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とある勇者の冒険譚  作者: azl
第三章 大森林での反乱
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ショーコンドにて

 ショーコンド連邦国家、そこは俺が思っていたよりも荒れ果てていた。

 戦争がつい最近まで続いていた手前、ある程度の予想はしていたもののまさかここまでとは思わなかった。


 しかしあれはてたままではなく、復興の兆しもそこから見受けることもできた。

 あまりの被害に自暴自棄になっている人も確かにいた、だがそれはほんの一部だろう。

 ショーコンドの街は人々の活気にあふれ、壊された建造物も直されつつあったのだ。

 このままいけば平穏に進めば発展は問題なく行われるはずだ。


 さてさて、ラスに連れられショーコンドを訪れた俺たちだったのだが、いきなり族長のもとに通されることになった。

 連邦国家である手前、族長と呼ぶのもおかしな気がするが、


「統治もうまくいっていない今の状況では、まだ国の王を名乗るにふさわしくない。」


 とその族長本人が群集の前で宣言したらしい。


 ただここで驚いたのはそんなことではなく、そんな国のお偉いさんに何の事前通達もなくいきなり会談することになったことだ。

 もっとも会談とはいってもそこまで大それたものではないんだけどね。


 ただ、このラス。相当の大物だった可能性がある。

 国のトップに何の通達もよこさずその居住地に、ずかずかと踏み入っていたその姿にはある種の感動すら覚えたものだった。

 まぁ強いものが上に建てるこの世界では、ラスが上位の人間であるという考えもあながち間違いとは言えないと思う。


 で、今の俺たちはその族長の館で面会待ちをしている。

 椅子は木製で、思ったよりも座り心地が良い。

 待合室の中は、フィロンストの王城のような豪華絢爛さはなく、質素だった。

 だが、フィロンストと同じように芸術品のような美しさを感じることができた。

 美しいものとは、決して豪華なものだけに与えられるものではないということだろう。

 もっとも俺はあまり美術の話には詳しくないのだが、素人目にも分かったってことにしておこう。


「お茶をお持ちしました。」


 おっと、族長さんの所の召使さんがお茶を持ってきてくれたみたいだ。

 紅茶の香りが待合室中に立ち込める。

 初めて嗅いだが、なかなかいい匂いだ。

 いつぞやの保存食とは大違いだな。まぁあれには命を助けてもらってるのでそう悪くは言えないんだけどね。


「ありがとうございます。」


「・・・これは、紅茶か?」


 タイタスが召使さんに尋ねている、そんなもの見たらわかると思うのだが・・・。

 ちなみにタイタス君、その顔と屈強な肉体も相まって質問するその風貌はかなり恐ろしい。

 本人に一切その気はないということは分かっている、だが普段の言葉遣いも相まって怒っているみたいなのだ。


「はい、ビョルケスから取り寄せた特級品の茶葉を使用しております。」


 だがさすがというかなんというべきか、そんなタイタスの風貌にも物おじせずに召使さんは対応して見せた。

 ビョルケスとは、ブルーさん曰く女王が納める要塞都市らしい。

 なんでも休火山に位置し、強力な軍隊を保有しているそうだ。

 後々よることになるそうなので、詳しい話はその時にしよう。


「おぉ、やっぱりな。どうもこの辺のとは違うなぁーって思ってたんだよ。」


 へぇー、この辺の奴とは違っていたらしい。

 いかんせん紅茶というものを初めて飲んだからな。フィロンストの食堂でそれらしき匂いを嗅いだことはあったものの、何が何やらさっぱりだ。

 もっとも紅茶というものの情報自体はそれ以前から少しだけ知っていた、が・・・。


「おまえ、紅茶の”何”が分かったのか?」


 俺の知っている紅茶というものはこんな筋骨隆々の大男が飲むようなものではないのだ。


「ん?まぁな。」


「それは意外だったな。」


「おいおい、どう意味だ?」


「少しは自分で考えろ!!」


「・・・まぁ、お前の言いたいことは分かるぞ。せっかくの機会だ。お前に紅茶の何たるかを教えてやろう。!!」


 かくしてタイタスの紅茶講和が始まったのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 思ったよりもタイタスは紅茶マニアだったらしい。

 なんでも村に来る行商人から、茶葉を買い集めていたそうだ。


 俺の村では井戸からとれる水をろ過してそのまま飲んでいた。

 だから、タイタスの紅茶講和はなかなか楽しい体験ではあった。


 ートントン。


 タイタスの紅茶講和がひと段落したころ、ドアをノックする音がする。


「はい。どうぞ。」


 召使さんは今は退室中、だから俺が代わりに答えた。

 態度がなってなくても起こらないでほしいな。


「失礼します。」


 そう言いながら入ってきたのは、中年の男の人だった。顔だけ見ればな。

 中年とはいっても、年を全く感じさせなかった。タイタスと比較しても見劣りしないほどの体格なのだ。


「・・・ラスの言っていたことは間違っていなかったのですね。」


 そういいながらその男性は椅子に腰かけたt。

 なかなか様になっているな。


「主君の御前で虚言を吐くようなシノビはいませんよ。」


 その男の後ろからラスが付いてきていた。

 ラスの発言から察するにこの男性がこの国の長なのだろう。

 当の族長だが俺のほうを見て驚いていたように見えた、まぁ予想はつくけどな。


「その黒髪、よろしければあなたの出自についてお聞かせ願えませんか?」


 やっぱりな、少し前にラスも俺の髪色を見て驚いていた。

 けどここまでかしこまる必要もないと思うが・・・。


「もちろんかまいませんよ。あとそんなにかしこまらないでください、族長さん。私はこの国のシノビに助けられたの身ですから。」


「そういうわけにはありません。私の名前は、サイガです。ぜひサイガと。」


「・・・族長殿?場をわきまえてくださいね?公の場ではないとはいえ・・・。」


「だったら良いではないか。それに旅のお方は我々の国の住人ではないのですからね。」


「・・・じゃあサイガさんで。ところで俺の生い立ちを聞きたいっておっしゃってましたけど、たいして面白い話はありませんよ。」


 これは本当だ。

 少々俗世離れしたところに住んでいたというのが最近判明した情報ではあるものの、せいぜいその程度だ。


「問題ありません。我々の先祖が黒い髪をしていたという話はご存知でしょう。我らシノビは代々の先祖たちの魂を信仰してきました。しかしながら最近黒髪のシノビは少なくなってきている。ラスのように”先祖返り”が起こったりすれば黒髪の子供が生まれることがありますが、その例は稀なのです。」


「・・・結局何が言いたいんです?」


「先祖たちがどこから来たのかを突き止めたいのです。もっともその夢をかなえるのは戦いが終結した後になるでしょうけどもね。我々の先祖は非常に謎が多い、分かっているのは黒髪で東から来たという事のみ。ですがあなたはシノビの集落のものではない。もしかしたら何かの手掛かりになるのではないかと思ったのですよ。」


 まぁ、結局のところは私の後期戦を満たしたいだけなのですけどね。っと族長さんが付け加えた。

 ラスが何か言いたそうにしていたが・・・、気のせいか?


 しかし俺の出自ねぇ。

 あいにくだが何の情報もないのだ。だった興味なかったんだもん。

 

「なるほど。申し訳ないのですが俺たちの先祖がどこから来たのかについては全く知りません。今まで全く興味を持ってこなかったもので。」


「・・・そうでしたか。わかりました。お話が聞けなかったのは残念でしたが、この国以外にもわれらの先祖が散らばっていた可能性があるとわかっただけでもありがたいです。今晩はこの館で晩餐のご馳走をさせてください。それでは後程会いましょう。」


「はい、ありがとうございました。」


 こうして俺たちの面談は終わりあとは夕食を待つだけ・・・、そう思っていたのだが。


ードゴォォーーン!!


 突如爆発音が鳴り響いた、これは一体・・・。


「ラス!!」


「承知!!」


 それだけ言い残してラスの姿が虚空に消えていった。

 ほんとあいつは何なんだろうな?


「あの一体何が?」


「反乱でしょうね。戦争が終結したとはいえ、それはあくまでも書面上の話。実際にはかつての敵対勢力の一部との戦闘は続いているのです。」


 なるほど、戦いは終結したとはいっても諦めきれない奴もいるってことか。


「あの、何かお手伝いできることはありませんか?」


「お気持ちはうれしいのですが、これは我々の問題です。それに客人を我々の問題ごとに引き込むわけにも参りません。」


「俺達はラスに助けられた身。ですので何か恩を返したいのです。」


 そうでもしないと俺の気が収まらない。

 まぁおとなしくしていろ!!と言われたらそうするつもりではある。

 出しゃばりすぎて迷惑を掛けたら本末転倒だ。


「・・・わかりました。でしたら住民の誘導を少し手伝っていただきたい。」


 それはよかった。


「わかりました!!」


「よろしくお願いしますね。それでは付いてきてください。」


「ありがとうございます。タイタス!!」


「おう!!」


サイガさんが部屋から出ていく、俺たちは遅れないようについていくのだった。

次回は三十日の予定です。

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