知らない天井
「んっ、ん~?」
何かに包まれたような感覚、多分毛布かな?
そんな感覚の中で、重い瞼を気合でねじ開ける。
「知らない天井だぁ~」
何処ここ?
本当に何処?何でこんなところにいるんだ?
落ち着け落ち着け、まずは記憶をたどろう。
確か俺たちは、突如としてディザードに襲来した黒龍を追い払うために交戦した。
で、確か俺が奴の逆鱗にブルーさんを突き刺した後、ラスに引き上げられた。
で、こっからどうなったんだっけ?
ヤバい、覚えていない。
黒龍は?
あいつらはどうなった?
頭に若干の痛みを感じながら、辺りを見渡してみる。
「おっ、ブルーはいるみたいだな」
俺の寝ているベッドに立てかけるように、ブルーさんが置かれていた。
それを見て焦る気持ちも少しだけ落ち着いた。
なので取り敢えずいつものように握ってみた。
『ネイッ!!ネイッ、無事だったんですね!!!!!!!!』
うるせぇッ!!
鼓膜が破れるだろうが!!
あ、鼓膜じゃない?俺の頭に直接話しかけてるから?
猶更悪いよ!!
『そんな騒がなくても聞こえるっての!!少し静かにしろ!!』
『ッ!!ごめんなさい、心配だったもので・・・』
あら、思ってた反応と違う。
本当に申し訳なさそうな口調での返事だった。なんだよ、調子が狂うじゃないか。
どうやら俺のことを本気で心配していたみたい、だったら悪いことしてしまったな。
『あぁいや、悪ぃ、俺も言い過ぎたよ』
まさか狡猾の代名詞みたいなブルーさんが、こんな反応をしてくるとは思わなかった。
てっきり、黒龍相手に倒れてしまうなど情けない!!なんて言われるのかと思ってた。
『いえ、元気ならばそれでいいのです』
だけどそんな感じだったのも一瞬で、今はいつもの感じに戻ってしまっている。
まぁそれはいい。問題はタイタスやリューク、ラスにセテスさん、一緒に戦ってくれた人達の安否だ。
姿が見当たらないけど、大丈夫なのかな?
『なぁブルー、タイタスたちは無事なのか?』
『ご安心を、全員無事です』
『そっか、なら良かった』
なんでも交代で俺の看病をしてくれたらしい。
でも今はちょうど誰もいない時間帯なのだと。けどまぁあと五分もすれば戻ってくるそう。
取り敢えず全員無事なことが分かったので安心できた。
でも気になることは残っていた。ここは何処なのか、一体どれくらい眠っていたのか?
『なぁ、ここって何処なんだ?っていうか俺ってどのくらい寝てたの?』
『ここですか?ここはセテスの屋敷ですね。約三日ほど滞在しております』
『三日だと!?その間ずっと俺は寝てたのか?』
『その通りですが?』
『おいおい、なんてことだ・・・』
『生命力を全部使い切ったのですから当たり前です!!むしろ生きてること自体が奇跡なんですからね!!』
お、おう。そうなのか。
話してる感じ、どうもブルーさんは若干怒っていらっしゃる様子。
なので「悪かったよ」と謝っておいた。
『分かればよいのです。それよりも、ですよ』
『なんだよ?』
『黒龍との戦いで、沢山の”経験”を積むことが出来ました。その結果新しい”技能”を獲得したようですよ』
おぉ、それは素晴らしいな。
黒龍自体は仕損じたけど、死闘というものは経験できた。
それこそ”死を覚悟するような激しい戦い”ってやつを。
『だけどアビリティボードがないと確認できないのか・・・』
『その通りですね。一応”世界の声”は聞こえてきたので間違いはないのですが・・・』
『安心しろ、疑ってはいねぇよ』
その後、別に話すこともなかったので、俺が眠っていた間に起きていたことをブルーさんが話してくれた。
タイタスが花瓶を割ったり、タイタスが遠慮も知らずセテスさん家の料理を食い尽くしたり、タイタスがーーー。
そんな他愛のない話をしていたら、廊下の方から足跡が聞こえてきた。
「う~す、邪魔するぜぇ~!!」
「よぉ、タイタス。悪ぃな、看病してくれてたんだよな?」
「お、お~!!相棒ッ!!目が覚めたんだな!!」
入ってきたのは筋骨隆々の大男、タイタスである。
タイタスは俺を見るや否や、俺のそばに駆け寄って抱き着いてきた。
暑苦しいのでやめていただきたい。
「はいはい、お前の相棒だよ。だからさ、どいてくれねぇか?暑苦しいよ」
「お、悪かったな。ついつい、な」
そう言ってタイタスはにやりと笑う。
「まぁいいさ。それよりもちょっと頼みたいことがあるんだが」
「なんだ、俺にできる事ならやってやってもいいぜ?」
「助かる。ちょっとセテスさんから、アビリティボードを借りてきてくれないか?」
「そんなことならお安い御用さ、任せろ!!すぐに戻ってくるぜ!!」
そういうなりタイタスは扉をバタンッ!!と勢い着けて閉じた後、クソやかましい足音を立てながら、階段を下りて行った。
「陽気な奴だよな、本当に」
今はちょうど夕暮れ、出発は明日になることだろう。
『なぁブルー?』
『何でしょうか?』
不思議そうにブルーが訪ねてきた。
どうしても言いたいことがあったのだ。
出会った当初はこいつのことが嫌いだった。わがままだし、態度がでかいし、なんか怖いし。
だけど、
『いつもアリガト、これからもよろしくな?』
こいつがいたからタイタスに会えた、ラスにも会えた。
こいつがいるから俺は今ここにいるのだ。
苦しいこともあったけど、楽しいこともあった。
それはこれからも変わらないんだろうな。
『ッ!!もう、急に何ですか!?』
照れたような声色で、そんな返事が返ってくる。
『照れるなよな』
『フンッ、私の役目は魔王を倒すこと。であるならばあなたに協力するのは当然のこと。ですが・・・』
『ですが?』
『私もあなたに会えたこと、少しは喜ばしく思ってますよ?』
『・・・そうかよ』
自分から言い出しといて恥ずかしくなってきた。
はたから見れば勝手に顔を赤くしている変人・・・、病み上がりだから病人かな?
まぁいいや。
『とにかく、これからもしっかり手助けしてくれよな、相棒?』
『もちろんです。あなたも私を十全に扱えるよう、努力して下さいね』
任せろ。心の中でそう返事をした。
そんなやり取りの後、静かだった廊下がまた騒がしくなってくる。
ついさっきよりも音の数が多いようだ、ドンドンとやかましい。
だけど、そんな音のおかげで、初めて俺は心の底から勝利を喜べた気がした。
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おまけ:アビリティボード
名前 ネイ
職業 剣士(勇者の種)
称号 勇者の種を宿す者
技能 基本技能...剣術 下級Lv10(MaxLv10)
→燕返し、薙ぎ払い、袈裟斬り
剣術 中級Lv15(+13)(MaxLv20)
→円弧斬、岩穿突、五月雨突き
対魔物術 下級Lv10(Max)
→魔物特攻属性付与(極小)、魔物特攻属性付与(小)
中級Lv20(+17) (MaxLv20)
→魔物特攻属性付与(中)、魔物特攻属性付与(大)
上級Lv2 (NEW) (MaxLv30)
→魔物特性特攻付与(極大)
職業技能 主技能...流動の剣型Lv43(+22)(MaxLv100)
→脚力増加(極小)、脚力増加(小)、見躱しのカン、脚力増加(中)、脚力増加(大)
副技能...流動の剣技Lv30(+9)(MaxLv100)
→霞斬り、カウンター、滑流斬、疾風斬、迅雷斬
聖剣技Lv55(+5) (MaxLvなし)
→念話、視覚共有、記憶探査、地形把握、身体強化魔法、精神操作、以心伝心、解析・鑑定、破邪の光、黒の障壁
挫けぬ心(MaxLvなし)
→窮地に活