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異世界転移はされるもの!  作者: 二度寝
第1章 始まり始まり
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初めての研修、そして決闘

 

 研修初日は、座学が3つ、実技が1つだった。4つとも初日という事もあり、全体の流れについての話がメインだった。

 どうやら真面目に週5で受けていれば、1年あたりの単位は3ヶ月程で取れるようだ。やはり冒険課なので、冒険をメインに出来るようになっているのだろう。


 ちなみに、俺、イチト、リコ、カナデは、同じ研修を受けているので、今日の4つの研修を一緒に受けた。フタバは座学で1つ被り、ヒカルは実技で被った。



 そんなこんなであっという間に昼になる。


 昼食は訓練も兼ねて、クエストを受けた先で摂る事にした。冒険中に食事を摂る経験は積んでおいた方が良いという判断だ。



 ところが、研修が終わった後にガリバーを確認しても、クエストの受注がされていなかった。予定では、フタバがしてくれているはずなのだが……


 そう思ってクエストの受注を行う冒険課の施設に向かうと、なんだか人だかりが出来ている。クエストの張り出された電光掲示板では無く、冒険課の入り口辺りだ。



「おい、お前ら!1位から5位も来たぞ!」



 どうやら人だかりは、クランの勧誘者達らしい。少し先にフタバの姿も見える。彼女は、この人達に遮られて、クエストの受注が出来なかったのだろう。



「ね、ねぇ君達!僕達は『タイタンズ』っていう…」


「待て!こっちは『神格の日』だ!」


「『灰善』に来れば間違いなく成功出来るぞ!」



 フタバを囲んでいた勧誘者達が、こちらに迫り来る。

 なんというか…すごい熱気だ。そして距離も近い。



「あのー。お誘いは有り難いんですが、俺達はもう『仙境六花(せんきょうりっか)っていうクランを結成してて、クランの勧誘は間に合ってるんです。』



「それは6位の子にも聞いたよ!…けどね?新人だけでクランをやっていくのは大変な事なんだ!やっぱり初めの内は、俺達みたいな先輩の元で研鑽を積むのが賢いやり方ってやつだよ。とりあえず『赤猫』のアジトに一回来てみない?」



 なんだか結構しつこそうだな。戦力を増やして、クランの規模を大きくしたいという心意気は素晴らしいと思うが、俺の仲間を数字で呼ぶのは感心しないな。



「どいてくんねぇかなー、お兄さん方。オレ達はこれからクエストを受けるんだ。妹にちょっかい出したのは見逃すから、とりあえず道を開けてくれ。」



 気分を害していたのは俺だけじゃなかったようで、イチトが群衆に向かって凄む。


 おそらくは、ここにいる冒険者達はベテラン揃いなのだろう。少なくともアカデミーは出ているはずだ。しかし彼らは、遥かにレベルの低いはずのイチトに気圧されて、2.3歩後ずさる。今のイチトには、それくらいの迫力があった。



「…おいおい、それが先輩への口の利き方か?」



 ただし、気圧されたのは全員では無かったらしく、ガタイの良い20代中盤くらいの男が群衆の中から進み出てきた。



「おいあいつ…『グランベアー』のオーリオじゃないか?」



「だな。ベアーはもう、何人か新人を確保したって聞いたぞ。日本のトップランカーまで持っていく気かよ。」



 どうやらそこそこ有名なクランのメンバーらしい。2メートル近い身長に、鍛え上げられた体。確かに強そうだ。



「無礼は生まれつきだが、それは謝る。だけどそっちも無礼を働いたんだ。おあいこだろ?先にギルドに入ったからって、どんな態度も許されるってのか?」



「無礼だと?…こっちは親切心で誘ってやってんだ。人の好意も汲み取れねぇガキが、あんまり粋がるんじゃねぇぞ。」



「だからそれがいらねぇ世話だって言ってんの。オレの妹もそう言ったはずだぜ?」



 完全にケンカの流れだな。これはまずい。


 将来的にどうなるかは分からないが、今の段階のイチトではコイツには勝てないだろう。先程群衆の中から聞こえた情報だが、このオーリオとかいう巨漢は、レベル36だそうだ。対してイチトのレベルは9。同レベル帯の中では抜きん出た能力値を持つイチトだが、流石に4倍のレベルを持つ相手には分が悪い。



「ちょっと待って下さい。仙境六花のリーダーは俺です。うちのメンバーに因縁付けたり、引き抜こうとするのはやめて頂きたい。」



「あ?…採用試験の成績が良かったからって、もう一人前気取りか?……こっちに来い、クランのリーダーってのはお前みたいなひよっこが名乗って良いもんじゃねぇんだ。実力不足を教えてやる。」



 いや、採用試験の成績を元に勧誘活動に勤しんでいたのはそちらだろうに。


 オーリオは俺の腕を引き、群衆から少し離れた所に連れて行く。冒険課の施設に入る手前だったので、ここはまだ外だ。広大な敷地を持つギルドには、ケンカを出来るスペースなんて有り余っている。



「『決闘』だ。宣誓を述べろ。」



 決闘というのは、冒険課に属する冒険者達の間で揉め事が起きた時などに使われる、ガリバーの裁定システムだ。

 互いに宣誓を述べた後なら、腕力を用いた解決が容認される…要するに拳で黙らせる事が出来るのだ。


 なんとも原始的な解決法だが、基本的には立場の近い者同士で行われるもので、新人相手にベテランが決闘を吹っかけるなんて事は殆ど無い。そんなことをしても、新人が受けなければ良いだけなので、意味がないのだ。


 だがしかし、今回の場合は別だろう。俺が強気に割り込んだ事で、オーリオは俺の事を身の程を知らないガキと認定している。つまり断らないと踏んでいるのだ。


 まぁ実際断らないが。



「『武を用いた語り合いの結果に、言を用いて抗わぬ事を誓う。』」



 俺は、ガリバーに送られてきた決闘申請に書かれた文言を、そのまま読んだ。

 この宣誓は、何があっても文句無しだって事なんだろう。


 宣誓を口にした瞬間、俺とオーリオの体を半透明のバリアが覆った。バリアは全身に行き渡ると、完全な透明になり、姿を消した。


 これは、決闘用の保護プログラムで、死の危険のある攻撃を一度だけ防いでくれるというものだ。ギルドに住む上位精霊の力らしい。決闘では、このバリアを破壊された時点で、負けとなる。



 つまり、俺に負けは無いという事だ。

 死の危険のある攻撃なんて、俺に対してはあり得ないのだから。



「来い、格の違いを見せてやる。1発殴らせてやろう。」



 オーリオはそう言って、腕を広げて余裕の態度を取っている。おそらく、鉄壁のスキルを持っているのだろう。スキルレベルも高いのかもな。


 しかしこれはチャンスだ。こいつに勝てば、ここにいる勧誘者達をまとめて追い払えるかも知れない。

 やれるだけやってみよう。



「じゃあ……遠慮なく。」



 そう言って俺は、拳を構える。



「てめぇ…ナメるのも大概にしろ。素手で俺とやり合う気か?」



 オーリオが怒りを露わにする。

 そんな事を言われても、そっちも素手なんだが。



「そっちが素手なのにこっちだけ武器有りじゃ…」



「俺のレベルは36だ。てめぇのレベルは8だろ?看破済みなんだよ。これだけのレベル差で俺が武器まで使ったら、実力差が伝わんねぇだろうが!」



看破スキルを持っているのか。

 しかし俺のレベルを公表してくれたのは好都合だな。これなら武器を使って倒しても、観衆へのアピールになる。



「そうかい。…そんじゃ『ショートカット2』。」



 ガリバーのストレージに収まっていた拳銃を呼び出す。


 俺の手に現れた拳銃を見て、オーリオの身体強化に変化があった。魔力視で観察してみた所、先程までは腹部と左頬に魔力を集めていた。俺の拳がぶつかる位置を読んでの事だろう。素手が気に入らないと言いながら、念の為備えていたようだ。


 拳銃を取り出してからは、心臓と頭にシフトした。即死したらそこで決闘終了だからな。

 とはいえそれも念の為といった感じだ。そこまで重点的に強化を行なっているわけでは無い。全体をがっしり強化して、余った分を急所に集めているだけだ。余裕の表れだろう。



「いくぞ。」



 俺は、武装強化を発動する。

 シリンダーに収まる弾丸の内、初めに出てくる1発だけに魔力を込める、込めまくる。そして銃本体が破損しないように、そちらにも強化を施す。両手で銃を構え、狙いを付ける。


 狙いは…脚だな。



 ドッガン!!!


 大砲のような音を立て、弾丸が射出された。



「ガッ!!」



 オーリオが右膝を吹き飛ばされ、地に倒れ伏す。




 やばい。思った以上の威力が出てしまった。


 オーリオの身体強化が杜撰な所に当たったのも良くなかった。狙いは脛だったのだが、僅かに上に逸れ、膝に命中してしまったのだ。


 …まぁ初めての武装強化だから仕方ないよね?



「…ぁぁあぁ…お、俺の脚がぁーーっ!」



「……トドメを刺さないと決闘って終わらないのか?」



 仕方がないので、次の弾丸に魔力を込める。変に加減すると苦しませるだけなので、先程よりも倍程度込めてみよう。



「さ、サチ!それはいくらなんでも…!」



 リコを横目で見ると、瞳が金色に変わっている。魔眼で魔力を見たのだろう。



 けど、制止の声を聞き終える前に、引き金を引いてしまった。銃殺は急に止まらないのだ。



 ドッッパァアン!!!



 くそ!

 反動で両腕が曲がってしまったじゃないか!次からはちゃんと身体強化も併用しないとダメだな。



 けどこれで決着だ。



 ありがとうオーリオ。お前のおかげでクエストの前に武装強化を試せたぞ。



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