未知との遭遇
リコちゃんの爆弾発言を聞いた俺達は、
つ、墜落だってーー!?
とは、ならない。
何故なら俺には分かっているからだ。
もちろん飛行機が墜落する事がじゃない。
「……何よそのふざけた顔は。」
「いやこの顔は生まれつきなんだけども…。ええっとリコちゃん、俺には分かってるからね!墜落じゃなくて、着陸って言おうとしたんだよね?でも降りる準備とかはまだ大丈夫だと思うよ。到着予定時間までまだ5時間はあるからさ!きっとカナデとのお話が楽しくて時間勘違いしちゃったんだよね!よくあるよそういうの、現に俺もイチトと話してたら思ったよりあっという間に時間が過ぎててさー。あ、でも勘違いしないでね?俺は全然そっちの気とかないから!むしろ女の子大好きだし!…い、いや!とは言っても一途なタイプなんで、浮気とかそういうのはしないよ?この子って決めたらもう他の女の子なんてほとんど目に入らないくらいだからさ!でも、言葉も時間も勘違いしちゃうなんてリコちゃんって結構おっちょこちょい?まぁでもそういうとこも可愛くていいと思うなー俺は。あ、ちなみになんだけどリコちゃんって今おいくつかな?14歳くらい?俺は17だけど全然歳の差とか気にしないからさ!うん、ホント全然!タメ口呼び捨てでいいよー!そっちの方が早く仲良くなれそうだし!あーでもこうしてお話するのも楽しいけど、早く着いて欲しいなー。そんでさっさと試験に合格してさ、リコちゃんと一緒に働いてみたい!あ、全然関係ないんだけどギルドって職場結婚的なのオッケーらしいよ?なんか、スキルと遺伝子の関係性ってまだまだ研究が進んでないらしいんだけど、魔法なんかは特定の一族で同じ属性になったり、魔力の量も遺伝によるところが大きいらしいじゃん?だからギルドで働くエリートの血をより濃くしていくみたいな研究もあるとかないとかで…。まぁつまり何が言いたいかというと、ゆくゆくは俺と……」
「「ストーーーップ!!!」」
ん?
なんだ?
なぜ俺とリコちゃんが楽しくお話しているのにこの2人は邪魔をするのだろう。
まったくもって
「理解できん。」
「「こっちのセリフじゃボケェ!!」」
またハモってる。
まだほとんど話もしていないのに、イチトとカナデは随分と相性が良さそうだな。
「いやいや、え?サチってそんな感じなのか?かれこれ7.8時間は喋ってたけどそんな感じじゃなかったじゃん!めっちゃノリ良くていいヤツそうだったのに、え?どういう事?」
「イチト…こんなイッちゃってる奴とよくあんなに喋ってたね。試験官とのやりとり見てたら、あんたの方がアホなのかと思ってたけど…違うわ。全然まともに見えてきた。」
な、なんだ?
何故こんなドン引きされてるんだ?
「いや、ポカンとすんなよ!さっきまでならともかく、今その顔されるとなんかこえーよ!!サイコパスか?サイコパスなのか!?」
よく分からんがお前らのせいでリコちゃんが微動だにしなくなったぞ!
なんて事だ!
「え、えーと、カナデ……代わりに話してもらっていい?ちょっと私アレかもしれない。未知との遭遇に着いて行けてないかも。私のスキルを信じてもらえない事は良くあるけど、このパターンは初めてだー。」
身動き1つしなかったリコちゃんが、震えながら言葉を紡いでいる。
震えてるところも可愛いなー。
お風呂に入れてあげたい。
「!!」
「ちょ、ちょっとまって!えーっとサチくん?リコの事見つめるの一回やめてもらっていいかな?な、なんて言ったらいいか、その〜……そう!緊張!この子緊張しちゃってるみたい!代わりに私が説明するからさ!」
なに!?
緊張してしまったのか!
そうだよなぁ〜。
顔立ちからいってまだ、幼さの抜けない年齢だろう。
いきなり会った男とそんなに積極的に話せなくても仕方ないかもしれない。
「ふむ。そういう事なら仕方ないな。ごめんねリコちゃん。俺わりと鈍いところあるみたいで、リコちゃんが緊張してるの気づかなかったよ!」
俺が話しかけると、リコちゃんは一度ブルッと身震いした。
トラクターのエンジンをかけた時みたいな反応から察するに、慣れない男との会話の為、心のエンジン?を入れたのだろう。
「だ、大丈夫!大丈夫だからとりあえずその幼女に話しかける様な感じやめてもらえる?私一応19だし、ちゃん付けもキツいから!」
19歳!?
まさかの2コ上!!
背も低いし顔も幼いからまったくそうは見えなかった。
これは失礼な事をしてしまったな。
「お、おお。勘違いして悪かったな。じゃあリコって呼ばせてもらうわ。」
「うん…大分マシになった…。」
リコちゃん…いや、リコはボソッとカナデに何かを伝えたが、よく聞こえなかった。
「あ、それは良かった!でもとりあえずは私が代弁しとくね!」
なんだか分からんけど、リコはまだ緊張しているらしく、カナデが代わりに話すらしい。
「えーーと、思わぬ回り道をしちゃったけど、とりあえず話すね。」
「ああ、頼む。オレはなんか疲れちまったよ。」
様子を見てたイチトも復活した様だ。
リコはともかくコイツは何を大人しくなっているのだろう。
「改めて言うけど、リコの言ってた墜落っていうのは、マジよ。」
「「………。」」
先程のリコと同じく、真面目な表情をして話しだすカナデ。
さっきはリコの顔だったので、興奮してその後の記憶が少し無くなったが、今度はカナデなので意識ははっきりしている。
が、話を受け入れられるかは別問題だ。




