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とある勇者の冒険譚  作者: azl
第五章 雪原地帯での謀略
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不死者との闘い9

中々思うようにいかないので、次回はネイとファリグのパートを挟んで息抜きします。

ーBMOOOOOOOOO!!


 再び不死牛(アンデット・カウ)の咆哮が、森林中に響き渡った。

 その不死牛の表皮からは、黄緑色のガスが噴き出しており、触れた植物を次々と不死者に変えていく。


「あのガス、底が知れません。無尽蔵に湧き出ると考えるべきでしょう」


 それを見たラス。今まで見てきたものを統括し、そう結論を出した。


 仮にその説が正解だった場合、本体である不死牛を倒さない限りは、不死者(アンデット)たちは無限に生成されていく。

 そうなってしまえばラスたちの敗北はほぼ必須、ゆえに不死牛討伐の優先が最も適当だと考えられた。


「タイタス、アルバ。ここは不死牛の討伐を急ぎましょう」


「それがよさそうだな。ありゃきりがねぇよ」


 ゆっくりと立ち上がる不死者、この近辺の植物はほとんど枯れ失せ、はげ山のようになっている。


 まさしく蘇った厄災、その厄災の正面に立つのはタイタスとアルバの二人。

 しかしこの場にはもう一人、ラスがいた。


 つい先ほど不死牛を相手取ろうとしていたラス。しかし今の彼は不死牛を相手取ることはせず、不死者の進行を妨害するため、この場を離れようとしていた。


「つい先ほどの意見、少し改めます。どうもあのガス、作り出した不死者にも同じ成分を持たせているらしく、不死者を放置するのもいささか問題があるようです」


 慎重なラスだから気が付いた。

 周囲を警戒するために張っていた糸の反応が、すっかりなくなってしまっていたのだ。


 糸が自然に消滅することはあり得ない。

 そう簡単にほつれることはないのだ。


 切断されたか、あるいは支点が壊れたか。

 そしてラスは周囲を再び見渡した結果、後者なのだと判断した。


「どういうことだ?」


「不死者に触れた植物もまた、不死者になってしまうということです」


 つい先ほどよりも周囲の木々が減っていたのだ。

 その減少速度はかなり遅いものの、放置できる事態ではない。


「おいおい、そりゃ不味いんじゃ・・・」


「ですので僕はそれの対処に向かいます。この中で一番早いのは僕です、さっさと倒して戻ってきますよ」


 あのまま放置しておけば、カメテ集落は間違いなく陥没する。

 集落の戦力では対応できないだろう。


 それはラスも避けたいところであった。

 自分みたいな人間を増やすのは、もううんざりなのだ。


「分かった。よろしく頼む」


「えぇ、すぐに戻ってきます」


 そう言って走り出したラス。

 それを見送るタイタス、その後不死牛のほうに向きなおり武器を構える。


「でかすぎて効くかはわかんねーけどよぉ、一発かましてやりゃあッ!!」


 不死牛の体は非常に大きい。

 一般的な牛の二倍はあるだろう。


 ゆえにその威圧感は半端なものではないが、タイタスは臆さず攻撃を振るう。

 その攻撃座標は不死牛の右前足、力任せに振るわれた一撃はまさしく豪傑の力技。


 刃がどんどんめり込んでいく。

 不死牛の肉をえぐり取りながら、深々と突き刺さった刃を振り払った。


ーBMOOOOOOOOO!!


「やべッ、離れろ!!」


 不死牛の体に走った痛み。

 そしてその瞬間、不死牛は今この場にいた有象無象を、初めて敵と認識した。


 両前足をもたげ、大地に叩き付ける。

 その一撃だけで大地は揺れ、雪が上空に舞い上がる。


「クソッ、厄介だな」


 舞い上がった雪が降り注ぐ。

 まさしく天然の煙幕、視界は真っ白に染まってしまっていた。


「だったら僕に任せてください」


 だがしかし、タイタスには通用してもアルバには通用しない。


 アルバは舌を噛みながら、自分の嗅覚をもって不死牛の位置を察知する。

 そしてその方向目掛けて大きく跳躍した。


 アルバの体が降り注ぐ雪の層を突き破った。

 そして晴れ行く彼の視界。その先にはタイタスの方を睨む不死牛の姿があった。


「させるか!!」


 それを認識したアルバ。

 吹っ飛んだ勢いそのままに、不死牛の体に着地する。


 そして、


「倒れろッ!!」


 渾身の右ストレートを不死牛の顔面に放った。


 めり込む右腕、凄まじい痛みがアルバにも走ったが、歯を食いしばり、再び拳を振るう。


「アルバ、降りろッ!!」


 そして件の不死牛も平気ではいられなかった。

 ふらふらと揺れ始めた不死牛の体。

 それを察知したタイタスがそう叫ぶ。


 そしてそれに従ったアルバ、急いで不死牛の体から飛び降りた。


 その刹那、ドンッ!!という派手な音を立てて不死牛が地面に倒れ伏す。


「チャンスだッ!!」


 そう叫び駆けだすタイタス。

 それに付き添うようにアルバも走り出す。


 そして、


「「食らえッ!!」」


 振るわれた二つの一撃。


 空を切るような音を立てて振るわれたそれは、不死牛の顔面を切り裂き、穿っていた。


 だがそれでも不死牛が死ぬことはなかった。

 目をかっと開き、二人の方を睨む。


 そして、


「おいおいおいおい!!」


 口を開け、大地を抉り取りながら、タイタスのほうへ走り出す。

 慌てて走り出すタイタス、しかし走る速度は不死牛のほうが速く、状況は絶望的だった。


 このままではタイタスが死んでしまう、そう理解したアルバはとある行動に出た。


 不死牛のほうに駆け出し、出来上がっていた顔面の傷跡に、全力の拳を振るったのだ。


「こっちだッ!!」


 パンッ!!という音を立ててめり込む拳。

 これで意識は自分のほうに向いたことだろう。


 そう考え拳を引き抜こうとするアルバ。

 だがめり込んだ先にあったのは不死牛の顎だった。


 不死牛は上下の歯によってアルバの腕をがっちりと挟んでおり、思うように身動きが取れない。


「馬鹿ッ!!逃げろッ!!」


 タイタスが焦ったような声で叫ぶ。

 だがそれだけではこの場を覆すことが出来なかった。


 不死牛は顔を持ち上げて、頬を大地に叩き付ける。


 その衝撃でアルバの体が地に落ちた。


 しかし今の彼では逃げることは出来ない。

 不死牛は大地を抉り取りながら、アルバの体を飲み込んだ。

会話パートのほうがスラスラかけます。

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