189 side︰グレン
短いですが。
本日、二話目〈リハビリ中〉
敵『マギスター』基地内はウチと同じく、かなりカオスだ。
復活と同時に走り出すやつ。逆に蹲ったまま復活するやつ。怒鳴る敵の幹部らしきやつ。
その中で隔壁を閉めさせまいと踏ん張る青部隊の十数名とそれを突破しようとする敵NPCドールたち。
「か、肩パッドだー! 肩パッドがいるぞ!」
敵の戦闘員が騒ぎ始める。
「頼むぞ、フォールン・ジェット!」「行ってくれ!」「見ろ、あれが我らの希望の光、闇の堕天使様だ!」
「ぶっ……もしかしてそれが肩パッドの名前か?」「見た目は大人で中身はガキかよ!」「無視しろ! あんなやつはウチの守護神に任せておけばいい!」
少しイラついたので、敵幹部らしきやつに【天罰の雷】を落として、俺は【ベアクロー】【サーベルバンパー】をセットしながら、敵基地『大部屋』を駆け抜けて行く。
「ゐーんぐっ!〈どけえ! 【熊突進】【一刺し】【正拳頭突き】【回し蹴り】【雷瞬】〉」
スキルの大盤振る舞いをしつつ、『ロッカールーム』へ。
レッドマンイチゴで回復も忘れない。
熊顔だと拳大のレッドマンイチゴもひと口なのはありがたい。
【飛翔】はなるべく抑える。
『ロッカールーム』は天井が高く設定されているが、そのぶん下はロッカーが並んでいて遮蔽が多い。
敵のビームライフルが連続で当たると、死んでしまうので、敵の影やロッカーなどを利用するのだ。
「闇の堕天使、こっちだ!」「この先にヒーローがいる!」「ボス部屋まで抜けられないんだ!」
『ロッカールーム』の隔壁を確保している青部隊員たちが叫ぶ。
声のする方へ。
「ゐーんぐっ!〈すまん、先に行くぞ!〉」
「頼んだぞ!」「ここは抑えて見せる!」「行ったやつらが戻って来ない、気をつけろ!」
通路は二度曲がっていて、怨嗟の声が聞こえる。
「俺を狙え!」「頼む、俺を先に!」「お願い、痛いんだ……」
「く、来るな!」「なんで……なんでこんな……」「くそ! リアル設定じゃなきゃなんとでもなるのにっ!」
何が起きてるんだ?
「俺の鎧、これだっけ?
もう少し硬い鎧じゃなかった?」
戦場に響くやけに温和な声が、俺の背中の翼を震わせた。




