帝国にて5
かなり短いです。
「きゃあ~!!可愛い坊やっ。そんな縮こまらないで、お姉さんと一緒に遊びましょ~?」
アンリさんに連れられて、ビョルケスのとある食事処に連れてこられた俺達。
そこはいいんだ、そこまでは。
「なんでキャバレーなんですか!?」
充満する酒と香水の匂い。
辺りを見渡してみると、露出度の高いお姉さんたちが腰をくねらせて楽しそうに踊っている。
そう、俺たちが連れられてきたのは、ビョルケス歓楽街にあるキャバレーだったのだ。
青少年には少々気まずい場所である、俺とラスは肩身が狭いことこの上ない。
ちなみにタイタスはノリノリで踊っている。
どうも村に伝わる伝統的な踊りを踊っているようで、この店にはびっくりするほど似つかわしくなかった。
現に一緒に踊っていたお姉さんも、若干困惑気味である。
「はて?男の方はこういうところが好きだと本で読んだことがありますよ?」
「いやいや、人によりますって」
何がタチ悪いって、俺たちを連れてきた本人であるアンリさんは、いたって真剣なところだろう。
多分本気で俺たちが喜ぶと思っている。
だから強く当たることもできず、モヤモヤが溜まるばかり。
「恥ずかしがらないで坊や。私が何でも教えて、ア・ゲ・ルっ」
お色気ポーズをとりながらそんなことを言ってくるお姉さん。
何でもねぇ・・・。
「じゃあこのビョルケスを統治するミシェルさんについて教えてください」
「・・・」
おっと、アンリさんの顔ちょっと怖くなった。
ちょっと踏み込むすぎただろうか。
そう心配していたのだが、それは杞憂だったようだ。
「大満足よ。いっぱいお金を使ってくれるもの」
お姉さんが朗らかに笑う。
そしてそれにつられるかのように、他のお姉さんたちも嬉しそうに色々教えてくれた。
「そうそう、たまに一緒に踊ってくれるのよ」
「この店の常連さんよ。あの人はとってもいい人だわ」
「その通りだとも。何の不満もないさ」
「民思いのいい為政者だぞ」
周囲のお客さんからも、そんな声が上がり始めた。
・・・もう十分かな。
「ありがとうございました。参考にします」
「もうおわり?」
「はい、十分です」
「あはは、それじゃあ、お姉さんと遊びましょう?」
「えっ?」
困惑する俺をよそに、胸の谷間へ手を突っ込んだお姉さん。
そして突っ込んだ手をもぞもぞと動かし、一つの箱を取り出した。
「坊や、あまり気乗りしていない様子だし、こういうサービスにするわ」
そう言った後に、箱の中からばら撒かれたのは、五十四枚のトランプだった。
「・・・だったらやろうかな」
「うふふ、お手柔らかにね」
「そうもいきませんよ~」
「あらん、カッコイイわぁ~!!」
「・・・おい、ラスもやるんだぞ!!」
「えっ、僕もですか?」
「当たり前だろ?アンリさんもどうです」
「・・・でしたらお言葉に甘えて」
対角上に座って遊んだ。
楽しかった。
次の投稿は十月二十一日です。