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異世界転移はされるもの!  作者: 二度寝
第1章 始まり始まり
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未到の島

 

 遥か昔、凡そ1000年前に、現界に初めて異界ゲートが現れた。それと時を同じくして、多くの国で『空飛ぶ島』が目撃された。


 当時の記録では、その島は海の彼方に消えたとされている。



 多くの国や人がその島を探したが、そこから約500年程、その島に到達した者はいなかった。


 500年後に到達した者も、島からの帰還は叶わず、その亡骸が数百年後に見つかり、初めて到達者がいた事が認知されたのだ。近代の研究でその者は、大航海時代に名を馳せた海賊だったのではないかとされている。



 次に島が日の目を見るのは、さらに200年が経った頃だった。とある冒険者が偶然たどり着いたのをキッカケに、大規模な開拓が始まったのだ。


 当時島を開拓したのは、冒険者の母国では無く、冒険者と島の先住民だった。冒険者の母国は、植民地を増やすことと世界各地に現れた異界ゲートの調査でいっぱいいっぱいの状態だったからだ。



 先住民達は故郷の異界に帰れなかった先祖の意思を継ぎ、冒険者と共に、ダンジョンに隠された異界ゲートを目指す。島には現界に現れてからの700年間で、3つのダンジョンが生まれていた。


 先住民だけでは攻略出来なかったダンジョンも、優秀な冒険者を援助する事で攻略する事が可能となった。かくして、3つ目のダンジョンを攻略した所で、先住民達は先祖の夢を叶える事に成功する。



 3つの異界ゲートを通じて、現界に流入した異界人は、この時点で既に1万人を超えていたという。これは一重に冒険者の人徳によるものだった。反対に、世界各国の異界との交流は遅々として進んでおらず、この島以外で異界人を見る事は無かったらしい。少なくとも公には。



 この時島で生まれたのが、ギルドの前身である『冒険者組合』だ。これは、故郷への帰還を手助けしてもらった先住民達が他の異界人と手を取り合い、異界ゲートの調査の為に組織したもので、今尚その意思は受け継がれている。自分達と同じように故郷へ帰れない者を二度と出さないようにと。



 冒険者組合の設立された島は、多くの異界人達の救いとなった偉大な冒険者の名前をとり、こう名付けられた。



【ガリバーアイランド】と。





「なるほど。歴史の勉強が足りていなかったな。」



 ガリバーでググった情報を読み、俺は感想を述べた。


 ウェブの情報によれば、冒険者組合、つまりギルドでは、先住民達の使っていた暦を用いているらしい。これは『転暦』と呼ばれ、先住民達の先祖が現界に飛ばされた日を始めとして、今は1007年。西暦でいうと2019年だ。



「つまりこの島は空島?」



「そう言われてるわね。最初から海に飛ばされていて、それが世界各地に映像だけ転写されたって言ってる学者もいたっけ。」



 本当の所は分からないが、なんともロマンのある島だった様だ。



「そのダンジョンっていうのはどこにあるんだろう?攻略されたならただの跡地になってるだろうけど、一度見てみたいな。」



「ギルドの管理下で、訓練場として使われてるって聞いたよー。」



 ならば行く機会も有るかもしれないな。




 現在俺達は、ギルドの周辺を散策している。ここは実に魅力的な街だ。特にこの辺りは飲食店や屋台はもちろん、魔道具屋に武器屋などが数多く軒を連ねており、普通の国では見られないものが当たり前の様に存在している。

 異界を舞台にしたゲームの世界が、そのまま現実になった様で、俺は童心に帰りはしゃいでいた。



「私は子供の頃からたまに連れてきてもらってたけど、初めてこの島に来た人は大概そうなるわね。特に男の子は。」



 リコの家は代々ギルドに属していたというし、この光景もある程度見慣れたものなのだろう。ただ、親同伴の時というのは、案外街を見ていないものだ。俺も親父とよく行っていた通りを1人で歩いた時に、半ベソかきながら彷徨った覚えがある。

 リコも然程土地勘は無さそうなので、似たようなものなのだろう。



「これ見てはしゃがない方がどうかしてるだろ。…おっ!バンクルポークの串焼きだってよ!知らん生き物の肉とか興奮するな!」



 イチトが屋台を指差して騒いでいるが、女子達は全くノリ気じゃ無さそうだ。



「30ルドだって。安いし買ってみれば?私はいらないけど。」



『ルド』はギルドが取り扱っている通貨で、異界関連の取引にはこれが用いられている。30ルドは日本円で300円くらいだったかな?

 確かに安い気がするが、安い肉って少し怖いな。



「買ってくる!」



 イチトにはそういう恐怖は無いようだ。屋台に向かって突っ走って行った。



「私はそこのカフェに行ってみたいなー。持ち込みオッケーみたいだし、行ってみない?」



 カナデの提案に反対は出なかった。持ち込み可なら、イチトが謎肉を持って来ても大丈夫だろう。



「それじゃそこでメシでも食べながらどの辺回るか考えようか。」



 俺達は『キャストカフェ』と書かれたその店で食事を済ませる事にした。



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