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とある勇者の冒険譚  作者: azl
第五章 雪原地帯での謀略
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不死者との闘い7

「助けに来たぞッ!!」


 タイタスとアルバが、ラスの元にたどり着く。

 その場所は鼻をつんざくような腐臭と、物が燃えたようなにおいが混ざり合い、深い極まりない空間となっていた。


 特にアルバはその影響を強く受けている。

 獣人は人間の倍以上に嗅覚が優れているのだ。

 だから彼は鼻を指で押さえて、なるべく吸い込まないようにしていた。


 しかしそれでも涙目になるほどの激臭であった。


「おや、来て下さったのですか」


「おう、来てやったぞ」


「・・・(コクコク)」


「ふむ、戦力が増えるのはいいことだ。ぜひ協力してください」


「おう、任せろ!!」


 そう言って親指を立てたタイタス。

 しかし話し相手であったラスの興味は、もうすでに別の所に移っていた。


「で、アレが長の言っていた不死牛(アンデット・カウ)か。でけぇな」


 その彼の視線の先にあったのは、森の中を我が物顔で闊歩する巨大な牛。

 しかしその皮膚は腐り落ちており、皮膚の色も紫色に変色していた。


「おそらくその通りです。一応動きを止めてはいるんですがね」


 そう言われて、目を凝らしてみるタイタス。

 よく見てみれば、確かに細い糸のようなものが、不死牛の体中にまとわりついている。


「やっぱあの巨体を止めるのは難しいわな」


「はい。一応やれるだけのことはやってるんですがね」


「まぁ、俺達であれを始末すればいいだろ。ところでこの辺は木が少ないんだな、なんでだ?」


「あぁ、それは・・・」


 ラスが言い終わる前に、不死牛が動き出した。

 不死牛の皮膚、その表面から黄緑色のガスを放出し始めたのだ。


「タイタス、アルバ、今すぐにその場から離れてください」


 ラスの忠告に従って、その場を離れる二人。

 そして彼らの立っていたその場所に、ゆっくりと黄緑色のガスが漂ってくる。


「・・・なるほどな。これが原因か」


 そのガスが樹木に触れ、腐らせ、どんどんと不死者(アンデット)を製造していく。

 そしてその不死者の総数は、軍隊とでも称すべき数であった。そう簡単に対処は出来ない。


「火遁:炎蛇」


 しかしラスならば出来る。

 彼の放った忍術、炎蛇。放たれた炎はまるで蛇が如く不死者を伝い、次々と灰に変えていった。


「お前、すげぇな・・・」


「それほどでもありません。それよりも不死牛の動きに注意してください、何か動きがありますよ」


 タイタスの驚嘆に、あっさりとした返答を送ったラス。

 そのラスの視線は、再び不死牛の方、もっと詳しく言うとその喉元に向けられている。


 つい先ほどまでは特別特筆するようなことはなかったその喉元。

 だが今はその喉元が蠢いており、何らかの攻撃を仕掛けてくる可能性があった。


「ッ!?何か来る!!」


 そしてその考えは正解だった。

 ラスが気付くより前に、アルバが警告を飛ばす。


 そしてその瞬間、不死牛の喉の動きがますます激しくなる。

 それはまるで何かが逆流するような動き。


「来ますッ!!」


 アルバが再び警告を飛ばす。

 そしてその瞬間、不死牛の口からブレスが放たれる。


 それを全力で回避する三人。

 雪を穿つ結果となったその吐息の正体は、気体ではなく液体だった。


 不死牛の胃液が、三人に向けて放たれたのである。

 その胃液の表面はブクブクと泡立ち、触れる草木を次々と枯らしていく。


「チッ!!あんまり見たくねーな」


 だが吐き出されたのは胃液だけではなかった。

 不死牛の胃の中にあった未消化の死骸たちも、そのタイミングで吐き出されている。


 当然消化途中である。見るに堪えないものばかりであった。


「え?動いてませんか、あれ?」


 だがしかし、不死牛とは死と再生の紡ぎ手である。

 それこそ、体からあふれ出るガスで不死者を作り出すような存在、胃液が特殊な成分を含んでいても、おかしくはない。


 吐き出された死骸たちが、ぴくぴくと動き出す。

 彼らは不死牛の胃液によって、不死者として蘇ったのである。

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