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レポートを送る。ほどなくして返信がきた。
───テイムモンスターのアイテム化に他の人を選ぶなんて、なんてオカルト?───
───知らん。どうせ、運営の仕様だろ───
───ああ、グレちゃんが『リアじゅー』に慣れすぎてスレてしまった……───
───運営の理不尽は慣れたよ───
───よし、グレちゃん、今度私と第七フィールドのボス戦行って、私に装備品テイムして!───
───なんで現状、最高難易度のフィールドのしかもボス戦で、できるかどうかも分からない装備品テイムに挑戦するんだよ───
───だって羨ましいじゃん!───
───別に行くのはいいけど、テイムなんて簡単に発動しないし、約束なんてできないぞ───
───うんうん。別に本気で装備品もらえるとか思ってないから。私、野良だし───
───まだ、野良なのか───
───もうちょいしたら、レギオン立ち上げるよ!───
───は?───
───しかもね、野良レギオン!───
───え?───
───びっくりした?───
───びっくりというか、可能なのか? そんなこと───
───NPCドールなし、ボスは仲間と持ち回りの予定で、全部自分たちでやらなきゃいけないけど、代わりに体制側と反体制側、どっちのフィールドにも入れるんだ! 凄くない?───
なんだそりゃ?
静乃は何を考えてそんなこと……いや、普通に面白そうだから、なのか。
NPCなしのレギオン、可能なのか。
───ど、どうやって?───
───野良の世界ってのがあって、運営に問い合わせしたら、可能だって。
グレちゃんだから話したけど、他の人には内緒ね!
暫くは立ち上げては潰されるを繰り返す覚悟ではいるけど、立ち上げ前に潰されるのは勘弁だから───
───お、おう。内緒にしておくのは構わないが……何するんだ?───
───第三勢力を作るの。最初は傭兵団みたいになるかな?───
───お前、すげーこと考えるな……───
───まあ、色々調べる内にできそうだから、やることにしただけだけどね!───
ウチの従妹はスケールが違う……。
それから、ヒーロー側の最近の動向を聞いた。
それによると、『マギスター』亡き後、ふたつの勢力が台頭してきたらしい。
ひとつは『銀河ポリス』。
元は中規模レギオンだったが、『マギスター』の敗残プレイヤーを吸収して、大規模レギオンに昇格した。
もうひとつ、やはり中規模レギオンから大規模レギオンに昇格したのが『ポセイドンギャラクシー』。
どうやら『マギスター』の敗残プレイヤーたちの大部分はこのふたつのレギオンに別れて吸収されていったらしい。
『銀河ポリス』は一度、戦ったか。
わけのわからない独自の法律で魔法文明世界を全否定してくるやつらだ。
『ポセイドンギャラクシー』は海賊がコンセプトのレギオンで、無法者の掟というのを押し付けてくるらしい。迷惑な話だ。
結果、明日は本当に静乃と第七フィールドに行くことになったので、早めに切り上げて寝た。
金曜日。
営業先で何人かから『リアじゅー』を始めたという話を聞く。
「売り切れ中だったんですけど、第四陣用ソフトが緊急で発売になったんですよ!」「あ、俺も買いましたよ!」「どっちにしました?」「やっぱり、子供の頃の憧れが捨てきれなくて、ヒーローになりたいんですよ!」「いやあ、ヒーロー側は大変だって話ですから、僕は怪人を目指しますね!」
俺は第三陣で始めているが、偉そうにできるほどゲームを理解していないからな。
始めた理由にしても従妹にレポートを書くためだ。
そういえば、静乃も反体制側、即ち怪人側でやりたいとか言っていたはずだが、いつのまにやら第三勢力を立ち上げる、か……ゲーム馬鹿ってすげぇな。
とにかく、第三陣で始めたが未だに手探りでやっているという話をしておく。
第四陣か。
それはつまりプレイヤーが増えるってことだ。
営業にも使えそうだし、もう少し普通に使えるネタを仕入れるべきだろう。
俺が知っているのはコアなネタが多いからな。
今晩のゲーム終わりにでも、総合の初心者スレでも漁っておくか。
そう思いながら、俺は帰路に着いた。
語られるSIZUの野望!




