184 side︰じいじ
短くてすいません。
「言祝ぐものなり!」
おお……やはり、彼から力を貰える気がする。
怪人・闇の堕天使は私に戦う勇気をくれた存在だ。
親しい者はグレン、それ以外からは肩パッドなどと呼ばれる彼。
みなの覚悟が決まらない中、率先して戦い、傷つき、それでも何度でも敵に挑む姿は良く覚えている。
彼は死んだ息子に似ている。
顔や体型の話ではない。
その挑みかかる瞳だ。
悲しみを怒りに隠して、足掻き藻掻く、誰かのために挑む瞳に息子が見える。
孫の路実央のために、なんとしても生きたいと病床で戦い続けた息子。
その息子に良く似た瞳の光を見れば、彼が挑戦者なのだと分かる。
もともとこのゲームは、孫のために始めたゲームだ。
隠居して田舎暮らしをしていると、なかなか孫の顔を見ることも叶わない。
死に際に息子から、路実央をお願いしますと頼まれたものの、既に離れて暮らしている身では、簡単に孫の顔を見ることすらできなかった。
だから、まるで現実のような世界というのが売りだったこのゲームをふたつ買って、ひとつを孫に贈った。
路実央の母親から、誕生日になったら渡すと言われて、先に始めることになったこのゲームだったが、その現実と見まごうほどの世界観に圧倒され、私は少しずつゲームを進めていった。
孫がゲームをはじめて、一緒に遊べるようになって、ゲームを通じてたくさんのことを一緒に経験した。
冒険、買い物、遊園地、それから天然物の食事。
現実では与えられない物ばかりだ。
冒険ではドキドキやワクワク、それから生き残る知恵を一緒に考えたりした。
買い物のやり方を教えたり、孫の趣味を教えてもらったり、一緒に食事をして笑いあった。
この幸せを壊させはしない。
青の扉を通って、回廊を進み、『マギスター』に通じる扉の封印を解く。
「あと五分だ。急ごう!」
みなに声を掛け、急ぐ。
私たちは武器を構える。
「じいじ、ぼくもやれる!」
「おい、孫。お前はダメだって話しただろ!」
「いやだ! じいじはぼくが守る!」
まったく……ロミオを止めてくれと頼んだのに……またか……。
「ロミオ。待っていると約束したろう?」
「してない!」
「いや、頷いただろう」
「じいじの話が面白くなくて、眠くなっただけだもん」
私は額に手を当てる。
そう来たか。
ロミオはこれで散々痛い目を見ているのに、それでも私を守ると言ってきかない。
「死ぬのは痛いだろう?」
「慣れたもん!」
「死ぬ度に泣くじゃないか」
「じいじだって、顔が真っ青になるじゃん」
「そりゃあ……」
反論しようとしたが、できなかった。事実だから。
「ふぅ……仕方ない。私から離れるんじゃないぞ!」
「じいじもね! 無理しちゃダメだよ!」
私たちは『ショックバトン』を構えた。
 




