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ごめんね。今日は短いですm(_ _)m
『幕間の扉』が閉じる。
第二フィールドだ。『シャーク団』との因縁の地。
ここで始まった因縁だから、ここでケリをつけろとでも運営はいいたいのだろうか?
『シティエリア』と違って、こちらは『昼』状況。いつもの風景という感じだ。
「みなさん……隠れて下さい」
どこかからレオナの声が聞こえた。
建物の陰から、ひょっこり顔を出す。
奇襲をかけようということか。
「ゐーっ?〈まだ、来てないのか?〉」
「はい。車がない状態で持ち帰っているはずなので、もう少し掛かるはずです」
とりあえず俺たちも建物の陰へ。
「もう少しバラけた方がいいと思います」
シシャモが言う。
「ゐーっ!〈そうか、サメ系ガチャ魂は察知能力があったか〉」
全員でバラける。
おそらく、相手もここで狙われるのを知っているはずだ。
糸からの指令でオオミたちも再集結、状況によってサクヤたちの応援に行くのか、こちらの応援に来るのか変わるだろう。
「グレン、いつものやつで信楽焼の狸を破壊したいピロ」
「ゐーっ!〈分かった。今の内に変身しとけよ〉」
タイミング良く、じぇと子が復活したからな。
ようやく俺も万全と言える。
「変身ピロ……。
シノビピロウ……ピロ」
すっ、と暗がりに身を潜めると、気配が消える。
こういう時にはピッタリかもな、ニンジャスキル。
『幕間の扉』が光る。
全員に緊張感が走る。
四人のサメ人間とそれに囲まれるように現れたのは、夜の街にいそうなスーツを着た人間アバター、鮫島だった。
鮫島が眩しそうに太陽を見上げる。
それから少し鼻を鳴らして、ゆっくりとあちら、こちらと指をさす。
さすがにこちらが待っているのは理解しているか、怪人で押し潰そうという意思を感じる。
怪人たちは鮫島が指さす方向へと、一匹ずつ突進していく。
「【計算された跳弾】からの【サメ牙手裏剣】ブレ!」
半透明な頭部で脳だけが存在感を放つ鮫頭人身のサメ人間『サメブレイン』が投げる牙が、建物や岩に跳弾して、隠れていた俺たちの仲間を穿つ。ナックルだったか。
「ぐっ……くそ! 課金武器の力を見せてやる!
『火炎剣』!」
カンスト勢のナックルが抜き放つのは炎を纏った長剣だ。課金武器なのか。
「死にかけが持ってても、怖くねえブレ!
【サメ牙手裏剣】ブレ」
ナックルが身体能力の高さで大きく跳んだ。
投げられたサメ牙は大地に刺さる。
「【火炎一閃】、焼き魚にしてやる!」
「【くし刺し】ソド! 剣なら剣でねじ伏せてやるソド」
ナックルは横から現れた『ソードシャーク』に突き殺された。
カンスト勢でもこれだ。怪人はヤバい。
「おっと、なかなか経験値美味しかったソド。レベルアップしたソド……」
『ソードシャーク』がそんなことを言った時、鮫島が面倒くさそうに不可視化したままの画面を弄り始めた。
「うわ、めんどくせぇ……Lv3000超えたら一人減らすまで指定物が動かせねえだと……あ〜さっきミスしたアイツでいいか……ほれ、削除」
鮫島は問答無用で一人、参加者を削ったようだ。
そういうルールもあるのか……。
そんな風に鮫島が余裕を見せるのも、その間に他の四人の鮫頭人身の怪人たちが暴れているからだ。
「おら、弾けろコラ、【メントスコーラ】コラ!」
肩に炭酸飲料のペットボトルをつけたサメ人間がタックルの形をとると、肩が膨張。
ペットボトルの蓋が殺人兵器となって飛ぶ。
「あぶなっミザ!
ぬうう……完璧に隠れたはずなのに見破るとは……やるミザ。
それなら、私の力も見せてやるミザ。
変身ミザ! マンティスミザリー、ここに降臨ミザ!」
黒いカマキリドレスの貴婦人系怪人『マンティスミザリー』だ。
「私に抱き締められたいのは、お前ミザ?
【蟷螂の抱擁】ミザ」
『マンティスミザリー』の両脇に幻想のカマが現れ、左右からそれが『コーラシャーク』を襲って、ギリギリと万力のように締め付ける。
「ぐええっ、出ちゃうだろコラ、やめろコラ!」
何が出るか、聞くのは野暮か。
視線を移せば『タイガーシャーク』を名乗る攻撃ヘリと合体したサメ人間が、角がスプーンの鹿人間『ディアスプーン』と対峙している。
「ほらほら、避けられるもんなら避けてみるヘリ! 【誤差数センチ】ヘリ」
「避けるプーン? 必要性を感じないですプーン。【捻れる】プーン」
『タイガーシャーク』が手にした幻想のミサイルポッドから放たれるミサイルが、まるで敵を見失ったかのように揺れて、見当違いの場所で爆発する。
「おいおい、簡単にやられんなよ。なんのために貸してやったと思ってんだよ……」
鮫島が額に手をやってから、視線を上げて呟く。
「追加だ……」
『幕間の扉』が光る。
「もう出番か……カン」「……サイ」「鮫島さん、早すぎますってトン」
ゾロゾロと十人の戦闘員。
『シャーク団』が俺たちと同じ程度の人数を揃えているとして、残りは七、八人くらいか。
そして、その十人が一斉に叫んだ。
「「「変身!」」」
全員が変身する。ど、どういうことだ?
俺たちは、何が起きているのか、訳が分からなかった。




