死闘の幕開け
短めです
「敵襲!!敵襲!!」
そんな声が聞こえてきたのは、次の日の早朝だった。
その叫び声で飛び起きた俺とタイタスとリュークさん、耳がちぎれそうなほどの警報音の中、急いで宿から飛び出した。
「なんだありゃ?」
タイタスが上空を見てそう言った。
「何がどうなってんだ?」
思わず声を漏らす。
だがそれも仕方ないことである、何故ならそこには空を覆いつくさんばかりの巨大な生き物、黒い龍がいるのだから。
まるで王者の如き風貌、だがその瞳はまるで俺だけを映しているように見えるが・・・、勘違いだろうか?
『ッ!!あれはもしや・・・』
ブルーさんがなにか知っている様子、聞き出そうとしたのだけど、遠くから俺を呼ぶ声が近づいてくる。
「おーい、ネイさーん!!」
「あっ、セテスさん!!」
向こうから走ってきたのは昨日お世話になったセテスさん、だけど昨日とは打って変わって金属独特の光沢を放つ重圧な鎧を身をまとっていた。
「こっちへ、町の外へ避難してください」
「分かりました」
色々聞きたいことはあるが、今はそんなことをしている場合ではない。
黙ってセテスさんについていく。
しかし、
「おい、あいつ俺たちのことを追ってきてねぇか?」
タイタスがそんなことを言ってきた。
気になったので見上げてみると、上空の黒龍はまるで俺たちを追いかけるかのように移動していた。
「ならばいったん逆方向に逃げますぞ。こっち側にはすでに一般人が避難しておりますゆえ」
そして俺たちは再び踵を返す、・・・返したのだが。
「おい、また追いかけてきてるぞ!?」
これはもう俺たちを追いかけているとみて間違いないのではないだろうか。
目的は分からないし理由もわからないが、穏便に事を済ませるのは難しそうだ。
「・・・仕方ありませぬ。ここは一度四方向に分かれて逃げましょう」
なるほど、誰に標的が向いているのかをはっきりさせるってわけか。
「標的だった場合どうしましょう?」
「とりあえず町の外までおびき出します。本来であれば首都防衛兵器で追い払うのですが、効果が見られませんでしたからな」
バリスタ弾を撃ち込んでみたところ、ものの見事に弾き飛ばされたらしい。
魔法による効果なのか、はたまたあの鱗が凄まじく固いのかは不明だそうだ。
「分かりました。それじゃあみんな、散開!!」
・
・
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案の定あの黒龍の目的は俺だったらしい。
というわけで俺はこの都市の出口まで急いで逃げている。
取り敢えずはこの都市が小さく見えるまで走ることにしよう。
その間にブルーさんの説明を聞くことにした。
曰く、ファウスノーの冒険者ギルドが魔物たちのランクを定義したそうな。
そのランクというのはFから特S級まであるらしい。
そしてFからE、DからCというように段階が上がるにつれて魔物の強さは上がっていく。
だがしかしこの魔物ランク表は事実上はSランクまでしか機能していない。
何故ならばこの特S急に分類される生物はすべて伝説上の生物だからだ。
伝説というものは肯定することも否定することも難しい。そういうわけで伝説というものを否定する組織も肯定する組織もまちまちなのだけど、冒険者ギルドは各地に伝わる伝承をあるものとして扱ったのだ。
この特S級に分類される生物は、海王龍や不死牛、不死鳥など多岐にわたる。
そんななかで、ビータの伝承に語られるのが黒龍である。
今回の要件をまとめれば伝説上の存在が実在していて、そいつが今俺を殺そうとしてるってわけだ。
俺が一体何をしたっていうのだろう。そんなことを考えながら、黒龍との戦いに挑むのだった。
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勝てる気がしない。
対峙してみて最初に出た感想がこれだった。
巨大な体躯に帝王の如き眼光、生物としての格の違いを見せつけられた気分だ。
『戦う前から弱気にならないでください。勝たないと死ぬんですからね?』
そうはいってもなぁ。
しかしどうして俺はこんなのと戦わなければいけないのだ?
『情報がないので何とも』
ブルーさんでもわからないのか。
だがここまで来たら腹をくくるしかない、今まで通りに逃げ中心に立ち回ろう。
「ネイさん、助けに来ましたぞ!!」
幸いにも頼もしい仲間たちも来てくれた。
もう弱音は吐くまいよ。
もう一度活を入れ、黒龍に向き直る。
今度から戦闘シーンは分割して投稿することにします。
次回は少し遅れるかもしれません。