開戦
俺はやった!やり遂げた!
永遠にも思える3日間を、遂に乗り越えたのだ。
「…まぁ、こんなものだろうね。3日間お疲れ様。まだまだカスみたいなものだけど、カスの中ではマシっていう程度には強くなったんじゃないかな?」
「…有難うございました。クソ仮面様。」
3日間とはいえ、俺に修行をつけてくれた人だ。一応礼は言っておこう。
「様なんて付けなくていいよ。ゲンガさんと呼んでくれ。」
この3日間で分かった事は、コイツには話が通じないという事だ。
俺が何度やめてくれと叫んでも、クソ仮面は俺をボコり続けた。「これも修行だ」という言葉で、全てが許されると思っていやがる。
「さて。一度ステータスを見ておきなよ。レベルは上がっていないだろうが、そこそこマシにはなっている筈だから。」
素直に従うのは癪だが、確かに気になる。この3日間ガリバーの通知は切らされていたからな。
名前―桐崎 幸
年齢―17歳
種族―人間
レベル―11
職業―冒険者
所属―仙境六花 前衛班 後衛班
先天スキル―不死
後天スキル―刀術Lv.3 銃術Lv.3 苦痛耐性Lv.8 剛力Lv.2 思考加速Lv.3 速読Lv.3 鉄壁Lv.3 投擲Lv.1 物理耐性Lv.1 魔法耐性Lv.3
魔法―生体属性Lv.3 無属性Lv.2
能力値―MP 160/160
STR 280
DEX 185
VIT 325
AGI 215
INT 210
MND 575
LUK 5
称号―時神の知人
おいおい、どうしてくれるんだ。
苦痛耐性が2レベルも上がってしまったじゃないか。
スキルのレベルはMAX10だったよな?苦痛耐性カンストとかしたら可哀想過ぎるだろ。
「それなりに上がっただろう?肝心なのはアビリティだが、そちらも上がっている筈だよ。」
「…まぁ、はい。……これで皆の所に行って良いんですよね?」
「許可しよう。ホントは透明化くらい習得して欲しかったけどね。ホント要領が悪くて困る。」
アンタみたいな化け物の物差しで言うな。
とは言えないので、素直に礼を言っておく。
「有難う御座います。転送装置はどちらに?」
「せっかちだね。安心しなよ、外の世界では大した時間が経っていないんだからさ。」
そんな事を言われても、早く皆の顔を見ないと落ち着かないのだ。ヒカルとフタバの無事を確認したいし、イチト達と合流して謝りたい。
「まぁいいか。…こっちだ。」
ゲンガさんに続いて部屋を出る。
そこには、ギルドの転送装置と良く似た物が設置されていた。だがこれは…
「……何の冗談です?」
「あ、やっぱり分かる?」
どう見ても偽物だ。ナリはそれっぽいが、中身が違うと言うのか…上手く説明出来ないが、これで空間転移が出来ないのは分かる。
「ほんと、本質を見抜く目だけはあるね。生体属性の適性が高いって事なんだろうけど…女の子を相手にする時には気をつけるんだよ?髪を染めているからって、指摘したりするもんじゃない。」
「余計なお世話ですし、手遅れです。…それより本物の転送装置はどこです?」
イチト達3人は、ゲンガさんにバァライへ送ってもらった筈だ。転送装置自体はある筈なのだ。
「そんな物は無いよ。…私が時空魔法で送ったんだ。」
「………。」
負け惜しみじゃないが、その可能性も考えていた。
だが、水、火、闇、生体と、4つの属性を使いこなし、その上時空属性まで使えるとなると、少々常軌を逸している。
「私は君のような凡才とは違うんだ。君の常識を押し付けないでくれ。」
「何も言っていません。心を読まないで下さい。」
この人、初めて会った時は紳士的だったのに、この3日間で完全に化けの皮が剥がれたな。
いや、これすらも化けの皮なのかも知れないが。
…生体魔法使いを相手に、考えるだけ無駄か。
「バレてしまったし、装置には乗らなくていいや。……じゃあ送るよ。せいぜい頑張りたまえ。」
「ありが……っ。」
最後の礼の言葉は途中で終わった。
何の感慨も無く転移させやがって。本当にあの人は人間なのだろうか?
ともあれ、俺は無事にバァライ近郊の森へとやって来た。イチト達はバァライに送られたそうだが、俺はいきなり森の入り口だ。転送装置の偽装がバレたから、遠慮なく近くに送ってくれたのだろう。
「…待ってろみんな。今行くぞ!」
俺は森に入り、一直線にダンジョンを目指す。ゲンガさんに借りた犬型の魔道具に案内をしてもらい、疾走する。
「!!」
森に入り、僅か2分で魔物に出会った。普通のスライムだ。
「『ショートカット1』。」
俺はガリバーから刀を呼び出し、鞘から抜き放つと同時に振り抜いた。
「…よわっ。」
スライムは、体内の魔石ごと真っ二つになる。
ザコは無視してもいいんだが、少しでも経験値が欲しい。あれだけ体を再生したんだ、レベルアップの恩恵は捨てがたいものがある。
「…今度は3体か。…『ショートカット2』。」
今度のスライムは、赤色のが1体、青色のが2体だ。銃も試しておこう。
パンッ!パパンッ!
3発で3体全ての魔石を砕いた。
DEXが上がったのを実感できるな。
その後もスライムを狩りながら進み、20分程でダンジョンに侵入した。ゲンガさんは、入り口が隠蔽されていると言っていたが、俺にはどう見ても入り口にしか見えない。
MNDの恩恵だろうか。それとも目を魔力強化しているからか?…どっちでもいいな。
俺は迷い無くダンジョンに踏み込む。
………………………………………
「待っていたよ。お2人さん。」
ボク達は遂に、ダンジョンのボス部屋へと辿り着いた。ボス部屋は滝の裏に隠された洞窟。
本来ならココに辿り着くのは容易な事では無かっただろう。
しかしボク達は、余りにも露骨にココへ誘導された。
不自然な魔物の出現、一定間隔で置かれた冒険者の亡骸。その全てが、この洞窟へと誘っていたのだ。
「「………。」」
「おやおや?君達までダンマリかい?ほらほら、君達のお仲間を殺したのは私だよ?存分に怒りをぶつけてくれたまえよ!」
ボス部屋には白衣の男と、1匹のスライムがいる。
いや、アレはスライムと言っていいのだろうか。その姿は、今まで見てきたスライムと余りにもかけ離れている。
「…お望み通り、ぶつけてあげるよ。」
ここが普通のダンジョンで、普通のボス部屋ならば、怒りを覚えるのは可笑しな話だ。冒険者である以上、常に危険は付き纏い、死の覚悟だってしているだろう。
しかし、これは違う。
ダンジョンの存在を隠し、表にはスライムを出現させ油断を誘う。人為的な悪意の塊とも言えるダンジョンだ。これはキレても良いだろう。
「…ヒカルだけにやらせたりしない。」
フタバも同じ気持ちだったようだ。
彼女の眼光が、今までに見た事も無い程に剣呑になっている。
「『地球両断ぶれーど』!!」
「……『帯雷』。」
ボク達で終わらせる。
これ以上、こんな所で犠牲者は出させない。




