不死者との闘い5
あと4話ではないかもしれません。
「ったく、まさかこんな大物が控えてるとはな」
頭から血を流して、そう愚痴ったタイタス。
その目線の先にあるのは、合成獣とでもいうべきおぞましい生物だった。
獅子の頭、馬の胴、虎の足、そして背中から生える四本の獣人の腕。
ファリグが作り上げた、不死者の中の最高傑作であった。
大地を虎の足で駆け、生き物を獅子の牙で食らい、獣人の腕で攻撃を受け止める。
まさしく攻守一体の究極生物、タイタスはともかく、カメテの戦士たちは蹂躙される一方であった。
とはいえその合成獣の興味はタイタスに向いており、カメテの戦士の中に死者がいないのは僥倖であった。
しかしこれ以上の戦闘継続は不可能。ラズリが一度集落へ戻っていた、そのわずかな時間だけで、勇ましき戦士たちの全員が、戦闘不能に陥ったのだった。
「お前ら、ここは俺に任せて集落に帰れ」
「ですが・・・」
「安心しろ。ラスもいるしなんとかなるさ」
そう言って安心させようとしているが、実際はそれほど楽観視していなかった。
ラスは非常に素早い。その事実がこの場に助けが来ないということを肯定していた。
恐らくラスはすでに、あの咆哮の主を探り当てているだろう。
にも拘らず救助に帰ってこない。であるならばあの咆哮の正体は、長たちが危険視していた不死牛だと考えるのが妥当だった。
恐らくラスの救援は望めない。
しかし傷ついた彼らを集落に戻らせるためには、嘘を付くしかなかったのである。
「・・・分かりました。ご武運を」
「あぁ」
「お前ら、この場はタイタスさんに任せて撤収するぞ!!」
「「「応ッ!!」」」
そして集落の戦士たちも、そのことに薄々感づいていた。
だがしかし、彼らはその要求を飲み込んだ。
その理由は単純、今この場に自分たちが残ったところで、足手まといにしかならないから。
もはや戦うこともままならず、タイタスの足を引っ張ることしかできないのである。
足を引っ張るぐらいなら、彼の意に沿って撤退した方が良い。そう考えたのだ。
「さてと、俺はまだまだ死ぬ気はねぇぞ。もっと楽しませてくれるんだろ?」
ーGAOOOOOOOOOOOOOOOO!!
森林に獣の咆哮が響き渡った。
大地を駆け、虎の爪がタイタスに振るわれた。
それを済んでのところで回避したタイタス。
そして返しの刃を獅子の頭に突き立てる。
「食らいやがれ!!牙突!!」
放ったのは槍術:牙突。
凄まじく速い一突き、ありとあらゆるものを貫くそれは、合成獣の喉元に風穴を開けた。
「クソッ、死なねぇのか」
だがしかし、合成獣が斃れることはなかった。
不死者とは生物ではない。それこそ頭を潰すか胴を両断しない限りは、活動を停止しないのだ。
「だったらこれはどうだ」
突撃してきた、合成獣。
再び振り下ろされた爪を回避し、樹木を壁にして跳躍したタイタス。
そのまま横方向に回転し、再び”技”を放つ。
「両断してやりゃあッ!!大車輪!!」
槍術:大車輪。横方向の回転を加速させ、凄まじいまでの破壊力を生み出す槍術中位の技である。
まさに暴力、そんな技が合成獣を両断するべく振るわれようとしていた。
だが、
「ッ!!やべッ!!」
その一撃は、背に生えていた三本の腕によって受け止められてしまう。
では残りの一本は?
「チッ!!まずいな」
その残りの一本は、中指を突き立て、長く強靭な爪をタイタスの体に突き立てようとしていた。
タイタスは必死にもがくが、腕をがっしりと掴まれて、身動きが取れない。
もはやタイタスに逆転の術は残されていなかった。
ーGAOOOOOOOOOOOOOO!!
合成獣が、勝ち鬨のような咆哮を上げた。
そして、その鋭利な爪をタイタスの体に突き立てる。
否、突き立てようとした。
そこにタイタスの体がなかったのだ。
仕留めそこなった。合成獣がそれに気づいたときにはもう遅かった。
いまその獣の目の前に、殺すべき標的、タイタスがいたのだから。
「っと、大丈夫ですか?」
「俺は大丈夫だが、お前がどうしてここにいるんだ?」
そのタイタスの目線は合成獣ではなく、いつの間にかやってきていた獣人のほうに向いていた。
「やはり仇は討たないと。仲間たちに見せる顔がなくなってしまいます」
「なるほどな。じゃあ、共同戦線と行こうか」
その少年、アルバがうなずく。
その目に不安や怯えは一切ない、ただただ真っすぐに合成獣のほうを見つめていた。
あとリトマの空Nって面白いですね。
誰か開拓してください。