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異世界転移はされるもの!  作者: 二度寝
第2章 森の粘体と科学者
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買い出しと吹っ飛びごっこ

いつもお読み頂き有難うございます。


評価等お待ちしております。

 


 家に戻ると、みんな一通り片付けが終わった様だった。少し早いが買い出しに出かけよう。



 家具は共有スペース以外の物は自腹で購入する事にした。衣服、生活用品も同じだ。

 おそらくコレは、女性陣の方が出費が多くなると思われる。


 ちなみにアキナは、報酬の分配を辞退している。今の自分では金の使い道が無いとの事だ。人間に戻れたらその時改めて分配を受け取るという約束にした。



「この辺て職人さんが多いみたいね。」



「森とか養蚕屋さんが多いからなー。もしかして鉱山も在ったりするのかな?」



「あるみたいだよー。しかも地下に!」



 それはもしやダンジョン跡地では?

 この島を見て回るのに飽きる事は無さそうだ。



 俺達は何軒か家具屋を回り、既製品はその場で買い、特注品は発注する、という方法をとった。共有スペースには拘りたいという事で、特注品が欲しくなった訳だが、流石に家具が一つもない中で暮らすのは難しい。最低限の家具は既製品で済ませる事にしたのだ。



「なんか、ギルドに勤めて1週間程度にしては羽振りの良い生活してるよね。」



 ヒカルがのんびりした調子でそんな事を言う。



「今回はたまたま大金が入ったからな。いつもこうって訳には行かないだろ?」



「……けど、これからはもっと上のクエスト受けられる。」



 確かにな。

 どうにも貧乏性が抜けないが、俺達のクランはそれなりに良い生活が出来るくらいの実力はあるのかも知れない。とはいえ、



「…初心忘れるべからず、だな。」



「お、イチトいい事言うな。」



「今回の件で、自分の実力不足を思い知ったからな。…ヒカルとフタバはやっぱすげぇわ。」



 イチトは2人の戦いを目の当たりにしたんだよな。


 何だかんだで俺は、2人の戦う所を見た事が無い。俺も改めて自分の実力を把握するためにも、一度見ておいた方が良いかも知れないな。



「さて、家具はとりあえずこんなもんだろ。後は生活用品だけど…ついこの間買い込んだばっかりだからなぁ。」



「でた男の買い方。」



 まさかの批判。



「物にはね、安い時高い時ってのがあるのよ。お金に余裕があってもそういうのは大事にしないと!」



 リコってば家庭的!



「特にこれからは自炊も出来るんだから、余計そういうのを気にしないと!…ちょうど良いわ、今日は自炊にしましょ。買い出しとは何なのかを教えてあげる!」



 なんかテンション高いな。良いとこのお嬢様かと思っていただけに意外だ。



「……それなんだけど…。私、出来れば図書館行きたい。」



「…は?フタバどうした!?熱でもあるのか!?」



 イチトが取り乱す。

 自分の妹をどんだけ脳筋だと思ってるんだ。



「……アキナの件。」



「お、おう。なるほどな。」



 アキナは自身の前世や、今世の目標についてみんなに話していた。同じクランで活動して行く以上知っておいて欲しかったのだろう。



「そういう事ならボクも行くよ。力になれると思うし。……とはいえボクのスキルも使い続ける事は出来ないから、本と一緒に調べてみよう。」



 アキナの目標は、『人間に戻ること』。

 その為には、魂や人体についての学習が不可欠だ。調べる事は山ほどあるだろう。



「《ありがと。でもあんまり付き合わせるのも悪いから、フタバとヒカルだけで。》」



「そっか。じゃあここからは別行動ねー。3人ともあんまり遅くならない様にするのよ?」



 カナデがお母さんの様な事を言う。

 まぁ俺に母親はいないが。



 俺達は近所の商店街に向かう。

 大型のスーパーも在ったが、『本物の買い出し』とやらにはこちらの方が良いらしい。



 リコを先頭に、カナデ、イチト、俺の順でついて行く。リコ以外は、家事全般について疎い。ひたすら指導を受けるだけだ。



「リコは良いお嫁さんになるねぇ〜。」



「や、やめてよぉー。」



「…どうしようイチト。俺、もう抑えられない!」



「お前はいつも抑えられてねぇよ。」



 買い出しが済み、帰宅した時には日が暮れかかっていた。これから調理器具を開けて、料理の仕込みを開始するらしいが、料理を口に出来るまでどれくらいかかるのか。



「よし!ここからは力になれん!隣の空き地で暴れてくる!」



 イチトは早々に戦線離脱した。



「俺はリコのエプロン姿を眺めるくらいしか出来ないが……ここに残るぞ!!」



「イチトのトコ行ってきなさい。」



 追い出された。



 仕方がないので、イチトと組手をして時間を潰す事にする。



「よし、サチ!ステータス上がったんだろ?打ち込んで来いやー!」



 結局俺は、修行の成果を試せていない。せっかくイチトがこう言ってくれているのだ。存分に試してみよう。



「よっしゃ!…いっくぜぇぇええっ!!」



 俺は全力で駆け出し、イチトに殴りかかった。



「…ちょ!!バカッ!」



 イチトは俺の拳を両手で受け止め……吹っ飛んだ。



「加減を知れええぇぇぇ…ぇ…ぇ……。」



「…………。」



 イチトが10m程先で着地した。

 なんだ、普通に着地出来るんじゃないか。


 と、安心していると、イチトがすごい速さで走ってきた。



「こぉぉのぉ〜バァカァァがぁぁー!!!」



 イチトは走った勢いをそのままに殴りかかってくる。


 ヤバイ。

 死ぬほど威力がありそうだ。


 俺はイチトのマネをして、両手でその拳を受け止めた。



「…っぐ!ぎゃぁあああぁぁ!!!」



 俺は5m程吹っ飛び、地面に体を擦り付けて停止する。両腕が逆側に曲がってしまった。



「おいサチ!こっちは不死じゃねぇんだぞ!なんて攻撃しやがる!!」



 いやいや、加減しろなんて言わなかっただろ。

 俺は体を再生させつつ起き上がった。



「いやぁ、まさかあんなに威力が出るとはな。しかしイチトすげぇな。あんなに吹っ飛んで綺麗に着地なんて出来るもんか?腕も折れてないし。」



「伊達に武術やってねぇんだよ。フタバなら躱せただろ。」



 来道兄妹すげぇな。



「はぁ…とりあえず普通に組手すんぞ。身体強化無しな。」



 ふむ。

 今の俺なら身体強化無しでもそこそこやれる気がする。



 そこから俺達は1時間程組手を続けた。

 日が沈みきった頃、ヒカル達が帰って来たので一緒に家に戻る。中から美味しそうな匂いが漂って来ていたので、組手に集中出来なくなっていたのだ。



「「ただいまー!」」


「戻ったよー。」


「……本嫌い。」


「《お腹空いたー。》」



 リコとカナデがエプロン姿で出迎える。

 幸せだ。



「バカ2人は先にシャワー済ませてね。」


「フタバちゃーん!私頑張ってご飯作ったんだよー。楽しみにしててね!」



 俺とイチトのシャワーが済み次第夕食を摂る事にした。


 こんな平和な日が続けば良いな、なんて有り得ない事を考えながら、その日は満ち足りた気持ちで過ぎていった。



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