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異世界転移はされるもの!  作者: 二度寝
第3章 原始の民
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竜手と白刃

いつもお読み頂き有難うございます!


ブクマや感想等もよろしくお願いします。

 

 原始人達は、昔の冒険者の様なものなのかも知れない。


 スキルも魔法も無し。

 あるのはアビリティと優れた武装だけ。



 それでも、人間を相手にするには充分なのだろう。


 魔物を狩るには魔力がいるが、人を殺すのに必要なのは度胸だけだ。



 現にザラは、容易く俺を殺して見せた。



 まぁ敢えて抵抗しなかった、と強がってみちゃったりもするけどな。



「なるほど……幻術か。」



 いや、なるほどじゃ無いが。



「この時代の者達は、魔法とやらを使う。これもその類だろう。」



 そう言ってザラは、再び白刃を構える。


 俺としては、1回目の死亡でスキルの紹介をしたかったのだが、謎のいちゃもんを付けられてしまったので、次は抵抗してみる。



「魔法はこっちの方だ。…『変身』。」



 生体魔法の基本にして奥義、『変身』。


 文字通り、自身の体を作り変える魔法だ。



「やはり…人外か。」



 俺は、右腕を作り変えた。

 イメージは竜だ。


 黒い鱗に黒い爪。



 実戦で試した事は無いが、ゲンガさんからは『そこそこ使える』と言われた。

 あの人のそこそこは、世間で言う『最強』くらいだろう。



「今度こそ、実体を殺す。」



 殺気ってやつかな?


 肌がピリピリする。


 悪意は向けられた事が有るが、殺気は初めてだ。こんな感じなんだな。



「話を聞いてくれるまで付き合うよ。」



 俺は竜手を構え、ザラは白刃を構える。

 先程の剣速を見るに、素面では部が悪い。思考加速を使おう。



「…行くぞ。」



 ザラが一瞬の内に俺の懐へ潜り込み、白刃を横薙ぎに振るった。


 俺はスロー再生される世界の中で、竜手を使って白刃を掴む。



「な!?」



「これ危ない。折るね?」



 そのまま力いっぱい握り、腕を捻る。



 パキンッ


 軽い音を立て、白刃が半ばから折れる。



「フォトンブレードを、折った!?」



 観衆の誰かが驚愕の声を上げる。



「あ、もしかして高い物だったか?」



 だとしたら済まない事をした。

 彼らはこの時代に跳ばされてきた身だ。資源は貴重だろう。



「…くっ。まだだ!!」



 ザラは白刃を捨て、腰から拳銃を抜き放つ。

 あの白刃、やっぱり幾らでも出せる訳じゃ無いのか。



 ザラは銃を構えるが、発砲はしない。

 周りの者達に流れ弾が当たる事を恐れての事だろう。



「どうせ撃たないんでしょ?そろそろ話聞いてくんないかな?」



「…蛮族の言う事など、誰が聞くか!」



 銃を持ったまま、距離を詰めてくる。

 この動きはおそらく銃術だろう。


 銃を用いた戦闘術。

 ただ引き金を引くのでは無く、必中の体勢に持っていく術だ。彼らの世界にも有るんだな。


 だが…



「『ショートカット1、2』。」



 銃が使えるのはそっちだけじゃ無い。


 俺は右手に刀、左手に銃を持つ。

 ホントは逆の方が使いやすいのだが、右手を竜手に変えてしまったためこうなった。竜手だと引き金が引けないからな。



「…っ!貴様!ここで撃つつもりか!」



 当然そう考えるよな。

 ザラは俺の事を極悪人の蛮族だと思っているのだ。周りの者達に流れ弾が当たろうと気にしないクソ野郎、といった評価だろう。



「いや、君と同じで銃術でもやってみようかと。」



「!?」



 魔物相手に試した事はあるが、イマイチ上手くいかなかった。刀で斬った方が早くね?と思ったくらいだ。


 だが、人相手なら上手くいくかも知れない。一応ゲンガさんを相手に特訓して、Lv.3まで持っていったのだ。



「な、なめるなぁ!!」



 彼女は少し混乱しているようだ。

 俺がここで普通に撃たないメリットなんてないだろう。銃術は、超近距離で非貫通性の弾を撃ち、周りに不要な被害を出さずに戦う術だ。敵が自陣で使うなんて意味が分からない。


 彼女目にはただの舐めプに映っていると思われる。



「舐めるなら脚がいいっ!!」



 向かって来たザラに向かって適当な事を叫ぶ。



 ザラは右足を滑る様に動かし、俺の体勢を崩しにかかる。俺は半身だけ引きそれを躱すと、その勢いのまま刀を振るう。



 ガキンッ!



 一応峰側を向けて振るったが、要らない配慮だったようだ。

 ザラが銃で受け止めた。


 銃を封殺出来たな。

 空かさず左手の銃をザラに向ける。



「ばんっ!」



「っ!?」



 ザラは思わず目を瞑り身構えたが、まさか本当に撃つわけにもいかないので、口で銃声を表現するに留めた。



「…な、なぜ殺さん!?」



「ずーーっとその話をしようとしてるのに、君が聞く耳を持たないんだろ?」



 と、俺達の戦いが膠着状態になったのを見計らい、俺達の間に割り込む者が現れた。


 サァラだ。



「2人とも!ストップ!!」



 あ、俺も?

 俺は身を守っただけだぞ?



「サチ、お姉ちゃんは器が小さいの!そんなに余裕で勝たないで!もっと貴方達の事を嫌いになっちゃうわ。」



「…くっ!」



 ザラが精神にダメージを受けている。

 しかし、余裕で勝つなというのは難しい話だ。手加減が出来るほど、相手の実力も自分の実力も把握していないのだから。



「てかサァラ、拘束されてなかった?」



 サァラを拘束していた男達の方を見ると、2人とも床に蹲っている。股間を押さえているあたり、エゲツない一撃を食らったようだ。



「…ひ、必死だったから。」



 いや、狙い澄ました攻撃だろう。冷静に急所を狙ったとしか思えない。



「と、に、か、く!2人とも私の部屋に来て!他のみんなは解散!ほら、散って散って。」



 パンパン、と手を鳴らしながら周囲の者達に解散を促す様は、まるでこの組織のリーダーの様だった。


 周りの者達も、ごく自然にその指示に従っている。



 帰還派の者達は俺を睨みつけていたが、リーダーのザラが何も言わないのを見て、大人しく散っていった。



 しかし、妙に大人しくなったな。


 俺に完敗したのが相当効いたか?

 いや、その後のサァラの言葉のせいかな。


 あんな言われ方をして、尚も暴言を吐き続けたら只の負け犬の遠吠えになるもんな。

 結果的にはグッジョブか。



「…こんな蛮族を、サァラの部屋に…!」



 部屋に入るなり、ザラが悔しそうな表情で呟く。

 最初の印象と違い、どうやら結構なシスコンの様だ。



「既に一度入ったぞ?…その時は2人きりだった。」



「!!」



 お、いい顔。

 期待通りの反応だ。



「き、貴様ぁ…」


「お姉ちゃん!」



 ザラが食ってかかって来たが、空かさずサァラに窘められて動きが止まる。



「サチもドヤ顔しない!あと意味深な言い方もやめなさい!」



「…はい。」



 叱られた。



「お姉ちゃんはまだ、サチの言葉をちゃんと聞けないと思うから私が説明するね。」



 それがいいな。

 まずはギルド側の提案を信じて貰わないと話にならない。


 まぁその為に行った仲良し大作戦は失敗に終わったが…。


 というか、俺がやった事って逆効果じゃないか?

 ザラの印象をより悪くしただけの様な気がする。




 サァラの説明を聞き終えたザラの表情は、やはり芳しくなかった。



「……何と言われようと…お前達蛮族が、レイノを殺した事実は変わらん。」



 やっぱりソコだよなぁ。


 まずはその問題からやっつけるか。




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