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とある勇者の冒険譚  作者: azl
第六章 帝国での復讐劇
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帝国にて4

「あの、そのジョミニっていうのは?」


 聞いたことが無い名前だった。

 この国の中では有名人なのかもしれないが、俺はビョルケスの人ではないので、その辺詳しくないのである。


「おっとすまん、おぬしは旅人じゃったな。ジョミニというのは、前帝国近衛団副団長だった者の名前だよ」

「そんな人が裏切ったと?」

「あぁ、大層不愉快なことだがの」

「ふむ、で、その理由は何なんでしょう?」


 前帝国近衛団副団長、そんな偉い人がなぜ裏切ったのか?

 その理由が全く思いつかない。


「ジョミニはとても欲深い奴でね。自分の欲求を満たすため、不正に手を染めてたのさ」


 そんな俺の疑問に答えてくれたのは、現帝国近衛団団長、ベルティエさん。

 若干の怒りをにじませながら、ジョミニについて教えてくれた。


「詐欺、脅迫、窃盗、それに暴行。あいつは自分の欲望のため、好き放題やってたんだ。しかも足が付かないよう、自分でじゃなくて部下に命令してね。そして俺たちも奴の実力は認めてたし、やる内容も見逃して問題ない程度のもんだったから、つい最近までは見逃してた。だけどだんだん無視できないほど大規模なものになってきたから、奴の徒党ごと騎士団から追放したんだ。これがちょうど先月のことさ」

「じゃあそのジョミニって人は、追放されたことを恨んでるってことですか?」

「だろうね。逆恨みもいいとこさ」


 そう言ってベルティエさんが眉を顰める。

 でもどうやってその恨みを晴らすつもりなのか?

 少し考えてみたところ、一つだけ心当たりがあった。


「そういえば、新しい裏組織が出来たって聞きましたけど・・・」

「おそらくはジョミニ一派の仕業じゃろう」

「俺もそう考えてる。調査はまだ途中だけど、多分間違いないだろうな」


 ミシェルさんもベルティエさんも、同じ考えのようだった。


「ジョミニの奴、あれでも結構人徳があっての。おそらく騎士団の中にも、奴との関わりが続いている者がいるはずじゃ」

「つまりそのジョミニと関りが無い俺たちに、パレードの警戒を頼みたいってことですか」

「その通りじゃ。奴らの目的はおそらく、この建国祭を無茶苦茶にすること。これは我が国の品格に関わるため、絶対に阻止しなければならん。無論、報酬はたんまり払わせてもらうゆえ、前向きに考えてほしい」

「・・・さすがに考える時間をもらってもいいですか?」


 俺の一存で決められるような問題ではない。

 仲間たちと相談してから決める事案だ。


「今日の夜、こいつが城に帰るまでに決めてくれるかの?」


 そう言ってミシェルさんが手招きしたのは、小麦色の髪をした眼鏡の女性。


「アンリです。しばらくの間、よろしくお願いいたします」


 その女性、アンリさんは、俺のほうを見つめながら丁寧に腰を折った。

 俺もつられて腰を折る。


「どうも、ネイです。よろしくお願いします」


 美人には慣れない。

 ちょっとおどおどしてしまった。


「宿はこちらで用意しておく。夕食はアンリの案内に従っておくれ」

「分かりました」

「うむ、では機会があればまた会おう」

「はい。それでは」


 頭を下げて部屋から出ていく俺たち。

 結構緊張したけれど、うまいことやれたんじゃなかろうか。


「それではご案内いたします。はぐれないように注意してください」

「分かりました」

「うし、ラス、はぐれないようについていくぞ」

「・・・えぇ、その通りですね」


お兄ちゃん風を吹かせるタイタス。

お前がだよ、とラスの視線が語っていた。

次の投稿は十月十八日です。

空きます。

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