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とある勇者の冒険譚  作者: azl
第六章 帝国での復讐劇
54/69

帝国にて2

次の次の章が最終章でしょう。

今のうちに行っておくと、いい終わり方はしません。


バッドエンドという意味じゃなくて、物語の締めとしてよくないといった感じ。

「帝国近衛団の方だったんですか!?」


 帝国近衛団というと、一人で百の兵に匹敵する者だけが成れるという、精鋭ぞろいの騎士団のことだ。

 まさかそんなにすごい人だったなんて。


「新入りですけどね。先月の人員整理で枠が開いたんです」


「へぇ~、それでもすごいことですよ」


「・・・いつも以上に減りましたからね」


「う~ん、寄る年波には勝てない。ってやつですかね?」


「それもあると思うけど・・・」


 何かを言いかけたが、すぐに口を閉ざしたルイさん。

 まぁ無理に聞いたりはしない。


「ま、色々あるんですね」


「そう、色々。ところでお礼の件なんですが・・・」


「どうかしました?」


「申し訳ありません。私少し用事がありまして・・・。私の部下を呼んでいるので、そちらの方から受け取ってください」


 そう言ってぺこりと頭を下げたルイさん。

 そこまで気にしなくてもいいのにね。


「いえ、気にしないでください」


「そう言ってもらえると助かります。それでは私はこれで」


「あ、一つだけ。部下の方はどちらに?」


「もうすぐこちらに来ると思います」


「分かった。お仕事頑張ってね」


「はい」


 そう言ってルイさんは街並みの中に消えていく。

 方角的には・・・、お城かな?


 まるで要塞みたいな、いかつい見た目だが、それと同時にフィクションのような美しさも放っている。


「綺麗な城だな」


「はっ!!ビョルケスの民として、嬉しい限りでありますっ!!」


「うおっ!?びっくりした!!」


 いきなり後ろから話しかけられて、うっかり飛び上がってしまった。


 現れたのは金髪の男。

 年齢は結構若そうである。


「これは失礼いたしましたっ!!私は、ビョルケス騎士団所属、トワーヌともうします!!」


「あなたがルイさんの部下ですか?」


「はいっ!!」


 そう言って大きな声で返事をするトワーヌさん。

 何というか、元気な人である。


「ルイ様からお礼の品を預かっています。こちらですっ!!」


 そう言って差し出されたのは、黄金色に輝くネックレス。

 その中心にはさまざまな色の宝石がはめられており、日光が反射してステンドグラスのようになっていた。


 ていうかこんなの頂けるわけがない。

 流石に高価過ぎる。


「これはちょっといただけませんね」


「えぇ、ですが受けた恩を返さないわけには・・・」


 困った困ったと頭を悩ませるトワーヌさん。

 さて、どうやってこの場を収めようか。


 そう考えていたのだが、事態の収束は思ったよりも簡単だった。


「ぐうううううう」


 何処からか鳴り響いた腹の虫。


「いやぁ、悪いな。朝からなんも食ってねぇから」


 その正体はタイタス。

 まぁ確かに俺も腹が減っているけど。


 ・・・そうだ、良い案があるじゃないか。


「じゃあ、お昼奢ってもらうってのはどう?」


「え?」


「いやさ、そのネックレスの代わりに、昼ごはん奢ってほしいなぁって」


「そんなことでいいんですか?」


「いいよ、まぁ、お金あるならでいいけど」


「問題ありませんっ!!後でルイ先輩から徴収するので、大丈夫です」


「ハハハ、そりゃあいい。飛び切りうまいもん食べに行こう」


「じゃあ、服屋の横にあるパスタ屋さんに行きましょう」


「分かった」


 俺たちはその店が何処にあるのかわからないので、トワーヌさんの後ろについていく。

 都市の喧騒を掻き分けながら、そのうまいパスタ屋さんに向かうのだった。




「美味しいね、このパスタ」


「でしょう?」


 トワーヌさんが嬉しそうに答えてくれた。

 やってきたのはさっき言っていたパスタ屋さん、ちょっと値が張るけれど、今日は気にしなくてもいい。


「あぁ、こら。お前、落ち着いて食えよ」


「・・・」


 上手いものは人を黙らせる。

 ラスはケチャップナポリタンを、無言でパクパク食べていた。


 だがそのたびに口元周辺が赤く汚れていく。

 隣に座ったタイタスが、布巾をもってふきふきしているものの、すぐに汚れていくのできりがない。


「しっかし凄い人ですね。いつもこんな感じなんですか?」


「いえ、普段はもう少し少ないです」


「じゃあ建国祭の影響ですかね?」


「おそらくは」


 高級レストランだというのに、辺りの席は満席だった。

 いやはやこれがお祭り効果ってやつなのかね。


「明後日だもんね。俺たちもちょっと寄っていくかい?」


「お、そりゃあいいね」


「・・・(コクコク)」


『まぁいいんじゃないですか。たまには休息を取らないと』


 ブルーさんの許可も出たし決まりだ。

 そう思って心躍らせていたのだが。


「・・・気を付けてくださいね。今回の建国祭、ちょっと事件が起きるかもしれません」


「どういうことだ?」


 トワーヌさんが小声でそんな忠告をしてきた。

 ちょっと気になったので、俺も小声で聞き返す。


「実はビョルケスの街に、新しい裏組織が出来上がったみたいで」


「裏組織?」


「はい。今の所は被害もなく、噂話の域は出ませんが、一応ね」


「・・・ま、気を付けておくさ」


 裏組織ねぇ。

 ま、騎士たちもいるし大丈夫、かな?


「ま、今気にしても仕方ないね」


「・・・確かにその通りですね。問題は起きてから考えましょう」


「それがいいね。パスタ、うまかったよ。ごちそうさん」


「はい、私もご一緒できてうれしかったです」


 そう言って椅子から立ち上がった俺たち。


 その後トワーヌさんにお金を払ってもらって、レストランをあとにした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 白亜の彫刻、美しい絵画、光を受けて煌めく金銀財宝。

 ビョルケス女帝、ミシェルの一室にて、二人の男女が会話を交わしていた。


 その正体は、帝国近衛団団長ベルティエ。

 そして現ビョルケス女帝、ミシェルその人である。


「して、有能な人材は見つかったかの?」


「えぇ、部下が見つけてきましたよ」


 ミシェルの疑問に一切怖気ず答えたベルティエ。

 彼らの付き合いは非常に長く、もはや親友と呼んでも差し支えないほどであった。


「ネイ、という名だそうで」


「一人だけか?」


「いいえ、何人か」


「・・・実力は信用できるのかの?」


「出来ます。火炎鳥の討伐に成功しているようです」


「であれば異論はない。至急呼んできてくれ」


「分かりました。部下に伝えておきます」


「うむ」


 ベルティエが立ち上がり部屋から出ていく。

 

 それを見届けたミシェル、天下一のその美貌に、黒い影が射し込んでいく。


「さてさて、何を企んどるのかはわからんが、全て無駄なことと悟るがいいッ、ジョミニ!!」


 ミシェルが一人そう叫ぶ。


 幾千年、帝国を守り続けてきた生ける伝説、ミシェル。

 彼女は今、新たなる危機に直面していたのだ。

次の投稿は十月六日だと思われます。

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