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春日野神社 1

『マスター、そこの階段を昇れば春日野神社です』


ナビの指示に従って僕は山道を歩きこの階段の下までたどり着いた

でも、こんな山道の先に神社なんてあるんだろうか

こんなへんぴな場所じゃ、お参りの人だっていないんじゃないだろうか


まあ、その分鬱蒼(うっそう)とした森に囲まれているから雰囲気はあるけどね

この階段も苔むしていていかにもって雰囲気だし


でもこの階段を昇るのか、いったい何段あるんだろう


『525段ですね』


うわあ、知りたくない情報だ

まあ、頑張りますか


525段の階段を昇りだしてここは当たりだと段々に判ってくる

なぜなら、こっちに戻ってきてから一度も感じなかった魔素を感じられるのだ

もっとも、まだ薄すぎて使える状況にはないんだけどね

それでも上るにつれて少しづつ魔素は濃くなってはきているね


それにしても自分の住んでいる場所の近くにこんな場所があるとは今までは思いもしなかったよ

振り返れば市街地が一望できるぐらいに高い場所だしね

前の僕なら登るのがしんどいと考えてこようなんて思わなかったね


そんなしんどい525段の階段でもやがて終わりは来る

赤い鳥居が見えてくれば境内はすぐそこだ


階段を昇り切り鳥居を潜ればそこは広がる神社の敷地はまさにパワースポットだった


『日本で魔素に包まれる場所があるとはね』


『そうですね、濃度的には王都の1/100ぐらいの濃さですが』


『そんなもんか、まあ0と比べれるから凄く濃いと感じるんだろうな』


おう、人の気配がする.....人だよな?


「あら、高校生がここに来るなんて珍しいですね、それにまだ授業の時間ですよね」


巫女さんだ、若い巫女さんが僕に話しかけてくる

ストレートな長い黒髪に白い肌、そして細く力強い目、口元に浮かぶ笑みには吸い込まれそうな気さえする


「すいません、課外授業の一環で、郷土の不思議を調べているんです

ここは不思議に満ちているっていう噂を聞いて調べに来たんです」


「あら、こんなひなびた場所に立つ神社に不思議とかあるのかしら」


「ここの雰囲気は別格だと思いますよ

眼下に市街地が見える場所なのに、ここは別世界な気がします.....いわゆる神域って言う感じですね

それに、凄い美人の巫女さんもいらっしゃるし」


「まあ、貴方は感受性がとても高いのね」


「それは美人、神域どちらに関してですか?」


「もちろん、神域の件よ、だって私が美人なのは自明のことですしね」


うわあ、当たってるけど、ここまで普通は言い切らないよね


「それで、この神域を神域たらしめているご神体があるかと思うんですがそれって見せて頂けたりするんでしょうか」


「ご神体ですか、普通はお見せできないんですが、学校の課外授業ということであればお見せしましょうか

でも、写真撮影は厳禁ですよ」


「はい、写真はけっして撮りません」


「それでは案内しますので付いてきてくださいね」


巫女さんは身体をひるがえして歩き出す

僕はその後を送れないように歩く


『なあ、ナビ、彼女からは認識疎外の魔法の行使を感じるんだが』


『同意します、認識疎外の排除魔法ならば、この魔素濃度なら実行可能ですが』


『それを行うと相手にもバレるしね、敵対行動と思われることは取り合えず控えようか』


「そう言えば、お姉さんの名前を聞いていなんですが、良ければ教えてもらえますか」


「私の名前ですか、設楽 香奈枝(しらく かなえ)ですよ」


「香奈枝さんですか、僕は力石勇気と言います」


「随分と力強い名前なのね」


「まあ、みんなから名前負けしてるって言われてます」


「本当は優しい子なのかしら」


うわあ、良いお姉さんだ、優しいなあ

そんな話をしながら歩いていても魔素が少しづつ濃くなってゆくのが判る

それと不思議なことにお社とは別の方角に歩いてゆく


「あそこですよ」


そこには四方に結界が置かれた古井戸がぽつんとあるだけだ


「あれって、ただの井戸ですよね」


「そう、井戸よ、でもあなたなら判るでしょう、ただの井戸ではないわよ」


そう、その井戸からは間欠泉のように魔素が噴き出しているのだ


「噴き出す神気は珍しいのよ、貴方はこの神気が欲しかったんでしょう」


「神気ですか?、魔素では無くて」


「魔素、そんな呼び方もあるのね

名前はどうでも良いわ

問題は神気が貴方の身体に吸い込まれていくこと

貴方、何者なの」


香奈枝さんは魔素の流れが見えているんだ


「何者っていう言葉は香奈枝にそのままお返ししますよ」


僕はそう言って認識齟齬の排除魔法を行使する


「きゃあああ、貴方、乙女の秘密を覗くなんて礼儀がなってないわね」


香奈枝さんの目は先ほどまでと違って大きく開かれており、目の色は金色に変わっている

それ以上の変化はお尻に現れている

あれって狐の尻尾だよね、それが9個もある


「香奈枝さんって九尾の狐なんですか」


「まったく、驚いちゃうわよ、私の変身を簡単に解除するなんて、貴方こそ何者なのかしら」


「僕はこの町に住む.....『そう言うのは良いから、正体を明かしなさい』


「正体ですか、本当に僕はただの人間ですよ、ただ、異世界で戦闘経験があるだけでのね」


「異世界?」


「そうです、剣と魔法の世界です」


「勇気君は本当の事を言う気は無いのかしら」


「本当ですよ、ほら」


僕は無唱和でファイアーボールの魔法を実行して手の平に火の玉を浮かび上がらせる


「えええ、それってなんなの」


「だから、魔法ですよ、でもこれって魔素が無いと実行できないんです

だから、此処に魔素を補給に来たんですよ」


香奈枝さんは僕の顔と手の平の上に浮かぶ火の玉を不思議そうに交互に見ている

魔素は当たり前でも魔法は不思議なんだ


「勇気君、その火の玉ってどこかにぶつけたりできるのかしら」


「できますよ、こんなふうに」


僕は火の玉を井戸の先の崖に向けて飛ばす

火の玉は崖に当たり大きな音を立てて飛び散った


「ひゃあ、結構凄いのね、火の玉を神気で操るのは初めて見たわ」


「僕からすれば、香奈枝さんの巫女服のどこから9本もの尻尾が出てるかの方が不思議ですけど」


「ふうん、勇気君見たいんだ」


「えっ.....見たいかも」


「そうか、でもダメよ、内緒だから」


本当はさっき見たから知ってるんだけどね、あの感じだと巫女服も神気で作り上げてるんだろうね

だって、尻尾の根本にぴったりの穴からあの尻尾は出せないもんね


さてと、たわいもない話で終わらせてはくれないんだろうな

出来れば香奈枝さんとは友好的な関係を築きたいんだけどな


そう考えながら僕は香奈枝さんとの会話を再開するのだった

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