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異世界転移はされるもの!  作者: 二度寝
第1章 始まり始まり
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明確なる悪意

 

 キャストカフェの客層は、比較的若い女性が多かった。異界由来のスイーツを売りにしており、それを目当てに来る女性客が多いようだ。ガリバーアイランドは、観光地としても人気があり、そういった客層も足を運んでいるのだろう。店内は非常に賑わっていた。



「お、テラス席か。」



 店内に比べればまだ人の少ないテラス席に案内してもらうと、席に着いてすぐにイチトが合流した。



「…なんか嗅いだ事のない匂いがするけど、そのお肉大丈夫?」



 フタバが兄を心配している。



「おう!めっちゃ美味い!フタバも食うか?」



「……いい。」



 髪の色以外はホントに似てない兄妹だな。



 イチトの豪快な食べっぷりに、ただでさえ空腹な俺達は食欲を刺激され、すぐに店員さんを呼ぶ。俺とヒカルはパスタ、女性陣はサンドイッチを注文した。



「うま!こういう所の料理って見た目だけなイメージだったけど、この店は当たりだな。」



「もしかしたらこの島全体で食事のレベルが高いのかもよ?」



 だとしたら最高だな。値段もリーズナブルだし、食べ歩きとかしてみたい。まぁある程度稼げる目処が立ってからになるが。



「だといいな。…さて、みんなは行きたい所とかあるか?」



 行きたい所もなにも、皆土地勘が無いはずなので、この質問はなんとなく投げかけてみただけだったのだが、その反応は予想とは違った。

 そんな素ぶりは見せていなかったが、皆それぞれに行きたい所の目星をつけていたのだ。この島は観光地としても人気、とウェブに載っていたが、こんな所で実感する事になるとは。



「なんならここからはバラけるか。また16時に技術班の所に集合って事でどうだ?」



 皆の意見を聞いているととても回りきれないので、別行動という事にした。



「おっけー!ちなみにあの建物『ハグルマ』って呼ばれてるらしいよー。」



 建物自体に名前が付いているわけでは無いようだが、ギルド職員からはそう呼ばれているそうだ。カナデはどこでそういう情報を仕入れて来たのだろうか。



「へー。じゃあ16時にハグルマ集合な!いこうぜフタバ。」



「うん。」



 会計を済ませた俺達は、店の前で別れた。


 来道兄妹は、来道家の運営する道場に顔を出してから、刀剣店を見て回るらしい。



「あの2人は行動に迷いがないねー。ボクは魔道具屋にでも行ってみようかな。」



「あ、私もいくー!」



 ヒカルとカナデは魔道具屋か。2人が並んで歩いていく。後ろから見ているとなんか絵になるな。あれは知らない人から見たら確実にカップルだと思われるだろう。



「…ヒカルとカナデも充分迷いがないと思うけどね。」



 取り残されたリコがボソッと呟いた。

 そういえば俺達って最低でも3人で固まって行動していたな。こうしてリコと2人になると、改めて実感してしまう。



「リコは行きたい所ないの?」



「んー?私はあんまり下調べとかしてないから、正直どこから回ろうか悩み中。…サチは?」



 俺も似たようなものだが、時間が出来たら行ってみようと思っていた所はある。



「1つあるけど……リコを誘って行く様な所じゃないから、他を考え中。」



「………えっと、そういうお店って昼間からやってるの?」



 リコが薄っすら頬を染めて聞いてくる。どうやら誤解させてしまった様だ。



「い、いやいや!風俗じゃないよ?」



「え?あ、ああ…うん、そっか。」



 リコは俺の事をなんだと思っているのだろう。仮にそういうお店に行きたいと思っていても、リコにだけは言わないだろ。察してくれ。



「紛らわしい言い方だったな。…俺が行きたいのは射撃場だよ。刀は素振りとか出来るけど、銃はそういうわけにもいかないから、少しでも感触を知っておかなきゃなーって思って。」



「……真面目ね。皆今日くらい観光とかに使うと思うけど。」



 風俗だと疑っていたのに、俺の答えが思いの外真面目なものだったため、申し訳なさそうにしている。



「私も着いていくわ。拳銃もそれなりに使えるから、アドバイスくらい出来ると思うし。」



「いいのか?」



「うん。」



 ならばお言葉に甘えよう。まさか初デートが射撃場とは思わなかったけど、これはこれで楽しそうだ。



「手取り足取りナニ取り教えてくれるかもだし。」



「また煩悩垂れ流してるわよ。」



 おっと失礼。


 俺とリコは、ガリバーのマップを見ながら射撃場を目指した。途中それとなく手を繋ごうとしたらやんわり避けられてツライ。









 ――――――――――――――――――









「アイツらやっと別れやがったな。」



「だね。バカみたいにずっと固まってるんだもん。」



 僕達は大通りから一本入った路地で、赤髪の女と黒髪の男の2人組みを睨む。



「とりあえずこっちの2人からでいいだろ?」



「うん。カナデちゃんの方はあの化け物がいるしね。」



 星宮とかいうヤツは化け物だ。試験の時に偶然あいつの魔法を見たが、到底新人の冒険者が敵うような相手じゃない。



「ああ。近づけさえすれば俺のパワーでどうとでもなるけどな。」



 郷田はバカだが、確かに力は凄い。通常時でさえSTRは75と高いが、筋力増強のスキルを使った時にはその数値は倍近くまで跳ね上がる。新人の冒険者でこのパワーに太刀打ち出来る者などいないだろう。



「…そうだね。でもまずはあのザコからやっちゃおう。リコちゃんを早くいただきたいし。」



 桐崎とかいうヤツは試験の時に、最下位に近い得点から、一気に455点などというふざけた得点を叩き出した。こんな事はあり得ない、絶対に何か不正があったはずだ。

 僕の看破スキルは、後天スキルなら見破れる。桐崎には戦闘スキルの1つも生えていなかった、完全にザコだ。あんなザコが正規の方法で1位を獲れるわけがない。



「おう。あの女もナメくさった態度取ってくれたからなぁ。」



「だねぇ。僕的にはカナデちゃんより好みだから、今から楽しみだよ。」



 お礼はしっかりしないとね。



「ふん、最初は工藤に譲ってやるよ。その代わりカナデの1発目は俺が貰うぜ?」



「うん、それでいいよ。……おっと、見失わないようにしないと。ギルドに戻ったらまたしばらくチャンスは無さそうだし。」



 夕方からギルドで戦闘服の配布が始まる。それを過ぎればまた、旅館に泊まってギルドに行ってと、人目に着く行程に入ってしまう。そうなる前に終わらせないとね。



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