ビョルケスの夜3
筆が進まな過ぎて失踪するかもしれませんがその時はお察しください。
人気のない路地裏にある裏組織のアジト、そのアジトの一室に四人の男がいた。
「ジョミニ様、うまく囮に誘導出来ましたぜ」
欲のまみれた笑みを浮かべそう言ったのは、ネイとアンリが昼間に会った年老いた男。彼は自らのボス、ジョミニの前に跪き、彼の言葉を待っている。
「ほう、それは重畳。気付かれてはないんだな?」
「勿論です。うっかり口を滑らせかけましたが、国の奴らは気付いてなさそうでした」
「・・・ならばいい」
そう返すジョミニ、彼は傍らに控えていた男にある命令を下す。
「マンモン、褒賞を渡してやれ」
「あいよ」
そう気だるげに返事をした男、マンモン。彼は手に持っていた男を年老いた男に手渡した。
「ほらおっさん、約束の褒賞や。大事に使うんやで?」
「へへっ、どうもどうも」
媚びた笑みを浮かべながらその袋を受け取った男、中にはジャラジャラと音を立てる大量のイーナウド硬貨が詰まっていた。
「俺からの用事は終わりだ、帰っていいぞ」
「へへっ、じゃあまた」
貰った袋を大事そうに抱えて、年老いた男が部屋を出ていく。彼ら三人は労いの言葉を掛けるでもなく、男が部屋から出ていくのを黙って見つめていた。
「・・・下卑た男だ、ああいうのが一番嫌いなのだ」
そしてそれを見計らったかのように、研究者風の男、ファリグが口を開いた。
「えぇ?そんな嫌いなん?」
「あぁ、どうも好かんのだよ」
「うむむ、儂としては好都合なんやけどな」
「同意見だな、ああいうのが一番扱いやすいのだ」
ジョミニは先程の年老いた男に、ある命令を下していた。
その命令というのが、仮に国の者がアジト付近に近づいて来たのなら、同盟関係にある裏組織のアジトの場所を教えろというものだった。
「・・・まぁ確かに、今回の計画が上手く行ったのは彼のおかげですからね」
「やろ?ああいう奴のほうが有能なんよ」
「否定はできないな」
彼らからしてみれば、クーデターさえ上手く行けば後のことはどうでもよかったのだ。裏組織はその過程で必要だっただけで、別になくても困らない。他の裏組織との関係が悪化しようがどうでも良かったのである。
「無事に明日、革命を起こせそうだな」
「そいつはよかった、絶対成功させよな」
「あぁ、分かっているとも」
そう言ってミシェルとマンモンが満足げにほほ笑む。一人は自らの悲願がかなうことを喜んで、一人は自らの計画が驚くべき程に上手く行ったことを喜んで。
「では私はもう寝るよ、明日に備えなければ」
「そっか、じゃあな」
そう言ってミシェルが部屋から出ていった。残ったのはマンモンとファリグの二人だけ。
「で、明日の計画はうまくいきそうか?」
「当たり前やろ、儂らが味方しとるんやから」
「そうか、では彼の目標であるビョルケスの再構築というのは?」
「それは無理やな、だってわしらが味方しとるもん」
そう言って嘲るような笑みを浮かべるマンモン。マンモンの目的も、ファリグとほぼ同じものだった。
「我が主の願いはこの世界のやり直し、そして儂らの目的はそのための拠点づくりや。これほどにまでに目的に合致した極上の場所を、見逃すわけがないもんね」
「つまりお前、用が済んだらジョミニを殺すつもりなのか」
「ジョミニだけやない、全員殺すで。だって邪魔やろ?拠点づくりの?」
「同感だ、私としても異論はない」
そう言ってファリグも同意の意を示す。
彼ら二人にジョミニに対する忠誠など微塵もなかった、用が済んだら切り捨てるつもりだったのだ。
「ま、ここまで上手く行っとるし、イレギュラーが発生せん限りは大丈夫やろ」
「イレギュラー?例えば?」
「例えば?う~ん、七魔公とか七聖公とか・・・、あとは勇者とか」
勇者、その言葉にファリグが食いついた。
次の投稿は中々構想が思い浮かばなかったので未定です。