緩めのサバイバル2
「配置についてはこんなところかしらね。」
「いやいや!え、なに?リーダー?指令塔ってなに?」
「……うるさいなー。満場一致なんだからいいでしょー。」
他の2人も頷いている。
これはアレか?お前は役に立たないからとりあえず後ろに立ってろ的なやつか?
「………いいもん。」
「いやイジケても可愛くねぇから!」
まぁやれと言われればやるさ!全力でな!俺はこう見えても素直な人間なのだ。任された仕事は全身全霊を持って熟す事にしている。不貞腐れたりはするけどな。
「はぁ……まぁいっか。それで後は?なんか打ち合わせとく事あるかな?」
「んー、とくに?あとは実際戦ってみないとねー。実戦経験の有るカナデとイチトからは何かないの?」
リコからの質問に2人は、「うーん。」と唸る。
「つってもオレもそんなに経験有るわけじゃねぇからなー。…親父によく言われたのは、相手がザコでも複数の敵に1人で挑むな的事かな。数の暴力ってやつ?囲まれたりすると殆ど何もできずにやられちまう事もあるらしい。」
「なるほどねー。そこは後衛組に視野を広く持ってもらうしかないかな。カナデがいればそのリスクも殆ど無いと思うけどね。」
どんな分野でも経験者の話っていうのは役に立つものだ。イチトの話もちゃんと覚えておこう。
「私の方は戦闘経験はあるけど、場所が特殊だったから参考にならないと思う。ごめんねー。」
カナデはそう言ってひらひらと手を振った。
「そっか。そしたら後はまた明日ね。このパーティーでどれだけ出来るか試してみましょ。」
リコの言葉で、打ち合わせはお開きとなった。
すっかり日の落ちた浜辺で、俺達は焚き火を囲んでキノコ棒を焼いては食べてを繰り返す。
「カナデお水ちょーだい。」
「あ、俺も!」
「はいどうぞー!『水球』。」
俺達は空中に浮かぶ水の玉から水を掬い、口に運ぶ。最初、直接顔を突っ込んで飲もうとしたらリコに凄い目で見られてやめた。
こうして見ると、やっぱり魔法っていいなー。なんて当たり前のことを考える。
俺には身近に魔法を教えてくれる人がいなかった。まぁ殆どの人はそんなもんだ。俺の場合は、魔法を使える人はいたけれど、属性が合わず教わる事が出来なかったのだ。
一応役所で、何の属性に適性があるかは見てもらったが、何とも微妙な属性だった。
「ねーねー。」
「ん?私に言ってるの?」
「もちろんリコたん。」
「たんはやめて。」
食事も終わり、いよいよやる事が無くなった俺達。日が落ちたとはいえ流石に寝るにはまだ早いので、皆思い思いに時間を潰している。
カナデは砂浜にある岩に腰掛け、ナイフを使って木の棒を削りながらイチトに話しかけている。イチトは話を聞きながら、人差し指と親指の間に紫電を走らせている。魔力操作のトレーニングだろうか。
俺はといえば、焚き火をボーッと眺めながらリコに話しかけてみたところだ。
リコも同じく焚き火を眺めていたが、俺が声をかけるとこちらを見てくれた。
「リコは火属性じゃん?」
「何よ急に。……まぁ、そうね。」
「何て言うか、火属性ってさ。まさに『魔法』って感じがするんだよ。」
リコの顔が「何言ってんだコイツ」的な表情に変わる。
「イチトの雷もカナデの水もそんな感じ。いかにも魔法だなーって感じがするんだけど……意味伝わってる?」
「まぁ、分からなくもないわ。」
伝わって良かった。
「所謂『自然系』ってやつよね?まぁどれもメジャーな属性だから、確かに一般的な魔法のイメージっていうと自然系かもね。」
「そーそー。俺も昔はそういうイメージを持ってたわけよ。だけど、12歳の時に親父に属性検査に連れて行ってもらってさ、そこで出た検査結果が『生体属性』だったんだー。」
生体属性は非常にレアな属性だ。俺自身、自分の属性検査で目にするまで知りもしなかったくらいだ。
勿論、レアな属性である事自体は問題じゃない。時空属性や武装属性の様に、皆が憧れる様な優れた属性もある。
しかし生体属性は違う。ただ珍しいだけだ。
俺も最初は「レア属性来たー!」とテンションを上げたものだが、調べれば調べる程にそのテンションは沈んでいった。
生体属性に纏わる話は碌なものが無かったのだ。
ある者は自分の腕を蛇に変え、その蛇に首を絞められて死んだし、ある者は巨人に変身した途端内臓が潰れて死んだ。またある者は、愛犬を三頭犬に変えて、増えた頭が懐かずに噛まれて死んだし、ある者は自身を透明に変えて、そのせいで車に轢かれて死んだ。
基本的に『変えて』と『死んだ』が入る事例しか見つからず、俺は調べるのをやめた。
そんな話をリコに聞かせると彼女は
「なんで皆ブラックジョーク的な死に方してるの?」
と言った。
いや、俺に聞かれても困るが。
「それは知らんけど、俺のイメージしてた魔法像は崩れさったよ。」
「ま、まぁ元気だしなよ。」
リコに気を使わせてしまった様だ。同情してくれるのは有難いが、なんだか申し訳ない。
「あ、でもサチって死なないよね?確かに派手さは無いかも知れないけど、案外サチに1番合ってる属性なんじゃない?」
「リコたんは優しいなぁ〜。……まぁ、それは俺も思ったんだけどね。ちゃんとした指導者と出会えるかが不安でねー。」
「あー。確かにその話聞いちゃうとね。」
何とも微妙な空気になってしまったが、リコとは少し打ち解ける事が出来た気がする。話して良かったな。
「まぁ、いい指導者に出会えなかったら独学で頑張るしかないわね。その時は勉強とか練習に付き合うくらいはしてあげるわ。一緒に頑張りましょ!」
ああ、やばいな。
初めて見た時から可愛いなーとは思っていたけれど、どうやら俺は本気で惚れてしまったらしい。
焚き火に照らされて笑う彼女に、自分の心臓が激しく反応するのが分かる。
「おーい!サチー!」
と、そんな俺の幸せな時間を邪魔する金髪野郎が声をかけて来た。
「ちょ、イチト!なんかサチからすごい殺気感じるよ!?」
「は?気のせいだろ。…おーい!リコもこっち来いよー!面白いもんが見れるぜー!」
俺はため息をつきながら重い腰を上げる。
「はぁ……いこっか?」
「うん。」
俺とリコはゆっくりとイチト達に近づいていく。なんとなくリコも歩幅を狭めて、2人でいる時間を少しでも長く楽しもうとしてくれている気がするが、これは俺の希望的観測だろう。
少なくともリコに言ったら蹴りの1つは貰う事になりそうなので、俺は黙って歩く事にした。




