこりゃ!〉」


───俺らにとっちゃ、貴重なものだ───


「ゐー……〈そ、そうなのか……〉」


 貴重なものと言われてしまうと吐き出すのもはばかられる。

 むりやり咀嚼して、飲み込む。

 ん? 今、ちょっと懐かしいというか、旨味を感じたな。


「ゐー〈一瞬、美味かったな……〉」


───美味かった? ふん、これに手を置け───


 クロホシが水晶玉を取り出す。

 占いとかで使いそうだな。

 まあ、言われた通りに手を置いてみる。

 クロホシがしばし動かなくなった。

 水晶玉を観ているのだろうか?

 それから、クロホシは別の丸薬を取り出した。赤っぽい丸薬だ。


───これも食っておけ。それから、たまにでいいから、顔を出せ───


 言われるままに赤っぽい丸薬を口に入れる。

 めちゃくちゃ甘い。痺れるような甘さだ。


「ゐーっ……〈甘ぇっ……〉」


───我慢しろ。効いてる証拠だ───


「ゐー?〈効いてる? 何に?〉」


───心が疲れたことは?───


「ゐー〈リアルでやってるからな。何回も死ぬと、心の疲れは感じるな〉」


───だろうな。十マジカだ。心が疲れたらひと粒食え───


 ゲーム内で心の疲労に効く薬ってなんだ?

 まあ、薬草〈フレーバー〉がリアルな痛みに効くくらいだから、赤い丸薬が心の疲労に効くこともあるのかもしれない。

 まあ、精神的疲労に甘いものを食べるのは普通か。

 ゲーム内でもプラシーボ効果はあるかもな。


 俺は十マジカ払って丸薬を買った。


 それから、道具屋の場所を聞く。

 新しく建て直した区画にあるらしい。

 言われた場所に行けば道具屋の看板があった。

 中に入ると緑の花のマークのNPCドール、ミドリカがいた。


「ゐー?〈ミドリカが継いだのか?〉」


───グレンさん……ええ、私はドリンクだけだったから、手広くやることにしたの……───


「ゐー……〈そうか……アカマルも喜ぶだろう……〉」


───……だと、いいな。一緒にお店やりたいって言ってたから!───


 いつもより明るい感じで動き回るミドリカに俺は何も言えなくなってしまった。

 プレイヤーは生き返るからな。NPCドールとは違う。

 アカマルの助言を思い出しながら、保温具や諸々を買い揃える。


───第七フィールド?───


「ゐー!〈ああ、そうだ〉」


───女王様に気をつけてね。凍らされると、操り人形になるんだって───


「ゐー?〈知ってるのか?〉」


───噂がね、あったから……───


 礼を言って、俺は『大部屋』の『幕間の扉』へと向かった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 故人を偲ぶなんて高性能なAIだなぁ(すっとぼけ)
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