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異世界転移はされるもの!  作者: 二度寝
第1章 始まり始まり
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第2層へ突入

 

「しかし驚いた。」



 男達が森の奥に消えた後、俺達は探索を再開していた。



「おやおやぁ?サチ太郎ってばMND550もあるのにあんなカス共にビビっちゃったのか?」



 イチトって煽り下手だな。根が良いやつ過ぎるのだろうか。



「いや、あんなに判りやすい三下が実在するんだなーっていう驚きだ。」



「ああ、そっちな。あいつらも7回くらい死ねば少しはマシになるんじゃねーの?」



 あれからもう30分程経ったが、俺たちは未だにぐちぐちと陰口を叩いていた。こういう時、案外男の方が根に持つもんだよな。



「いつまで下らない事言ってんのよあんた達。」



「もう周囲の魔物の層変わってるよー。ちゃんと注意しないと。」



 うん。それはわかっているんだけどね。



「よし、ちょっと休憩にしよう。」



「は?さっき休んだばっかじゃん。」



「リコもう疲れちゃったの?」



 慣れない森の探索は想像以上に体力を奪う。俺にはもう分からない感覚だが、一般人以上の体力を持つリコでも相当キツイのだろう。



「そんなわけないでしょ。パーティーとしての方針を共有しておこうと思ってね。」



「あ、それは私もしときたかった!」



 リコとカナデの呼びかけにより、俺とイチトは足を止めた。



「方針……って、ポイント稼いで皆で仲良くクリアしよー的な?」



「それも良いけど、獲得ポイントの目標が決まってなかったでしょ?」



 そういえばそうだな。けど何故今のタイミングなんだ?多少強い魔物を見つけてパーティー戦を経験してからでも良い気がする。むしろそちらの方が自然じゃないだろうか。



「リコが言いたいのはね。あんたら2人ともナメられたままでいいのかって事よ。」



「「…………。」」



 なるほど。だからこのタイミングか。


 俺とイチトがいつまでもダラダラと不貞腐れているのを見兼ねたという事だな。



「まぁ……そういう事ね。あんた達の事はまだよく知りもしないけど、とりあえず……嫌いじゃないの。」



「えと、通訳しようか?」



「大丈夫だ。伝わってる。サチなんか血の涙を流しそうだ。」



 感涙っていう言葉はこういう時に使うものなのだろう。



「とにかく!そんなあんた達を馬鹿にされて、平和に終わらせるつもりなんて無いってこと!」



 リコがここまで俺達の事を仲間として見てくれていたなんてな。控え目に言ってクソ嬉しい。



「もちろんアイツらを妨害しようとか、そういうちっさい事じゃないわよ?」



「だよねー。私としては昨日の夜にイチトが言ってた方針を採用する感じでいいと思うな。」



 イチトが言っていた方針、というよりは確信だな。



「つまり……」



「そう、つまり………私達はこの試験を1位で通過するわ。それも他の受験者達に、圧倒的な大差をつけて!」



 リコがそう宣言した時、空気と心が震えた気がした。



「……ああ。それでいこう。」



「当然!オレは最初からそのつもりだぜ。」



「最下位からの大逆転なんて、ドラマチックだねー!」



 俺達の方針は決まった。

 自分達の力量を見て目標を決めるというのは、きっと正攻法なのだろう。けれど、目標を決めてから手段を作るというのもまた正攻法だ。


 そして何より、後者の方がカッコイイ。



 レベルが足りなければ上げればいい。

 スキルが足りなければ覚えればいい。

 チームワークが足りなければ培えばいい。



 目標に達するまで、ひたすら貪欲に動き続けよう。




「そうと決まれば早速行動に移そうか!カナデ!ここら辺で1番強い魔物は?」



「400mくらい先にいるねー。多分Dランク。けど手に負えない魔物だったらどうするの?」



「その時は俺が殿になって逃走。鍛え直して再挑戦って感じで行こう。STRもイチトには及ばないながらもかなり上がったから、押さえ込んで時間を稼ぐくらいは出来ると思う。」



「……分かった。でも、死んでも平気だからってあんまり無茶しないでね。こっちはあんたが死ぬのを見ても平気でいられるわけじゃないんだから。」



「うん。ありがと。」



 不死はあくまで保険と考えておこう。好きな子に死に様を晒すのは恥ずかしいしな。



「それじゃあ陣形作って狩りに行こう!」



 俺達は再び歩き出す。

 先程までより遥かに軽い足取りで。






 ―――――――――――――――――――






「ほう。Dランクか。」




 私はディスプレイに映し出された情報を見て、そう呟いた。



「あ、未開堂さん!……この子達大丈夫ですかね?」



 バカ2人と女子2人の混合パーティーの担当試験官が不安そうな顔で私に問いかける。



「ふむ。……Dランクの相手をするには、通常4人以上のパーティーで、全員がレベル10を超えている状態が望ましいな。」



「ですよね……警告を出しますか?」



 他の受験生ならそうしただろうが、コイツらなら…



「いや、必要ないだろう。まともな武器を持っていない事を差し引いても、コイツらのステータスは正直異常だ。ここはやらせてみよう。」



 ハッキリ言って私は天才だ。

 幼い頃から周囲にそう言われてきたし、自分でも正当な評価だと思っている。


 しかしそんな私を持っても、コイツらの素質には嫉妬心を覚えざるを得ない。

 普通そんな逸材はそうそう現れないが、今年は異常だ。たった50人ぽっちの中に6人もいやがる。


 私の与り知らない所で何かが起きているのか、はたまた只の偶然なのかは分からないが、今年の試験がいつも以上に楽しめるモノになる事は間違いないだろう。



「さてさてこれからどうなるか。」



 本当に楽しみだ。



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