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異世界転移はされるもの!  作者: 二度寝
第1章 始まり始まり
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合流

 

「……はぁ。なんかもうお前と話すのホント疲れるわ。」



「なんだよ!お前が教えろって言ったんだろ!」



 自己紹介してため息吐かれる人間の気持ちが分かるか?

 などと問いかけながら、俺とイチトは砂浜を歩く。



 すると、歩き始めてから10分程経過した頃。



 目算で300メートル程先だろうか、砂浜と森の境目辺りに、2つの人影を発見した。



「おーーーい!アホ2人ぃー!ここよーーー!」



 2人のうちの1人、青みがかった黒髪を左右に揺らしたながら、大きく手を振る長身女性が声を張る。



「おいイチト、アホって言われてるぞ。」



「よく聞け、2人って言ってるだろ。」



 こうして俺たちは、無事に合流を果たした。


 2人の所まで大した距離は無かったし、道中で他の乗客にも出くわさなかったので、おそらく座席の位置と転移先はリンクしていたのだろう。



「結構時間かかったわね。もしかしてそこそこ遠かった?」



 開口一番、リコが申し訳なさそうに聞いてくる。


 そんな顔をされても、むしろこっちが申し訳ない。

 しかしここで、実は海見てテンション上がってはしゃいでしまいました!とは言えないので、



「ま、まぁまぁかな。落ち合い方を決めてなかったから、狼煙が見えてからも少し考えたちゃってね。」



 と言っておく。



「そーそー!オレなんか合流するかどうかも悩んじまったぜ!」



「いやそこは悩むな!って言いたい所だけど、会ったばっかりの他人をいきなり信じろって言う方が無理あるわよね。……でも来てくれてありがと。」



 そう言って微笑むリコは、この世の何より美しく見えた。



「そんな事よりこれからどうする?一応私とリコで薪になりそうな枯れ木とか落ち葉は集めてみたんだけど……」



 時計を確認すると、時刻は14時過ぎ。

 今の時期なら、日の入りまで5時間くらいはありそうだが、救助が来るまでに日が落ちてしまう可能性は充分にある。


 救助が来た際の目印にもなるし、火を(おこ)すというのはありだと思う。



「そうだな。日暮れが近くなったら火を熾そう。とりあえず、リコとカナデで焚いてくれた狼煙は消しとこうか。いらんモノまで寄ってきたら困るし。カナデの魔法でちゃちゃっと消してもらえるか?」



 俺の要求に対して、カナデは顔に疑問符を浮かべる。



「あれ?私水魔法が使えるって言ったっけ?」



「あれ?使えないの?」



 俺とカナデは互いに顔を見合わせ、疑問を口にし合う。



「いや、使えるんだけどさ〜。……あ、もしかして髪青くなってきてる?」



 カナデはそう言って、自身の長い髪を指に巻き、くるくると弄びながら周りに問いかけるが、その表情は、少し曇っている様にも見える。



 おそらく、高過ぎる魔法適性を隠すために髪を黒染めしているのだろう。

 薬品か魔道具かは分からないが、染め粉特有の香りがしない事から、恐らくは後者だ。


 しかしながら俺は、彼女の表情が曇るまで、隠す為の黒染めだとは気づかなかった。

 ファッションとして染めているのかと誤解していたのだ。

 まぁ言ってしまったものは仕方ない。

 素直に謝ろう。



「あー、隠してたならごめん。少し青いからあえて黒に染めきってないのかと…。」



「ううん、どっちにしろリコにはもう話してたし、2人にも話そうと思ってたから大丈夫!」



 カナデはそう言って笑った。

 俺もつられて苦笑いを浮かべたが、他の2人は違う。



「綺麗な黒よ。」

「普通に黒だな。」



「「え?」」



 リコとイチトは、眉間に皺を寄せながらカナデの髪を見つめている。



「私にはどう見ても黒に見えるし、イチトから見てもそうでしょ?カナデは自分で見てどうなの?」



「いや、私はちゃんと黒に染められてるって思ってたんだけど、人から見たら違うのかなーって…。」



 おや?

 どうやら雲行きが怪しくなってきたぞ?



「これはサチの目がおかしいって事だな。」



「おい。俺は看破のスキルも魔眼のスキルも持ってないぞ?」



 どうゆう事だろう。



「まぁいっか!どうせ一般人にバレたくなくて染めてただけだし。ギルドに入る人にバレても気にしないわ!」



 そう言ってカナデは朗らかに笑う。

 本人がそう言うのならいいか。



「とりあえず狼煙消してくるねー!」



 カナデは小走りで狼煙の発生元に駆けていき、魔法を行使する。



「『水球』。」


 彼女がそう呟くと、空中に水の玉が生まれ、パシャン!と音を立ててすぐに弾けた。

 水は火元に降り注ぎ、瞬く間に火と煙を消す。



「おみごと!」


「どもどもー!」



 しかしこの3人は凄いな。

 イチトは当たり前の様に魔法やスキルを使えると言うし、リコは予知スキルを発動させたと言うし、カナデに関しては実際に水魔法を見せてもらった。


 何より3人とも漏れ無く魔性適性が高い。それも身体に現れる程にだ。


 以前テレビで、魔法適性が身体に現れるレベルの人間は数万人に1人とか言っていた気がする。

 ギルドには、その性質上そういった人間が集まりやすいのだとは思うが、それでも珍しい事に変わりはない。



 もしかしたら採用試験を受けている人達のトップ3が集まっているんじゃないだろうか。

 少なくとも素質だけで言えば、あながち間違ってもいない気がする。



 もちろん実際にギルドに入ったら、簡単な魔法なら使える奴が大半を占めているだろうし、予知ほどじゃなくてもスキルを使いこなせるのが当たり前なんだろうけど、受験者という段階でこのレベルなら素質は充分過ぎる程にあると思う。


 もし俺が試験官なら、まず真っ先にこの3人を採用するだろう。



 …いや、むしろこれはひょっとすると……




「……なぁなぁ、お三方よ。」



 思い付いたら言わずにはいられないな。


 3人が俺の方を見る。



「もしかしてなんだけどさ、これって採用試験だったりしない?」



「「「……は?」」」



 まぁそういうリアクションが返ってくるとは思っていたさ。



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