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142〈大公開!りばりば基地〉


 日曜日。

 今日は昼からがっつり遊べるということで、さっそく『大部屋』に降り立った。

 夜の『作戦行動』に参加できることを確認して、まずは基地内の新エリア、『城』と『街』でも見て回るとしよう。

 『大部屋』から行けるのは『ロッカールーム』、『プライベートルーム』、『食堂部』の三つで、『ロッカールーム』から『装備部』と『プライベート空間』に行けるようになっている。

 『城 』と『街』は『プライベートルーム』の通りの奥、『警備部』を抜けた先になる。




『大部屋』→『食堂部』

 ↓ →『プライベートルーム』→『警備部』

『ロッカールーム』        ↓

 ↓ →『プライベート空間』  『街』

『装備部』            ↓

                『城』


 図に表すとこんな感じだ。

 拡張前は『警備部』の先に『大首領の部屋』があったらしいが、それは『城』の内部に移動したらしい。

 『警備部』も来たことがなかったが、ここには戦闘訓練所があり、ここでスキルの確認なんかもできるらしい。

 『警備部』の警備員は球体関節人形のNPCたちが担っている。

 『警備部』には幕間の扉にそっくりな扉があり、そこを開けると『街』が一望できる。


 カッパドキアの岩窟都市を大きくくり貫いたドーム状地下空間に再現したような『街』だ。

 天井には謎の光る球体が太陽の代わりに街を照らしていて、地下空間なのに暗くはない。

 かなり広大な地下空間だ。

 その一番奥には大岩でできた三段重ねのウエディングケーキのような形をした城がある。


 街全体が発掘されたようにも見えるが、殺風景というわけでもなく、水場があったり、炊事の煙が上がっていたり、NPCドールたちが歩いていたりして、活きている雰囲気がある。


 まるで自分が探検家になったような気分で俺はウキウキと高台から続く階段を降りて行く。


 岩をくり貫いたような家々にNPCドールがペンキで表札を書いていた。

 赤い三角マークや白い五芒星、花や魚のマークに牛やらペガサスなんてのもある。


 看板を立て掛けているのは、店なのだろう。

 交差する剣は武器屋、ハンマーは鍛冶屋か。

 パンの絵は食事処、服屋は中世ヨーロッパ風のシャツやらドレスみたいな物まで扱っているコスプレ屋みたいになっている。

 店の中はくり貫いた岩だが、最新の設備が中に置かれていて、なんとも奇妙な景色が逆に新鮮だ。


 普通の家を窓から覗くと木製家具と簡易料理機と竈と壺が並んでいたりして、これまた奇妙な感覚になるが、別に嫌ではなくて、面白い。

 魔法文明世界が必死に現代文明を取り入れようとしているようだ。


 家の中の子供のNPCドールと目〈?〉が合う。

 新しいNPCドールというやつか。耳の位置に緑色のダイヤマークが描かれていて、ちゃんとシャツとズボンを着ている。

 こちらが軽く手を振ると、相手も手を振り返してくる。

 緑ダイヤくんがトコトコと寄ってくる。

 窓越し、といっても穴があるだけだが、穴越しで緑ダイヤくんの顔に文字が浮かぶ。


───おじさん、だあれ?───


「ゐーっ?〈グレンだ。覗いちまって済まなかったな。気を悪くしたか?〉」


───ううん。来たばっかりでボクも良く分かってなくて、お母さんはお城に行ってるから、おるすばんしてるの───


「ゐー?〈そうか。名前とかあるのか?〉」


───なまえ? なまえはないよ。これがボクのしるし───


 そう言って、球体顔の耳の位置の緑ダイヤを見せる。

 そうか、NPCドールはマークが名前みたいなところがあるからな。


「ゐーっ?〈それじゃあ……緑のダイヤだから……グリンダって呼んでいいか?〉」


───グリンダ……うん。グリンダでいいよ。へへっ!───


「ゐー?〈グリンダのお母さんはお城に何しに行ったんだ?〉」


───なんかねー。おうさま? だいしゅりょうさまから、いろいろと教えてもらうんだって───


 なるほど。NPCドールたちにとって大首領は王様という扱いらしい。

 それにしてもあの大首領から何を教わるというのか……やっぱりメタなことだろうか。


───ねえねえ、グレンさんはひまなの?───


 窓枠に掛けていた手を、ぺしぺしと叩かれる。


「ゐー〈まあ、この街の探検をしに来ただけだからな〉」


───ひまだったら、いっしょに遊ぼうよ!───


「ゐー〈ああ、構わないが何をするんだ?〉」


───んー? お家から出ちゃダメっていわれたから、すごろくしよう!───


 何故かグリンダとすごろくをやることになった。


 それは魔法文明世界版人生ゲームというもので、波乱に満ちている。

 ゾンビに出会って一回休み。精霊と出会って百マジカもらう。ドラゴンの寝床で回り道、運命の分岐点、騎士か魔法使いか冒険者、農民か商人か、転落人生で野盗になるか。


───やった。魔法使いだよ。一番給金が高いんだ───


「ゐー……〈野盗だよ……もう3出してグリンダを襲ってマジカを奪うしかないな……〉」


 俺はグリンダを襲って、持ちマジカの半分を奪う。


───え〜、なんで出るかなぁ───


「ゐー……〈さあ、もう一回、襲うマスを狙うぞ……〉」


 ダイスを振って、駒を進める。


───やったー! いっちばーん! 賞金は二千マジカ───


「ゐーっ!〈こうなったら一発逆転、人生の大勝負。俺はドラゴンに挑むぜ!〉」


 ダイスは六を示して止まる。


「ゐーっ!〈イエス! 逆転、五千マジカ!〉」


───えー! すごーい!───


 結果、俺の逆転勝利が決まった。


───はあ〜、面白かった! グレンさんの勝ちだから、これあげる───


 グリンダは魔石を渡してくる。


「ゐー……〈いや、賭けじゃないし、こんな貴重なものもらえねえよ〉」


───え、でも……───


「ゐー?〈いいから、しまっとけ。その代わりってわけじゃないが、俺と友達になろう。どうだ?〉」


───ホント? いいの?───


「ゐーっ!〈ああ、また遊ぼうぜ!〉」


───うん!───


 俺はグリンダと友達になった。

 あれ? もしかしてこれシナリオだったのか?

 俺、フラグ折ったような気がするな。

 まあ、いいか。なかなか楽しかったし、友達増えたしな。

 俺は一度ログアウトして、『作戦行動』に備えるのだった。



ストーリーシナリオ発生の予感と同時に、フラグへし折ったらしき音を聞いたガックリ感w

人生ゲームしただけにしては、お高い報酬なので、グレンくん、おや? と思ったようです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ワケわからんフラグ立てて、即座にへし折る。 やっぱり一般人とは微妙にゲームの方向性が違う気がする。
[一言] 広大な地下空間に、円錐状の都市が広がり、頂点中央には岩を掘り抜き削り出した城がどっしり構える… こんな情景かしら? 天蓋がそのまま空の様になって明るいんだろうけど、自分のアタマの中には天蓋が…
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