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とある勇者の冒険譚  作者: azl
第四章 神聖王国での激闘
25/69

研究室にて

今回はかなり短いです

 始焉、黒き神。無から生まれし心無き神。草木を息吹かせ、海を作り、空で覆った。

 黒き神は始焉の神、始まりの支配者、開闢の祖。

 全ての祖、黒き神。


 光と闇、生と死、始まりと終わり。

 対無きものは存在しえない。

 故に黒き神は終焉の使者、終焉の神。

 全ての終着点、黒き神。

全にして個、輪廻の紡ぎ手、秩序の守護者。


 終焉、白き神。滅びから生まれし自我持つ神。黒の対、黒き神の対。

 終わりの支配者にして、終わりを齎すもの。


 白き神、黒き神の望まぬもの。

 黒き神、白き神を討ち滅ぼさんとす。

 黒き神は全にして個、秩序の守護者。

 心なき輪廻こそ秩序。秩序なき滅びは不完全。


 黒き神、幾多の眷属を生み出し白き神を滅ぼさん。

 白き神、幾多の眷属を生み出し己が身を守らん。


 戦禍の果てに、秩序は壊れる。

 草木は枯れ果てたまま息吹くことなく、死にゆく眷属の魂は徒に消え失せるのみ。


 白き神は嘆いた、秩序が壊れ逝くことを。

 黒き神は何も感じない、秩序が壊れ逝くことに。


 知恵無き力はただ滅びを齎すのみ。

 知恵無き力は秩序を壊しつくす。

 始焉の神はただ滅びを齎すのみ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「っていうのがこの石板の内容ですね」


 言ってて恥ずかしくなってきたが、真面目に訳したのだ、間違いないだろう。


「ふむ、そのようなことが・・・」


「もし本当ならば大発見ですぞ」


 研究室が沸き立っている。

 まぁ数十年来の謎の解明に一歩近づけたのだと考えれば妥当な反応なのだろう。

 強いて言えば俺が訳した文章への感想が欲しいものだが。


「あのぉネイさん。少し協力して頂きたいことが」


そんな中、ある研究員さんが俺に話しかけてくる。その手には黒い布が握られていた。


「どうかしました?」


「えっとですね、先ほどの暗号ですか?それっぽいのがこの布にも書かれてて・・・」


「む、そんな布ありましたかな?」


「いえ、この布はついさっき発掘されたものです」


 セテスさんの疑問に答えたのは筋骨隆々の研究員、発掘担当らしい。

 なんでも白骨化した人骨の首元に落ちていたのだと。そんなものを拾って罰が当たらないか不安になっていたが、「いやぁ、考えたこともありませんでしたね」とか言ってわっはっは、と笑っていた。


「ふむ、じゃあ吾輩に見せたかった物はこれですかな?」


「はい。例の壁画と同じような図形が書かれてたので、何かの手掛かりになるかなぁって思ってたんですけど」


 「手がかり以上の収穫がありましたな」とセテスさんが嬉しそうに笑っている。

 役に立てて良かったと思う反面、間違ってたらどうしようって気もしなくはない。


「で、ネイさん。ぜひともこの暗号も解読願いたいのですが」


「あっ、はい」


 そう言って布を受け取る。

 えっと、なになに・・・、


「汝、我が主に相応しきか。汝、我が試練に耐えうるか。我が主はただ一人、選定を開始する」


 え?ナニコレ・・・。

 その逡巡の刹那、異変が起きた。


 受け取った黒い布がふよふよとひとりでに動き出す。


『ッ!!ネイッ!!』


 慌てた様子でブルーさんが警告を飛ばす。

 だが気付いたころにはもう遅かった。


「ッ!!ふざけるなよ!!」


 黒い布が首に強く巻きついた。だがそれではまだ終われない。

 締め付ける力はどんどんと強くなる。


「くっ、苦しッ!!」


 研究員たちも焦ったような表情を浮かべているが、いつの間にか張られていた黒い結界で阻まれ近寄ることが出来ない。


 その間俺の首は絞めつけられ続けている。


 どのくらい続いただろうか?喉元から血があふれ、足元には血痕がいくつか。しかし傷ができるたびに修復されているので、未だ存命である。俺は尋常ではない生命力のおかげで何とか持ちこたえているが、常人ならばとっくに死んでいるだろう。


 そんなことを考えていたのだが、突如として頭の中に声が響く。


『面白い、次が最後だ』


 ブルーさんではない。その声は厳格な雰囲気を纏っていた。

 次で最後、つまりまた何か始まるってことか。覚悟を入れ直したその瞬間。


「くっ、こいつ!!生命力を!!」


 凄まじい勢いで生命力を吸引し始めた。

 ただでさえ枯渇しているというのにこれは不味い。


「ネイさん、助けに来ましたぞ!!」


 どうやったのかは知らないがセテスさんが結界をぶち破ったみたいだ。

 差し伸べた点が俺の首を触れんとした、その瞬間。


『よろしい、合格だ。我が意志、我が力、汝に全て捧げよう』


<力の譲渡を確認、受け取りの許可を申請・・・許諾されました。基本技能”黒の障壁”を獲得しました>


 厳格な声の後に響いたのは、久々に聞いた世界の声。

 二つの声が再び響き渡った、そして、


 黒い閃光があたりを埋め尽くす。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ・・・今のは何だったんだ?


「ネイさん、ご無事ですか?」


 セテスさんが心配そうに聞いたきた。一応確認してみたが・・・、異常無しかな。

 だいぶ生命力を持っていかれたっぽいが、ブルーさん曰く三割ほど残っているので問題無いとのこと。


「問題ないですね」


「そうですか、一安心しました」


「本当にごめんなさい、まさかこんなことになるなんて」


「いえ、誰もこんな風になるなんて思いつきもしなかったし、仕方ないですよ」


「・・・すみません」


 今回の一軒については責任を追及するつもりもないし、それをするのは間違いだろう。

 一体誰がこんなことを予想できただろうか。


 まぁそんなことよりも、だ。

 久々に聞いた”世界の声”、なんか言ってたけど何って言ってたんだ?


『まとめると新しい技能を取得したという報告です。精査したうえで受け取っておりますのでご安心を』


 お、おう。そうかい。

 っていうか勝手に許可したのかよ、この体は俺のもんなんだが・・・。


『あなたの体は私の物です。逆に私の体もあなたの物ですよ?』


 うーん、解せぬ。


『知ったことではありません。ところで今回獲得した”黒の障壁”についてお聞きになられますか?』


 ひどい扱われようだ。しかし新しい能力ねぇ。

 多分俺では扱いきれないだろうけど、取り敢えずよろしく。


 『そういう事でしたらこの能力は私のほうに取り込んでおきます』、と前置きした後説明をしてくれた。


 っていうかそんなこともできたのか・・・、って今は説明だな。


 聞いた話をまとめると、この黒の障壁っていうのはいわゆる盾の働きをしてくれるらしい。

 物理攻撃と魔法攻撃、この双方に対して高い防御能力を誇る結界を作る。これが”黒の障壁”という技能だそうだ。


 いまいち実感が湧かないが、ブルーさんなら上手く扱ってくれるだろう。

 よろしく頼むぞ?


『お任せください。あなたの身を守り切って見せますから、貴方も頑張ってくださいよ?』


 勿論、やれることは全力でやるつもりだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おや、もうこんな時間ですな」


 その声に釣られて時計を見てみると、もう夕飯の時間だった。

 研究のお手伝いをさせてもらっていたのだが、時間を忘れて没頭していたな。


「セテスさん、今日は本当にありがとうございました」


「ホホホ、それを言うのはむしろこちらの方ですな。ご協力感謝致しますぞ」


「本当ですよ。いったい今日だけでどれほどの進歩があったことか」


「これで古代の研究もググンと進歩するってもんですよ!!」


 いっぱい褒められた。こうも言ってもらえると手伝ったかいがあったってもんだな。


「さてと、それでは僕は失礼させてもらいますね。本日はどうもありがとうございました」


「そういう事でしたら宿まで案内しましょう。同伴の方々もそちらに案内させてもらいましたので」


 気が利くことこの上ないな。

 こうして非常に有意義な一日は幕を閉じた。

 明日からまたキツイ移動をしなきゃいけないわけだけど、しっかり頑張ろう。そう思える充実した一日だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 深い深い森の中で”それ”は目を覚ます。

 遠い遠い遠方ですさまじいまでの”餌”の気配を察知したからだ。


 黒い鱗、巨大な翼、帝王の如き眼光。

 伝説に謳われし存在、黒龍(ゾダグア)


 今静かに、人知れずして激闘の火ぶたは落とされたのだ。

果たして何の説明も前置きもなく、竜を登場させるのは物語としてどうなのでしょうか?

次回は戦闘パート、二話はあると思われます。

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