vs青い炎の鳥
「おい、助けに来たぞ!!」
三人の兵士たちにそう叫ぶ。
初め、兵士のリーダー格は俺たちの助けを手で制止しようとしていたが、すぐに自分たちの不利を悟り、こう言った。
「助かるよ。俺たちがこの二匹を引き受ける。だから君たちは・・・」
「無理をするな。こっちで二匹引き受けよう」
兵士たちが言い終わるのを遮って、ラスがそう宣言した。
というのも、現在戦闘中である兵士たちは、一番前に立っている人を除き、生きているのが不思議なほどボロボロだった。
戦闘の継続が不可能なのは、一目見ただけでわかる。
そしてその言葉を聞いた兵士。
少しばかりの逡巡は見せたが、その意見をすぐに飲み込んだ。
「すみません。よろしくお願いします」
ラスが頷く。
まずは魔物の気を逸らさなくてはならない。
ラスは三匹の魔物のうち、一匹に向けて、鋼鉄の糸を放出した。
「チッ、拘束は無理ですか」
陽動には成功したラス。
本来ならそのまま拘束しようと考えていたようだが、その目論見はうまくいかなかった。
拘束しきる前に、魔物の纏う青い炎によって、鋼鉄の糸が溶かされてしまったのだ。
「ネイ殿、タイタス、一匹お任せしますね」
「「任せろっ!!」」
ラスが再び糸を放出し、魔物を一匹俺たちのほうに引き付けた。
その後ラスは、残った二匹を始末しに、兵士のほうへ走り出した。
「俺が引き付ける」
「分かった」
青い炎の鳥は、俺たちの方をじっと睨みつけている。
俺は足元に落ちてある石を拾い、その魔物のほうに投げつけた。
ただし身体強化マシマシの全力投球で。
まるで疾風のような音と速度で、魔物に迫る石。
だがその魔物は、俺の動きを観察し、対応してのけた。
纏う炎が揺らぎ始める。
そしてその小さな口から、巨大な青い炎が放たれた。
その炎は俺が投げた石を溶かしながら、凄まじい速度で俺に接近する。
「あぶねぇっ!!」
間一髪の回避。
俺に当たり損ねて岩肌にぶつかった炎は、凄まじい熱と爆音をまき散らしながら大爆発を引き起こした。
爆発地点は赤熱し、マグマ状に溶け出している。
「おらよッ!!」
だがしかし、当たらなければどうということはない。
魔物の認識外にいたタイタスが、ハルバードによる斬撃を振るった。
「なっ!?」
そしてその一撃は、確かに魔物の頭部を切り裂いていたはずである。
しかしその魔物は対して気にした素振りもなく、その翼をパタパタとははためかしている。
『私なら問題ありません。とどめを!!』
あまりの事態に気が動転していたが、ブルーさんがそんなことを言ってきた。
とやかく聞き返すことはせず、その言葉を信じた俺。
魔物の頭部に聖剣を振るった。
「グギャアアアアア!!」
魔物が悲痛な叫び声をあげる。
そしてそのまま体に纏っていた炎が消えうせ、チリとなって消えていった。
『あの魔物は一種の精霊のようなものなのでしょう。ですのでタイタスでは始末できなかったのかと』
なるほどね。
斬れないものはあんまりない聖剣じゃないと、アレを仕留めることは出来なかったと。
それじゃあラスたちは不味いんじゃないか、そう思っていたがそれは杞憂だった。
「ふむ、片付きましたね」
そこにあったのはバカでかい氷の柱。
どうも忍術は通用したらしい。
青い炎の鳥の体を、巨大な氷で包み込むことによって始末したそうだ。
「あの、今回はどうもありがとうございました」
あまりの離れ業に見惚れていたら、そんな風に声が掛けられた。
その声の主は、三人の中で唯一戦えた兵士だった。
今は兜を外しており、そのハンサムな顔を外気にさらしている。
「気にしないでいいですよ。困ったらお互い様です」
「いえ、ぜひお礼をさせてください」
「お礼って言われても、ねぇ。俺たちはこれからビョルケスに行かないと・・・」
「実は我々、そのビョルケスの兵士なのです。お時間は取らせませんので、どうかッ!!」
「お、おう、分かった。じゃあいいよ」
あまりの力強さに気圧されてしまった。
まぁどうせ数日は滞在する予定だったし、問題ないだろう。
そう思ってそんな返事を返したのだった。
次の投稿はおそらく九月三十日です。
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