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君に…

僕は今年30歳になったおじさん?

みんなはこれからだよとかまだまだだよとか言ってくれるが僕の彼女からしてみればいい年だと思う。

彼女は今年23歳の女性。

色白でおとなしく少し泣き虫だけど僕の自慢の彼女です。

この人が僕に取って最後の女性になると信じています。

でも…

ある日僕は気が付いたらある病院の待合室にいました。

診察室の扉の前の長い椅子に腰をかけていると

目の前の扉が開き

「どうぞ中へ」と50代位の医師が声をかけてきた

彼女の取り柄は健康

風邪も引かなきゃ疲れも知らない、その彼女が珍しく具合が悪く病院に検査に来た。

医師の声に誘われ診察室の中へ入った、周りを気にするが彼女の姿どころか気配すらない

「彼女は?」僕が医師言うと

「ああー、先にご自宅のほうに…」

と曖昧な返事が帰ってきた。

「…そうですか、で何か」

僕が言うと50代位の医師が眉間にシワをよせてもっと老けた感じで

「彼女さんに聞いたのですが身内の方がいないとかで…」

嫌な予感がした。

彼女は小さい時に両親を亡くしたらしく施設に預けられていたのを思い出した。

「…はい」

僕は大きく息をはき力無く返事をした。

男性医師が言うには、

現代医学では治療方法がないと言う、

俗に言う不治の病だ。

「余命3ヶ月」

医師から告げられた言葉、

他にも症状、病名色々と聞かされたが何も覚えてない。

真っ白な頭の中、家路に戻る。

「3ヶ月」

その言葉だけやけに頭から離れない、やはり彼女には言う訳にはいかない、いや言えない。

そんな事を考えていたら自宅の玄関の前に立っていた、軽く目をつむり、大きく一つ深呼吸をした。

「ただいま〜」

僕はいつもの用に振る舞った、

「センセ、なんらって」

柄にもなくテレビを見ながら煎餅を食べながら首だけ僕の方を見て言った、

「ん、あ〜なんかよくある病気だってさ。よくわかんないけど検査入院するみたいだよ。」

今思えばばれないよう冷静を装ったつもりが逆に怪しかったと思う、

「えっ本当に!?ありゃりゃ」

彼女はおどけているのか天然なのかなんだか予想と違う答えが帰って来た。

その一言に緊張がほどけたのか気が楽になった。

「検査入院だからたいした事ないよ、来週の月曜だからあと3日もあるしね、それまでに一緒に準備しなくちゃね。」

僕が淡々と話してると彼女が

「うん!」とテレビを見ながら軽く返事をした。

そして入院当日、

「どうも、いらっしゃい」

病院では似合わない言葉で先日彼女を担当してくれた医師が声をかけてきた、

「お世話になります。」

彼女と僕ペコリと軽く会釈をした。

「はいはい、どうぞ。」

かなり軽い乗りにあっけに取られた、先日きた時とは180度違う雰囲気だった。

しかし、医師は長年の経験からそのような態度を取ったのは僕はすぐに分かった。

僕は一日も欠かさず毎日彼女のいる病院に足を運んだ、それは彼女が暇にしているからとか淋しいがっているとかではなく一日、一秒でも長く顔を見ていたいからだった。

あれから一ヶ月がたち担当医から仮退院が出された。

彼女は子供の用に喜んでいた、しかし僕は素直に喜ぶ事が出来ない。

何故なら前日担当医に呼び出され

「明日、仮退院させます。彼女の行きたい所に連れて行ってあげてください」と言われたからだ。

僕は

「…もうすぐ…もうすぐ逢えなくなるんですか?」と聞いた。

医師が言うにはまだ若いという事もあって進行がかなり速いらしいとの事だった。

確かに一ヶ月前に比べると明らかに彼女変わっていた、顔はこけ手足は痩せ、立っていてもフラフラしているようだった。

空元気なのか彼女は

「病院食があまり美味しくないから元気がでないなぁ。病院でたら美味しいもの食べに連れてってね!」と言った。

僕は荷物をまとめながら彼女に背を向けたまま

「そうだね」としか言えなかった。彼女の顔を見ると涙が出そうだったからである。

医師に挨拶を済ませ、病院を出て一度荷物を置きに家路に着く。

「フゥー」軽く息を吐き、どこか食べに行くか聞くと

「やっぱりいいや」と彼女力無く返事をした。

やはりさっきのは僕を心配かけないようにしたみたいだった、

僕は彼女にたいして焦りがあったのか

「せっかく退院出来たんだし仕事有給休暇取るから一週間位旅行に行かない?行きたい所ある?」と言ったら彼女は

「うん。行く!式根島に行きたい」と言った。式根島とは東京の伊豆七島の一つで僕らの思い出の場所の一つだった。

「おぉー、いいねぇーいつ行くか?」と僕が言ったら明後日行こうと言ってきた、

僕は急だとは思ったが何も言わずに

「よし!」といい旅行会社に連絡した。幸いシーズン前ということで無事予約が取れ出発する事になった。

彼女思ったより元気で何事もなく島に着いた。

まるで病気とは思えないくらい彼女元気にはしゃいでいる。島に到着しとから5日目、彼女が僕の手を引きある場所に連れていった。

「ここ覚えてる?」

海が一望出来る丘の上に大人4、5人座れる位の石の上に彼女が座り話かけてきた。

「あぁー、覚えてるよ前に着たときに迷ってここに着いちゃった所でしょ?」5月の暖かい風が吹く中彼女の背中に向かい言葉を返した。

「そう」

とても小さな声で彼女が呟く。その声はとても優しくとても悲しい声に聞こえた。

僕は彼女の横に歩み寄ろうとすると彼女は

「知ってるよ。自分の事だもん」

「ありがとね」

僕は一瞬何の事かわからなかったがすぐに彼女が病気だった事を思い出した。

そう、彼女は始めから気がついていたようだ。

それを知った僕は胸が苦しくなり息ができない。

目からは涙が止まらなく声が出ない。

彼女に何の言葉もかけてあげれない。

どれくらいたっただろうか?彼女に背を向けたまま必死に感情を押し殺しいた。ようやくある程度落ち着き彼女の方を振り向くとそこにはさっきまでの彼女はいなく、とても幸福そうに眠る女性がいた。僕は彼女の隣にいき涙が枯れるまで泣いた。まだ別れの言葉も励ましの言葉も言えず逝ってしまった彼女な胸に顔埋め泣いた。

もう一度、もう一度だけ逢いたい。逢ってもう一度話したい…

僕はそのまま彼女の胸で意識が遠くなった。

「逢いたい」と思ったまま…



僕は誰かの声で起こされた。

「…どうしたの?」

「大丈夫?…」

ふと目を開けると見慣れた天井、見慣れた部屋、

そして…見慣れた彼女がそこにいた。

「大丈夫?泣いてるからびっくりしたよ!何の夢見てた?」

どうやら僕は長い夢を見ていたらしい。

ホッとしたのか枯れたはずの涙がまた溢れてきた。僕は横に座っている彼女を抱きしめ

「紗耶香逢いたかった」

「ありがとう」

と言うと

紗耶香は優しく言った。

「どう致しまして」

この話は実際にあった話です。でも少し大袈裟になっちゃってますが…(笑)

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