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ステージ0 みんなの時間


 ポン♪

 軽快な音とともにメッセージログが表示される。

 『ラビ』さんがログインしました。

 私はそのメッセージを開き、彼のもとに向かった。


「ばんわです!ラビさん!」

 小柄な見た目にぱっちりとした瞳、明るい金色の髪は異国の美少女をも連想させる。

 これが、私のアバターだ。

 そして私の対面に立っている男性アバター。

 黒い前髪が顔の半分を隠し、隙間から見える紫色の瞳がキリリと凛々しい。

 ワインレッドと黒のカラーリングをしたロングコートを翻しながら、彼は言った。

「やぁ!我が同盟者よ!今宵も短い時間だが楽しいパーティーにしようじゃないか!」

 彼は所謂、中二病というやつだ。

 名前は『ラビ』私が今いるギルドに誘った張本人で、たまたまクエストが一緒になったのをきっかけに仲良くなったプレイヤーだ。

 同じギルドに参加してからもクエストに同行して交流を深めていった。


「あれ?ラビさんレベルあがってませんか?ずるいです~!私も連れて行ってくださいよ!」

「クククッ同盟者よ、これは我が同盟者を守るために築き上げた力よ、この暗黒の力が込められた魔弾で、迫りくる愚者を血祭りにあげてやるわ!!!」

「ほんとですか!じゃあ頼りにしちゃおうかな?www」

「フハハハハハッ!任せろ!我と同盟者の血の絆があれば愚者どもも平伏すだろうさ!」


 毎回この人タイピング早いなぁ。

 そんな感想さえも抱く。

 

 このやり取りをした後はいつものように適当なクエストに出発する。

 私は後衛の魔法使い。

 彼はガンナー、彼もどちらかといえば後衛職ではあるのだが、本人の脳内設定上これであっているとのこと。

 

「喰らえ!我が魔弾を!!」

「この程度の力で同盟者をやろうなど愚の骨頂だぁ!」

「フハハハハハッ!逃げろ怯えろ平伏せぇ!」


 ほんとによく戦闘中にタイピングできるなぁ。

 私は戦うのに精いっぱいなのに、彼は戦いながらあのセリフを打ち込んでいるのか。

 よほどのタイピング力だ。


「いやー今回も絶好調だったねラビさんw」

「そうか?別に普段と大差ないぞ?」

「いや、戦いながらあんなセリフ打ち込めないってw」

「フフフ、我ほどの魔力があれば造作もない」

「そういえばさ、今度団長がギルドメンツでオフ会やらないかって掲示板に告知してなかった?」

「オフ会…か、久々に我らが団長が動き出したか」

「ラビさんは参加する?」

「まだ未定かなー………我の運命はいついかなる時もどう動くかわからぬゆえな」

「今一瞬素が出たでしょwww」

「なんのことだか、見当もつかんな」

「まぁ、そういうことでw」

「ふむ…愉悦の時間は終わりを迎える、といったところか」

「あれ?もうそんな時間?」

 

 時計を確認すると夜中の2時、彼がいつもログアウトする時間だ。


「ありゃりゃー、明日はラビさんインする?」

「うむ、明日はグレイヴも参戦すると言っていたはずだ」

「おー!じゃあ少し難易度高めのクエストも挑戦しますか!」

「っふ、我は同盟者の運命に従うさ、さらばだ」


 ポン♪

 また軽快な音が鳴り、メッセージログが表示される。

 『ラビ』さんがログアウトしました。


 私もそろそろログアウトするか。


     ★  ★  ★


 ガタッ…と、パソコンから目を離し、椅子の背もたれに体重をかける。

「はぁ~…」

 深いため息とともに、自分が作ったアバターを見つめる。

 

 『黒猫』と表示されているキラキラした少女のアバター。

 

 私のなりたい自分。

「キラキラ、してて……眩しいね」

 暗い室内でパソコンをいじっている私には到底届かない存在だ。

 再び溜息を吐いて、パソコンの電源を落とす。

 部屋の唯一の光源が消え、室内は暗闇に包まれるが。

 目が慣れてくると今度は月明かりに反射したパソコンの画面に自分の姿が映った。

 黒髪はぼさぼさで、ジト目の下にはクマができている。

 画面の『黒猫』とは正反対の自分。


 深森ふかもり 佐奈さな、17歳高校生。

 彼氏いない歴イコール年齢の私のクラスメイトからの呼び名は『魔女』だ。


「……はは、我ながら酷いプロフィールだ」

 私には秘密があった。


 誰にも言えない秘密、私が魔女といわれる由縁となる秘密が。


葡萄バロンです~。

実は昔投稿していたのですが、その作品を掘り出してリメイクしました。

まぁ、昔も今も文学力というか、文章力はないのですが。

少しでもむずがゆくなってくれたら幸いです。

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